二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

LIMELIGHT ――白光に眩む7

INDEX|8ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

「当たり前だ。厨房になどすぐに立てるか」
「へーへー。んじゃ、せいぜい手厚い看病してやれよー」
 クー・フーリンは士郎を一目見れば満足したのか、ひらひらと手を振って医務室を出て行く。立香とマシュ、アルトリアもそれぞれ士郎に声をかけ、あまり長居することなくすぐに退出していった。
 本当に顔を見に来ただけだったようだ。意識が戻ったことだけでも確認しておきたいほど、彼らは士郎のことを心配していたのだろう。
「まったく……」
 彼らの出て行った扉にため息をこぼし、士郎に視線を移せば、上掛けの中から手が出ている。前の誰かが手を握っていたのだろうか、とその手を上掛けの中に戻そうと思って、
「っ!」
 エミヤは硬直する。
 誰かが手を握ったのではなく、これは士郎が自ら出してきたのだということに気づく。何しろ、今、手を伸ばして、エミヤの赤い外套を掴もうとしているのだ。
「…………」
 エミヤが見ていることにも気づかず、まだ身体が痛むはずだというのに、震える指をこちらに伸ばして、ようやく届いた赤い布地を掴もうとしているようだが、指が思うように動かないのか、触れた布地を揺らしているだけだ。
(こ、こいつは……)
 しばし天を仰いで、エミヤは自身を落ち着ける。
「はー……、すぅー……、ふー……、すぅー……」
 深呼吸でやり過ごす。でなければ、折れるほど抱きしめそうだった。
(いやいや、それは、死活問題だ……)
 そう、今、士郎は絶対安静だ。動かしてはならない。
(だが……)
 再び顔を下ろし、エミヤの外套を掴むことに意地になっているような真剣な横顔に、もういろいろと無理だ。
 さ、と室内を見渡し、もう一台の寝台を見つける。す、と立ち上がって寝台を持ち上げ、戻ってくれば、士郎は伸ばした手を寂しそうに引き寄せていた。
 そこに無言で、どん、と寝台を置き、士郎の寝台にピッタリくっつけ、さらに無言で、今置いた寝台に横になる。
「アー……チャー?」
 驚きに目を瞠ったままの士郎の手を掴んだ。
「これでいいか?」
 ぱちぱち、と二度ほど瞬き、士郎の顔が赤くなって、向こう側へ向いていく。
「おい、なぜそちらを向く……」
「ぅ……」
 答えない士郎の耳は真っ赤だ。
「ふむ……。ならば、」
 エミヤは士郎の頭を片手で支え、枕を取り去って、代わりに自身の腕を差し込んだ。
「こうしてしまおう」
「っ!」
 硬直してしまった士郎は、やはりこちらを向かない。
「士郎」
「ふ、うぅっ」
 真っ赤になった耳の後ろで呼んでやれば、声を漏らす。
「ああ、耳は嫌なのだったか」
 わざとらしく言って、赤銅色の髪を梳き、頭を撫で、柔らかな髪に鼻先を埋める。
「士郎……、よく、頑張ったな」
 もぞ、と身じろいで、ようやくこちらを向いた士郎は、むす、としている。
「アンタ、の、ほう、が、ず、っと、」
 掠れた声で言葉を紡いでエミヤを見上げてくる。その眼差しは、エミヤが気の遠くなるような永い時間、守護者として苦しんできたことを知っている。だから士郎は、いつだってエミヤの方が頑張った、と答えるのだ。
「そうか?」
「ん」
 こく、と頷く士郎の額に唇を寄せ、先ほど己に伸ばしてきていた士郎の右手をそっと握り、エミヤは瞼を下ろす。
「では、甲斐があったというものだな」
「ぁ……チャー?」
「お前が腕の中(ここ)にいればいい。それだけで、私はいくらでも頑張れる」
「ぇ……?」
 訊き返す士郎に答えず、
「もう少し眠れ」
 睡眠誘引の魔術を唇に乗せ、触れただけのキスで眠らせた。



***

 エミヤに車椅子を押され、士郎はダ・ヴィンチの工房に着く。
「なんだろう?」
 少し不安に襲われてエミヤを見上げれば、
「さあな」
 エミヤも何も聞かされていないようで、そっけなく答えてくるが、そっと士郎の頭を撫でてくる。
「っ、も、あ、アンタまで、子供扱いかよ!」
「む」
 エミヤの眉間にシワが刻まれる。今の会話のどこに不機嫌になる要素があるというのか、と士郎は困惑するしかない。
「他に、こんなことをす――」
「やあ、いらっしゃい!」
 エミヤの声を遮り、ダ・ヴィンチが勢いよく扉を開けて出てきた。
「あ、うん、こんにちは」
 いきなりの登場にビビりながらも、士郎は挨拶を返す。
 いつもなら工房内で待っているダ・ヴィンチだが、珍しく今日は扉を出てきて、士郎の乗る車椅子をエミヤからさっと引き取った。
「エミヤ、今日は士郎くんと二人で話したいんだ。あとで私が送っていくから、君は厨房に戻ってくれたまえ」
「は? ちょ、」
 エミヤに何を言う隙も与えず、士郎の車椅子を押してダ・ヴィンチは扉を閉める。
「あの……、まずい話、か?」
 車椅子を押すダ・ヴィンチを見上げ、士郎は少し不安げに瞳を揺らす。
「いやいや、そういうわけではないよ。ただ、君はエミヤがいると何も話してくれないかなー、と思ってね」
「そ……、そんなこと、ないけど……」
 半分は言い当てられている気がして、士郎は強く否定できない。
「身体はどうだい?」
 いつものように机を挟んで対面に座ったダ・ヴィンチはにっこりと笑みを浮かべる。
「うん、痛みはだいぶマシになった」
「そうか、よかったよ。鎮痛剤はあまり常用してはまずいからね。できるだけ使いたくはないんだ。だけど君の身体の状態だとショック死しかねないから使わざるを得なかった。おかしな感じがしたらすぐに言うんだよ? 君は隠すのがうまいからね」
「ああ、うん。わかった」
 士郎の身体は回復しつつある。ベッドから起き上がることができるようになったのは、つい三日ほど前だが、それでも常人よりはずっと早い。何しろ、士郎の背中の肉はほとんどミンチ状態だったのだから。それでも、カルデアの医療と治癒魔術を駆使してダ・ヴィンチは士郎の身体を、ほぼ元通りに復元しつつある。
 肉も皮膚組織もズタズタになった肉体を、人間の持つ元々の治癒力と薬で治すのは時間がかかって仕方がない。魔術で治癒を促しても自然治癒の半分ほどの速度だ。だが、カルデア特製、いや、ダ・ヴィンチ特製の人工皮膚を背中に貼れば数週間で表皮が戻るというのだから、格段に期間が短い。その分、士郎の負担も減るから、とエミヤを巻き込んで士郎を説得にかかった時のダ・ヴィンチの勢いは、頷かざるを得ないものだった。
「背中の施術の方は、もう少し状態がよくなればすぐに取りかかれるからね」
 誰に見せるでもないから必要ない、と士郎は言ったのだが、ダ・ヴィンチは、こっちの方が手っ取り早いんだよ! と人工皮膚移植を強引に提案し、了解に至っている。
「なんか、あんたのモルモットみたい……」
 思わず遠い目で独り言ちれば、
「ん? 何か言ったかい?」
 にこにことしてダ・ヴィンチは訊いてくる。その笑みは、絶対に笑っていない、と士郎にはわかる。こういう顔で攻撃をしてくる女性を最低でも二人、士郎は知っている……。
「治療の方、よろしくお願いします」
 ぺこ、と頭を下げれば、ダ・ヴィンチの機嫌も直ったようで、本題に入ろうか、と今日ここに呼び出された用向きの話に移った。
「士郎くん、君は魔神柱と目が合ったね?」
「目が、合う?」