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ブルーファントム
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エースコンバット レイム・デュ・シュバリエール

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 新入社員などではない。なんでも、オーナーがわざわざ人事に頭を下げてここに連れてきたそうだ。
 おっちゃんの親戚? もしくはロリコン趣味でもあるのだろうか、なんて思っているあたし。
 ボンボンだから気を使うんだと、教官は同性で経験も豊富なあたしが一番適任だというが……どうも、腑に落ちない。面倒な仕事を押し付けられているだけとしか思えない。
「……で、とりあえずあたしのお古のツナギとフライトスーツを貸すよ。ちゃっちゃと着替えな」
 あたしは自分のロッカーを開き、昔着ていた耐Gスーツを引きずり出し、アイツに渡す。
 オーナーのグッド・フェローは人事に試練を課されたのさ。「この世間知らずの子供に、それだけする価値があるのか見出してみろ」ってな感じだったんだろうね、きっと。人事部もオーナー相手だろうがしっかりしてるね。
 ……けれど、それで引かないおっちゃんが問題だよ。耐Gスーツの着方もろくに知らない娘をいきなり飛ばせるなんてさ。
そんな危なっかしい試験の立ち会いだなんて、あたしが一番損を被っているじゃないか。
「…………」
 黙々と着替えるアイツを眺めながら、そんな事ばかりがダラダラと脳裏に淀む。
「……いけないね」
 なので、こんな事ばかり考えてたら駄目になってしまうと、何か別のことを考えることにした。明るく楽しく、それができるに越したことはない。
 そしてふと、着替えるアイツの背中に目をやる。
「……?」
 やはり、お嬢様らしく透き通るような白い肌、痩せ型というほどでもない線の細い体型。箱入りって感じが背中からも滲み出ている。
 ……ただ、それだけじゃなかったのさ。
 薄っすらと筋を描く背中の影。スラリと伸びた堂々たる背筋。そこからは、品の良さに混じってどこかたくましさも匂わせていた。今思い返せば、の話だけどね。
 面倒だ、なんでこんなこと、そんな気持ちに混じって、あたしに何か別の感情が芽生えたと思うね。自覚はなかったけど。
「……ふぅ」
 考えている間にアイツの着替えが終わる。あたしより身体が小さいアイツでは、フライトスーツは少しダボダボだ。
「よし、じゃあ行こうか。お前さんのテストに」
 感じたアイツの秘めたもの、今は整理のつかぬことだと割り切り、あたしはさっさと事を進めようとアイツを急かす。
 しかし、アイツは立ち止まって目で何かを訴える。
「どうしたんだい?」
「見てた?」
 理由を聞くと、よくわからぬ返答が返ってくる。別段、火傷痕とか蕁麻疹があったわけでもなくきれいな肌だったはず。見られたくないものはないだろうて。
「何が」
 なので、再度聞き直す。
 すると、アイツは少し顔を紅潮させ、伏せ目でこちらの顔を少し睨むように見て一言。
「えっち」
 ……なんだい、この子は。
 思い返したら笑えちまうよ、ホント。どんだけ緊張感の無い小鳥ちゃんなんだってね。呆れて顔に出ちまってたさ。
「……女同士だろう、何を馬鹿言ってんだい」
 あたしは急かすように「下らないこと言ってないで、さっさとやる事やってしまおう」って感じで手招きをした。
 そして、そこからはあたし達は言葉を交わすことなく、『ブルーファントム』の下へと向かった。