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鳥籠の番(つがい) 10【完結】

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「この光は…サイコフレームの共振か?人々の心が集中し過ぎて、オーバーフローを起こしている!…しかし…何故だ?恐怖は感じない。むしろ暖かく包み込んでくれるようだ…」
「そうだよ!人にはこの暖かい心があるんだ!」
「しかし、その暖かさが地球を滅ぼし、アースノイドとスペースノイドの亀裂を生む、アムロ!何故それが分からん!」
「分かってるよ!だから、みんなにこの光の暖かさを見せなきゃいけないんだろ!人は、解り合えるんだ!」
アムロからサイコフレームの光が更に溢れ出し、シャアを包み込む。
そして、サイコフレームの光は更に大きくなり、アクシズ全体をも包み込んだ。
光を放ち続けるアムロの心臓が、ドクリと大きく脈打つ。
「うっ…!」
アムロは胸を押さえながらも、歯を食いしばる。
「まだだ!」
更に大きくなる光に弾かれる様に、アクシズに取り付くモビルスーツ達が引き離されていった。


「アムロさん!ダメだ!」
ギュネイのヤクト・ドーガと戦っていたカミーユは、その光景に目を見開く。
そして、ギュネイもアムロとシャアの様子に気付き、戦いの手を止める。
「アムロ大尉!大佐!」
カミーユはそのままアムロの元に行こうとするが、ギュネイのヤクト・ドーガに腕を掴まれ止められる。
「離せ!」
「馬鹿野郎!お前も引力に捕まるぞ!死ぬ気か⁉︎」
「だけど二人が!」
「だからってお前まで死ぬ気か⁉︎」
「でも!」
カミーユは口許に手を当て、震えながら光を放つνガンダムを見つめる。
「あの光に…アムロさんの命が…吸い取られていく…」
「何だって⁉︎」
尚も向かおうとするZを、ジュドーのリ・ガズィも引き留める。
「ジュドー!」
「カミーユ…待って…気持ちは分かるけど、今は…二人の邪魔をしちゃいけない…」
目を見開き、νガンダムとサザビーの脱出ポッドを見つめ、ジュドーが呟く。
「ジュドー?」
「きっと…大事な話をしてる…」


アクシズに取り付いていたモビルスーツたちが離れていくのを、目の端で確認しながら、アムロは目の前にある、シャアの赤い脱出ポッドに視線を向ける。
「…人は…解り合えるんだ…貴方だって…本当は…理解っているんだろ?…シャア…。人を愛し、愛される事で…人は…優しさを覚えて…解り合っていく…」
シャアは、サイコフレームの光に包まれながら、こんな状態だと言うのに、心が安らいでいる事に気付く。
そして、アムロの言葉に、この数年間、アムロと過ごした優しい時間を思い出す。
「…愛し…愛される…?」
「そうだよ…。確かに…人は…愚かだ…。傲り、自分本位な行いをして、地球を汚染してしまった…でも…それだけじゃ…ないだろう?」
途切れ途切れに話す、アムロの息が上がっていることに気づく。
「どうした?アムロ」
「はは…、さっきまでは…不思議なくらい…痛みを感じなかったのにな…くそっ…」
アムロは頭を押さえ、再び襲い始めた痛みに耐えるように歯をくいしばる。
「アムロ!」
アムロの身体から発せられる光は、アムロの命を吸い取るように、次から次へと溢れ出していく。
「…シャア…俺が…正気の内に…あっ」
不意にアムロから大きな光が溢れ出す。
「アムロ⁉︎」
アムロは荒い息を吐きながら、それでも必死に言葉を紡ぎ出す。
「貴方の望みを…叶えるよ…」
「私の…望み?」
「…そう、…約束…したろう…?」
拉致されたアムロを取り戻し、レウルーラに戻った時、互いの存在を確認し合うように身体を重ねた。
あの時、確かにアムロは言った。
『貴方の望みを叶える』と…。
「俺は…貴方の為だけに生きている…、それは…何があっても変わらない…マインドコントロールが解けて…全てを思い出しても…」
「アムロ…」
「俺が…貴方を…止める…そして…貴方を導く…」

その言葉に、シャアは息を飲む。
そう、確かに、自分はあの時、腕の中のアムロに願った。
もう一度、強い光を放つ、あの琥珀色の瞳で自分を見つめて欲しいと、もう一度、パイロットとして、本気のアムロ・レイと戦いたいと、そして…己の愚行を止め、正しい道に導いて欲しいと…!
シャアは目を見開き、アムロを見上げる。
実際には、脱出ポッドの死んだモニターでは何も見えないが、目の前にアムロを感じた。
コックピットに座り、優しく自分を見つめるアムロを…。
「アムロ!」
アムロは約束通り、自分の願いを叶えてくれた。
そして、最後の一つである願いも叶えようとしてくれている。
「アクシズは!絶対に落とさない!そして、地球の人々に、この光を見せる!」
アムロの身体からさっきとは比べものにならない量の光が溢れ出し、その光はアクシズを包み込んだ後、地球へと伸びていく。
「あああああああ!」
その瞬間、アムロを激痛が襲う。
「アムロ⁉︎」
サイコフレームの光と共に、地球の引力に引かれるアクシズとνガンダムの周りの温度が上昇し、熱を帯びていく。
「貴方は…絶対に救う!貴方は、本当の…貴方のやり方で…、ネオ・ジオンを…、スペースノイドを…導いてくれ!」
既に精神力と気力だけで正気を保っているアムロは、歯を食いしばり、アームレイカーを操作して、アクシズに埋め込んだサザビーの脱出ポッドを引き剥がし、νガンダムの胸に抱える。
その時、サイコフレームの光に包まれたアクシズの落下が止まった。


その光景を、ラー・カイラムのブライトが呆然と見つめていた。
「アムロ?あの光は…アムロの光なのか?アイツはあそこにいるのか⁉︎」
「艦長!アクシズの落下が止まりました。地球から離れていきます!」
オペレーターの声が艦橋に響き渡る。
「何だって?一体何が起こっているんだ?」
「分かりません!ですが、落下が止まったのは確かです!」
「どうなってるんだ…」
「艦長!地球からの電文です。ラー・カイラムは損傷機の回収に当たられたし」
その電文に、ブライトはハッとする。
「……アムロは?νガンダムはどこだ!」
「確認します!」
オペレーターがνガンダムの位置を確認する。
「νガンダム…アクシズです!アクシズにいます!しかし!引力に捕まりました!落下しています!」
「なに!?」
「救出に向かえ!」
「無理です!間に合いません!」
「無理でも行くんだよ!」
「しかし…」
「艦長!」
無茶を言うブライトを、副艦長のメランが諌める。
メランに肩を掴まれ、艦橋から見える、美しい光と、アクシズの影を呆然と見つめる。
そのブライトの瞳から、一筋の涙が零れた。
「アムロ!」

◇◇◇

「アクシズの落下が…止まった⁉︎」
シャアは外の状況を見る事は出来ないが、それを感じる事は出来た。
しかし、引力に捕まったνガンダムはそのまま落下していく。
「引力に捕まった⁉︎ダメか!」
ガタガタと激しく揺れる脱出ポッドの中で、自身が落下している事に気付く。
そんなシャアにアムロの声が届く。
「大丈夫…貴方だけは…絶対に守るよ…」
落下の摩擦熱で既に通信機器は壊れ、聞こえないはずのアムロの声が直接耳に届く。
「アムロ?」
νガンダムは地球に背を向ける様に機体の向きを変え、脱出ポッドを胸に抱える。
「アムロ!」