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ブルーファントム
ブルーファントム
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エースコンバット レイム・デュ・シュバリエール

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 ◇ ◆ ◇

 F‐4ES Blue Phantom(ブルーファントム)。あたしがイメトレに使っていた機体。化石なんかじゃない、ちゃんと動くのさこいつは。
 大昔、それこそ全盛期はなんと百年以上前とも言われているこの機体の原型。現代の技術で蘇った古の英霊とでも言おうかね。
「デザインは古臭いどころじゃない骨董品だが、中身は怪物さ。様々な近代化改修が為されてるらしくて……」
「…………」
 あたし達はその操縦席についている。後部座席にはあたし。そして、前にはアイツがいる。
 こんな素人が何故前の席なのかってのはなんのことはない、ただの教官の提案さ。
 どうすりゃいいんだ、ってあたしが教官に聞いたら、「身の程知らずに現実を叩きつけてやったらいいんだよ」だとよ。あ、声真似ね、コレ。似てた? 教官も人が悪いよね。
 アイツに乗ってもらう乗り物の説明をするも、聞いていないかのように黙っている。
「……ま、お前さんにゃどうでもいいだろうけど。ほんとにやる気あんのかい?」
「ある」
 だが、やる気を聞いたときに返ってくる声は、綺麗に澄んでいた。ただただ真っ直ぐ心に届く声、グッドフェローのおっちゃんはこれにやられたんだな、多分。後でからかってやろう。
 あたしは騙され……いや、甘くない。
「シンプルで心に響く答えだこと。けど、やる気でどうにかなる問題じゃないよ、これは」
 語気を強め、あたしはその過酷さを前にいる世間知らずに叩きつけてやることにした。
「いいかい? これからお前さんは生死(・・)に関わる試練をこなさなきゃいけないのさ。 今、お前さんにこの『ブルーファントム』で空を飛んでもらう。それはわかるね?」
「うん」
「シミュレーターでの腕試しなんかはしない。練習機も使わない。場違いなお前さんにそんな良い物なんか使わせられないのさ。 しかも、この機体、相当ピーキー。スペック上は現行機種に劣らないくらいの性能。けど、その性能一つ一つをうまく噛み合わせるには、操縦するものの技術を問われる不安定な機体なのさ」
「うん」
「つまりだ、『可能性』を示せって事だよ。学生の部活動のようなテンションで入り込まれちゃ困る場所なのさ、ここは。 お前さんは今、あたしに対してその『価値』があるのかをその身で示さなきゃならないんだ」
「うん」
 ……結構真剣に話をしていてもこれだ。物言わない奴なんだよ、アイツは。
 けれど、三度言った返事のどれも、返答に間が無かった。迷いは無い、シンプルな答えだったのさ。
「……ポンポンポンポンとかんたんに肯定するけどね。アンタ、ほんとに分かってんの?」
「わかってる」
「あたしとしちゃあここで引き下がってもらいたいんだがねぇ。あたしも危険を被るんだよ。素人のお前さんと乗るわけだし」
「知ってる。だけど、見せるから」
 そうそう、この時からこれだと決めたことは譲らない奴だったね。
 アイツには揺るぎない決心があったのさ。未だ、どんな決心かは知らないけれどね。
 あたしもそれには薄々勘付いていた。だが、口先だけで手の動かないの甘ちゃんという線もある。簡単に気を許すわけがない。
「……ちっ、頑固な奴だね。あたしにゃここで引いてもらったほうが有り難いんだけどねぇ」
 それに、今から行うフライトはアイツだけでなく、あたしにも命の危険がある。後席からも操縦はできるが、回復不可能な姿勢に陥った際はどうにもならない。
 ……まあ、あのときゃそれよりも面倒だという気持ちが強かったけど。だって、あたしがそんなので落ちるなんて思ってないし。何年空飛んでると思ってんだ。
「私はお断り。飛んで、見せる」
 そして、アイツも一歩だって引かない。これ以上続けても折れないだろうと、あたしは諦めちまった。
「はっ、わかったよ。自分の青さ、思い知るこったね」
「…………」
「さ、ヘルメット被りな。バイザー下ろすのも忘れるなよ、リボンちゃん」
 あたしはヘルメットのHMDを起動させながら、目立つリボンから勝手につけたあだ名で呼びながらアイツに言った。

 ◇ ◆ ◇

「チャッティ、ブルーファントム、離陸指示があるまでそのまま待機せよ」
「はいよ、了解」
「返事は一回だ、プリンセス。前に着く後輩に示しがつかねぇぜ」
「あんたが言えることかい、教官」
 タキシング(指示された滑走路まで飛行機を地上で移動させること)が済み、あたしは無線で教官とやり取りしている。
 ったく、何が『後輩』だよ。どうせ音を上げて消えちまうんだから、なんて心でつぶやきながらね。
「本日は特別な飛行につき、この俺が飛行管制・指揮を務めさせてもらう。いいな?」
「それでいいから、さっさと離陸指示を出しておくれよ。ちゃっちゃと済ませよう」
 いつもの冗談めいた口調で話す教官、あたしは急かすように離陸指示を煽る。
 だが、あのオヤジは「へへへ」と腹立たしく笑って、まだやることがあると言う。いつもながら面倒くさい人だ。
「素直に上官命令に従いな。 それで、だ。前に座ってるお嬢ちゃん?」
「……何?」
 その教官の呼びかけに、ただ一言だけで答えるアイツ。あのおっさん相手とは言え、上官にする返答ではない。
アイツも早く飛ばせろといった様子だ。教官は気にしていない様だが。
「酔狂なオーナーの目に留まったお前さん、特別に『TACネーム』をこの場で授けてやるよ」
「……何だって?」
 そして、なんの思いつきか、教官はアイツに命名(・・)をするという。
「こんなド素人の観光客にかい?」
「こんな、とは随分な言われようだぜ、嬢ちゃん。採用試験は筆記と体力テストは合格、面接までは通ってるってのにな」
「……は? 面接まで通ってる? マジで?」
 つまり、面接で落とされたアイツを、オーナーが拾ってきたってわけか。とてもそうは見えなかったが。これはロリコンの線が強いか。
 けれど、それでもそんなアイツに『TACネーム』を与えるだなんて。あたしは何かあると気が付き始める。
「……たっくねーむ?」
「ん? ああ。あだ名みてえなもんだ。俺たちヒコーキ野郎のな。分かりやすい呼び名での方が無線で判別しやすい。名前被りも防げる。 後ろの『チャッティ』もそうだ。今日はちょいと口数は少ないが、おしゃべり好きってな意味だ」
「うるせーやい。気に入らないあだ名ばっかりつけやがって。そっちこそ『ハートブレイク・ワン』なんてさ、だれにフラれたのさ」
「私語は慎め、チャッティ」
 たく、都合が悪くなるとこれだ。ずるいオヤジ、教官は何も言われなかったかのように続ける。
「さておき、今からそれを嬢ちゃんにつけてやる。モチベーションが上がるし、もし失敗しても記念になるだろう?」
 つまりまとめると、グッド・フェローと同じく、バートレットのオヤジもこのリボンちゃんにひいきしてるんだってね。あたしはそう思った。
「……ふーん」
 同時に、アイツが抱く決心と合わせて、オヤジ共はアイツに何か光るものを見出したのか、とも勘付いた。
 確かめる役目をあたしに託す理由はわからなかったけど、何かあるんじゃないか?そう思い始めたあたしは、ここで初めてアイツにプラスの感情を向け始める。