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譚恒譚

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「将軍!、、またそんなに文書を持ってきて、、。」
一抱えの書の束を見て、譚恒はうんざりする。東海との戦の後、ただでさえ、夜あまり眠れぬの岳銀川将軍なのだ。
「『また』?。ようやく東海との戦の軍報が読めるのだぞ。私がどれだけ待ったと思ってる?。」
「あ〜〜〜、、あの軍報ですか、、。」
請求しても、あまりに来ない為に、そんな軍報は無いのかも知れぬと、譚恒すらすっかり忘れていた。
配下の譚恒に何と言われようと、岳銀川にとっては、待ちに待った軍報だったのだ。
東海との戦に疑問を感じて、、不審は日毎に強まるばかりだったのだ。
あれだけの被害、兵も民衆も無残に殺された。目を覆いたくなる惨状が、今だ脳裏に生々しい。
幾度も戦場に身を置いたが、完璧に軍の脆い部分を崩され、これ程まで民が殺害された戦は無かった。
『この戦は何かある、ただの戦ではない』
東海との国境を守る将軍、岳銀川の勘としか言えないが、疑問を払拭せねば、前に進めない。
この戦いで死んでいった仲間や、東海の民の為にも、、、。
そして今後、失った地を奪還する時の為にも。
戦場の、現場の兵士の話だけでは、確信が持てなかった。だから、全体の動きを簡潔に記された軍報ならば、この不可解さの理由が分かるかと思ったのだ。
そして岳銀川は、求めれば軍報を見ることが出来る立場にある。
しかし、どういう訳か、幾度催促しようが、兵部は軍報を、銀川に寄越すことは無く、、、。
この国は、『求める者には、軍報は開かれる』筈だ。
そう思って、東海との国境に居るうちから、兵部に軍報を請求してきたのだが、見せるとも見せぬとも、返事は無く、幾度も催促した自分の要求すら、都の兵部に届いているのかすらも分からない。
東海との戦の功労者として、金陵の都に呼ばれていたが、求めた軍報と入れ違いになってはならぬと、ぎりぎりまで国境の軍営で待っていたのだ。
いくら待てども軍報は届かず、仕方なしに、急ぎ都に向かった。金陵に着いて、直接兵部に軍報を求めに行っても、兵部署の下級官吏に、のらりくらりと躱されて、手にする事が出来なかった。
正直、銀川ですら、うんざりとしていた。
配下の譚恒は、うんざりを通り越して、何時までも待ち続ける銀川と、無視し続ける兵部に呆れてさえいたのだ、
その後、兵部尚書の口利きで、ようやく手にすることが出来たのだ。

譚恒は銀川が、どれ程この軍報を待っていたのか知っている。
これ迄の記憶を辿り、銀川は、考えても答えは出ぬのに、見落とした事はないのかと、夜も眠れずに考えているのを、側で見ていたのだ。
(これは、夜通しになる、、、、。)
譚恒にはそんな予感がする。
(一晩で全部読む気だろう、、、。)
譚恒は、銀川のように文書を読み解き、考えるのは苦手だった。
銀川に『ここがこうだ、これは妙な状態だ』と説明をされても、よく分からぬ。
銀川もまた、譚恒のうんざりぶりを察した。
「、、、付き合わなくても良い。先に寝ろ。」
ここ数日、眠れず考えを巡らす銀川に、ずっと付き合っていたのだ。
その上、金陵に来る途中、行き倒れた若い女子(おなご)を拾ってきた。
譚恒はこの者の面倒も、甲斐甲斐しくみているようだ。
細かな事に気を配るのが、譚恒の性に合っているのだろう。文句を言いつつ、守備良く手配する。
義に厚く、人への情も深い。
銀川にとっては、配下と言うより、この上ない相棒なのだ。
身体が丈夫なのが取り柄の男だが、細々した事を任せ切りにしたせいか、さすがに譚恒に疲れが見えた。
「そりゃぁ、ありがたい、将軍、今日は先に休ませてもらいますよ。」
(私が休めるようにして下さいよ。、、自分の事は、自分でなさって下さい。)
銀川はのめり込むと、自分の事もしなくなる。
見るに見かねて、毎度毎度、口説くど文句を言いながら、結局は譚恒が面倒を見てしまうのだ。
現場の軍部に居る者は、皆、体を鍛えている。一度や二度、飯を抜いたからと言って、へばるような身体ではない。
戦場でも、戦が始まれば、まる二日、飯など食わぬ事もざらにある。
飯を抜く事など、銀川は一向に平気なのだが、譚恒の気持ちが定まらぬのだ。

この度も、案の定、兵部から受け取った文書を卓の上で開くと、そのまま座(ざ)しっぱなしになり、軍報に集中し始めた。
譚恒の予想通りとなった。


「将軍、晩飯ですよ。ここに置きますから、食べてください。」
夕餉の時刻になり、譚恒が盆に銀川の食事を持ってきた。
銀川は将軍といえど、格段、別格扱いされるつもりもない。
普段は配下の兵と共に、一緒に同じ食事を摂るのだ。
ところが幾度呼んでも、食事に来ない。遂に終わってしまったのだ。
渋々、譚恒は温め直して、軍報に没頭する銀川の所まで、盆に上げて持ってきたのだ。
「将軍、聞こえてます?。」
微動だにしない銀川。
目を開けたまま、眠っているのではないかと、譚恒は銀川の目の前に掌をヒラヒラとかざしてみる。
ふと、銀川が視線を譚恒に向ける。
「食事なら、皆と摂る。」
「、、皆、食べ終わりましたよ。、、、、将軍、何度も私が呼んだの、分かってます??。」
「???。」
銀川には全く覚えが無い。
「書に没頭して、耳に入ってなかったんでしょ。全く、、。
将軍に肉の付け届けがあったんですよ。だから、隣のおばさんに、肉を煮込んでて貰ったんですよ。あいつらときたら、将軍の分も狙いやがって、、将軍の分、取っておくの大変だったんですからね。ちゃんと食べてくださいよ。」
譚恒の言う『あいつら』とは、共に金陵に来た配下達の事である。
「、、あぁ、、分かった。置いておいてくれ、食べるから。」
「ほんとですよ。食べてくださいよ。私は姑娘の様子を見てきますからね。その間にさっさと食べてくださいよ。こんな晩飯食べるの、そんなに時間かからないでしょ。」
「、、、ん、、。」
そう言うと、また視線を軍報に戻す。
「将軍!。」
強く呼ばれて、初めてちゃんと譚恒を見た。譚恒は呆れている。
「???。」
ぽかんと不思議そうな銀川の顔。
「食べる!!!。」
譚恒は手で、食べる真似をしてみせる。
銀川は軍報を手から離し、分かったから早くあっちへ行け、と、譚恒に手を振った。
「なんて面倒臭い人だ、、、。」
譚恒は去り際に本音が出てしまった。
「、、ん?、、何か言ったか?。」
「、、いえなにも、、、。」
こういう事はよう聞こえるのだ。
これでようやく食べてもらえるだろうと、譚恒は一安心し、行き倒れていた娘の様子を見に、銀川の部屋を出た。

金陵に来る途中、行き倒れた娘を拾った。
衣服や頭は汚れ、意識の昏睡した状態だった。だが、外傷は無く、生きていたのだ。
その場に放って置くことも出来ず、仲間と共にそのまま金陵に連れてきた。
医者をかけ手当てをしたが、娘はまだ目を覚まさない。
回復するも、命を落とすのも、この娘の運次第なのだろう。
身なりから、どこぞの金持ち貴族の侍女だろうと、、、大方、主にでも言い寄られて、どうにもならなくなり、逃げて来たのだろう。
見れば器量の良い娘である。奴婢ならば、その器量が仇になる事もあるのだ。
若い身空で、花も咲かさずに消えてしまうのは、気の毒な話である。
だが、珍しい話では無い。
作品名:譚恒譚 作家名:古槍ノ標