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忘れないでいて【後編】

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「不思議だ。君を…倒したいと思っていた。自分の本来の目的を忘れる程、君と戦うことが私にとっての最重要項目となっていた。しかし、君と共感したあの時から…今度は、君を欲しいと思うようになった」
「僕が…欲しい?それは…僕がララァと同じニュータイプだから?」
「そうだな。それもあると思う。しかし、それだけではない」
シャアは抱き締める腕を緩めると、もう一度アムロの瞳を見つめる。
そして、その丸い頬に手を添える。
「君の、激しくも、偽りのないこの瞳に惹かれた。サイド6で君に会った時から、この瞳が忘れられなかった」
真剣なシャアの瞳と、その口から紡がれる言葉に、アムロは顔を赤く染める。
「な、なんだか…それってまるで…(愛の告白みたいだ)」
「まるで、恋の様だ…」
蕩けるような視線を向けられ、アムロの顔が更に赤くなる。
「え…あ…」
「君は私のことが嫌いか?」
「え?いえ…その…貴方が僕を嫌いだというならともかく、僕は…その…」
さっき、膝の上で眠らせてくれたシャアからは、優しい想いが伝わってきて…酷く安心して…思わず眠ってしまった。
多分、この人は、本質的にはとても優しい人だ。その上、こんなに美しい人を、嫌いだなどと思える筈が無かった。
「嫌いではないか?」
優しく、でも、少し不安げに問うシャアに、何故か胸がキュッとなる。
「アムロ?」
「……嫌い…では…ないです…」
「…そうか…」
ホッとした表情を浮かべるシャアを、少し可愛いと思ってしまう。
元々年上だったが、今は、更に歳の離れた男に、そんな事を思うのはどうかと思うが、素直にそう思う。
自分を見下ろす青い瞳を見つめていると、段々とその瞳が近付いてくる。
そして、唇に何か柔らかいものが触れる。
何が起きたのか分からず、呆然としてしまう。しかし、それがシャアの唇だと気付いた途端、顔に熱が集まるのを感じる。
「あ…」
シャアは一度唇を離し、アムロを見つめると、両手で頬を包み込み、今度はもっと深く口付ける。
突然の出来事に、アムロは抵抗する事も出来ず、気付いた時には舌を絡められ、その気持ち良さに溺れていた。
長い口付けの後、ようやく唇が離されたアムロは、陶然とした表情でシャアを見上げる。
その蕩けるような顔に、シャアの心臓がドクリと脈打つ。
「…まずいな…」
「…シャア…?」
シャアは苦笑すると、もう一度アムロを抱き締める。
「これ以上すると、理性が保たない」
そのセリフに、アムロの顔が更に赤くなる。
「あ、あ…えっと…」
そんなアムロの前髪をかき上げ、額にキスをして優しく微笑む。
と、その時、夜明けを告げるアラームが鳴る。
「あ…夜明け…」
アムロは立ち上がろうとするが、身体に全く力が入らない。
「あれ…?」
「腰が抜けたか?」
揶揄う様に言うシャアに、アムロがフルフルと首を横に振る。
「そ…じゃなくて…本当に…動かな…」
心なしか呼吸も苦しくなる。
「アムロ⁉︎」
「どう…したんだろう…身体が…いうこときかない…」
荒い息を吐くアムロを、シャアが慌てて抱き上げる。
コックピット出て、カイたちの元まで行くと、カミーユが目を見開いてアムロに駆け寄る。
「アムロさん!」
アムロの手を握り、カミーユ呼び掛ける。
「カミーユ…」
小さく微笑むアムロが、小刻みに呼吸を繰り返し、目を閉じる。
「僕…夜明けが…見たい…」
そう呟くアムロに、カイやレコア、カミーユが顔を見合わせる。そして、カイがコクリと頷くと、アムロを抱えたままクワトロがゲートへと歩き出した。
そして、カミーユがパスコードを打ち込んで開閉ボタンを押すと、ゴゴゴっという音を立てて大きなゲートが開かれる。
その隙間から、明るい日差しが徐々に差し込み、ゲート内に光の帯が伸びていく。
アムロは眩しさに目を細め、その光景を見つめる。
そして、ゲートの向こうに緑の木々の間から、太陽が昇るのが見える。
「…朝日だ…」
シャアに身体を預けながら、アムロが小さな笑顔を浮かべる。
「カイさん…僕…エンジニアには…なれそうもありません…」
「アムロ…」
「レコアさん、カミーユ。ありがとう…」
アムロの身体から、命の輝きが消えていくのを感じ、カミーユが顔を顰める。
「アムロさん…!」
「シャアも…最後に…話せて良かった…」
「アムロ!また逢える!君とは、また必ず逢える!」
その言葉に、少し驚きながらも、コクリと頷く。
「そうだね…不思議だけど…そんな気が…す…る…ふふ…」
「アムロ!」
「ごめん…なんだか…凄く眠いんだ…凄く…」
そう言うと、アムロはゆっくりと瞳を閉じる。
そのアムロから、どんどんと力が抜けていき、アムロの手がダラリとシャアの腕から零れ落ちた。
「え…?」
レコアが思わず声を上げる。
カミーユも、ただ、呆然とアムロを見つめる。
「アムロさんの…心が…消えた…。もう…ここにはいない…」
アムロを見つめ、カミーユが呟く。
「嘘…」
両手を口元に当て、レコアが悲痛な声を上げる。
カイは、ゆっくりとアムロに近付き、その呼吸と鼓動を確かめる。
そして、顔を上げると、三人に向かって、小さく二度、首を横に振った。
「そんな…ようやく外に出られたのに…!」
レコアの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる…。
そんな中、カミーユが怪訝な顔をする。
「…何か…違う…。何だろう…、多分アムロさんは死んでない…」
その言葉に、クワトロとカイが顔を見合わせる。
「ああ、多分。アムロは生きてる」
カイは、柔らかいアムロの癖毛を撫でながら、カミーユに答える。
「どういう事なの?カイさん!」
カイの言葉に、混乱したレコアが詰め寄る。
同じ様に、カミーユもカイに疑問の声を上げる。
「どういう事ですか?カイさん」
「このアムロは…本物のアムロじゃない。おそらくあいつのクローンだ」
「え⁉︎」
レコアとカミーユが一斉にアムロを見つめる。
「どうして、そんな事が言えるんですか?」
「綺麗すぎるんだよ、コイツの身体」
「綺麗すぎる?」
「ああ、言ったろ?昔の機体は、コックピットにモロに衝撃がくるから、出撃の度に全身痣だらけになるって。俺の肩には、未だにベルトの痕が残ってるって」
「え、ええ」
「コイツを見つけた時、身体には傷痕どころか痣も残ってなかった」
そう言って、カイはチラリとクワトロに視線を向ける。
おそらくクワトロも、初めてアムロを見つけた時に気が付いていたのだろう。
かつて、彼が付けた右腕の傷痕も無かったのだから。
「あ…」
カイの言葉に、カミーユがハッとする。
確かに、水槽の中にいたアムロには、痣なんて一つも無かった。
「でも、どうして…」
「初めは、アムロの記憶を植え付けられているのかと思った。だが、記憶の移植は操作する人間が知りうる事を植え付けるだけだ。しかし、コイツは俺とコイツしか知らない様な事まで知っていた。だから、中身はアムロ本人だったと思う」
「だから、あんな質問を?でも…、一体どういう事…なんですか?」
「俺にもよく分からんが、身体はクローンのものだが、心は本物のあいつのものだったと思う」
「どうして、そう思うんですか?」
作品名:忘れないでいて【後編】 作家名:koyuho