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Family complex -怪我をした日-

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おまけ1






ルートヴィッヒがフェリシアーノを伴って出て行き、玄関が閉まると菊は重い息を吐き出した。
何だか、どっと疲れが来たのは気のせいだろうか。
コキコキと音のなる首を回すようにして居間に戻ると、ギルベルトは腕に頭を載せる形で寝転がってテレビを見ていた。
「帰ったか?」
「ええ。ルートヴィッヒさんが近くまで送ってくるそうですよ」
菊がそう言うと、ギルベルトは大きな息を吐いたかと思うと、だらりとその場に仰向けになる。
「あー、疲れた」
どうやら、彼も自分と同じ事を思っていたらしい。菊は思わず軽く噴き出した。
「お疲れ様でした」
側に腰を下ろして言うと、ギルベルトがこちらを見上げて苦笑いを浮かべる。
「ルッツの怪我は心臓に悪いぜー」
「おや、それがお仕事でしょうに」
菊が揶揄うように言うと、ギルベルトはそうだけどよー、と身体を起こすと後ろ頭を掻いた。
「昔は俺もしょっちゅうだったし、普段もっとひっでえ傷だって見飽きてるんだけどな」
さっきは心臓が止まるかと思った、とギルベルトは深くため息を吐いた。
どうやら、冷静に振る舞っているように見えた顔の下では相当動揺していたらしい。
「私もですよ。やっぱり自分の家の子は違うんですかねえ」
菊もしみじみと言って、ふうと息を吐いた。
ルートヴィッヒの怪我は、子供なら誰しもが一度は作った事のある程度のごく軽いものだった。普通なら大した動揺もなく簡単な手当をすれば済む。
けれど、それを実際に見た瞬間に頭が真っ白になってしまうほどだったのは、やはり数週間でも同じ屋根の下で生活している者の事だからなのだろうか。
そう考えていると、ギルベルトがにやにやしながらこちらを見ているのに気づいた。
「…なんですか」
「いや、やっぱお前にルッツを預けて良かったなあって」
唐突な言葉に、菊の顔に朱が上る。
「なっ、なんですかいきなり」
「バーカ、別にただそう思っただけだ」
「は!?」
菊が顔を真っ赤にしていると、玄関の戸が開く音がして、ルートヴィッヒの声が聞こえて来る。
「ただいま」
菊は誤摩化すように慌てて再び玄関に出て行った。
おかえりなさい、という言葉を聞きながら、ギルベルトはこっそりと満足げな笑みを浮かべた。
例え1ヶ月だけの間柄だとしても、ギルベルトもルートヴィッヒも、菊にとってはとても身近な存在になっている様子なのが、どこかくすぐったくて、とても嬉しいのだった。