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雫 1

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「今日は顔色が良いな」
柔らかな癖毛を撫でると、目を細めて気持ち良さそうな顔をするアムロに、庇護欲の様なものが込み上げる。
歴戦の戦士であり、最強のモビルスーツパイロットである彼に、そんなものは必要ないと分かっているが、素直にそう思う。
まだまだ身体中に包帯を巻き、顔には大きなガーゼが貼られている。
これから一年程掛けて何度か皮膚移植を繰り返す。
「傷が癒えたら、庭を案内しよう。この庭の薔薇は見事だぞ」
フロンタルのその言葉に、アムロが微かに笑みを浮かべる。
その反応に、フロンタルの心は今まで感じた事の無いほどの喜びを感じた。
「アムロ・レイ…」
フロンタルはそっとアムロの頬に手を添えて、その薄い唇に自身の唇を重ねる。
触れるだけのキス。
しかし、触れた柔らかな感触にフロンタルはある欲望が自分の奥底から湧き上がるのを感じる。
ファーストニュータイプであり、自身のベースとなったシャア・アズナブルが求め続けた存在。
『この奇跡の存在を自分の物にしたい』
そんな想いが込み上げた。
シャア・アズナブルの再来としてではなく、フル・フロンタル個人として欲しいと思った。


◇◇◇


それから二年、ネオ・ジオン残党軍『袖付き』の拠点となる屋敷に、一人の少年が連れてこられた。
名前はバナージ・リンクス。
バナージは、その一角にある部屋へと案内されると、バタンと背後の扉が閉められる。
それに戸惑いながらも、部屋の内部へと足を進める。
広い部屋には窓を背にする様に執務机が置かれており、右手にはロココ調の優美なソファセット、部屋の其処此処には高価な調度品が飾られていた。
「凄い…」
バナージはそう呟くと、部屋中を見回す。
そして、部屋の左手に扉がある事に気付く。
隣室に繋がる扉だと思われるが、何故かバナージは、その向こうへ行きたいと言う衝動に駆られた。
ゆっくりと扉の元まで足を進めると、ドアノブを握り、回してみる。
すると、鍵は掛かっておらずガチャリと音を立てて扉が開いた。
「あ、開いた…」
バナージは少し躊躇いながらも、その扉をゆっくりと押し開く。
そこは、先程の部屋の半分ほどの広さの部屋で、部屋の奥、窓の近くにはベッドが置いてある。
そして、そのベッドには、一人の青年が45度程上げられたベッドに背中を預ける様にして座っていた。
先ず、目についたのはその顔の左半分を覆う包帯。
そして、その包帯の隙間からは赤茶色の癖毛が見える。暫く散髪をしていないのか、随分と伸びていた。
バナージは引き寄せられるように、その青年の元まで歩いて行き、ベッドの横に立つ。
すると、青年がゆっくりとバナージを見上げた。
しかし、何か様子がおかしい。
その瞳は虚ろで、あまり焦点が合っていないのだ。
「…あの…」
どう言えばいいか分からないが、バナージは思わず声を掛ける。
その声に反応するように、青年が少し笑う。
片方しか見えないが、その瞳は綺麗な琥珀色で、優しい思惟を感じた。
「あ…」
その笑顔で、バナージは今まで緊張して、力の入ってしまっていた肩から力が抜けるのを感じる。
『何だろう…凄く…安心する…。優しく包み込まれているみたいだ』
白いシルクのパジャマに身を包み、その下から覗く手には少しだけ色の違う部分がある。
おそらく皮膚移植の手術をした痕だろう。
包帯は巻かれていないが、大きな火傷や怪我をしていたのだろうと思われる傷痕が、パジャマの胸元や袖から見える。
バナージはそっとその傷痕に触れる。
すると、脳裏に美しい緑色の光が広がった。
それは、シャアの叛乱があったあの日、宇宙を染めた光。
そしてその中に、光に包まれていて顔は見えないが、男の姿が見える。
金の髪をした男の姿が。
「…誰?」
バナージがよく見ようと意識を集中したその時、背後からカタリと物音がする。
ビクリと肩を震わせ振り返ると、今見ようとしていた男とよく似た印象の男が立っていた。
金髪に、銀の仮面で目元を隠した男。
ネオ・ジオン『袖付き』の特徴的な制服を身に付けた、フル・フロンタル大佐だ。
こちらを真っ直ぐに見つめてくるフロンタルを、バナージも見つめ返す。
その時、ある直感が働く。

『この人は“あの人”じゃない』

今、光の中にいた男と印象は似ているが、明らかに違うと感じる。
『でもなぜだろう…少し、“あの人”の気配も感じる』
そんな事を考えていると、フロンタルがバナージに歩み寄り、話し掛けてきた。
「ここに居たのか。部屋にいないから探したぞ」
その声音は、思ったよりも優しく、紳士的だった。そして、ベッドの青年へと視線を向ける。
「君が呼んだのか?」
フロンタルはゆっくりと青年に近付き、その髪を優しく撫でながら青年に問いかける。
しかし、青年が答える事はなく、ただ虚ろな瞳でフロンタルへと顔を向けただけだった。
「随分髪が伸びたな。そろそろ切らねば…」
髪を一房掴んで、その感触を楽しむように指に絡める。
そして、流れるようにそのまま青年の頬にキスをする。
「あの…この人は…?」
バナージの問いに、フロンタルが視線を向けると、口元に笑みを浮かべる。
仮面で顔の半分が隠れているため、はっきりとはわからないが、優しい表情を浮かべているのが伝わる。
「彼か?私の大切な人だよ。先の戦争で大怪我を負ってね。ここで静養中なのだ。三年掛けて漸くここまで回復した」
青年の袖をめくり、腕の皮膚移植の痕を優しく撫で上げる。
「後は顔の手術痕が癒えれば…」
顔に巻かれた包帯の上から優しく頬に触れる。
「でも、あの、少し様子が…」
フロンタルは、バナージの言いたい事を悟ると、クスリと笑う。
「痛み止めを処方していてね。そのせいで意識がはっきりしないんだ」
実際には、そこまで強い痛み止めはもう必要ないのだが、この青年、アムロ・レイの逃亡防止の為に投与している。
「…そうなんですね…」
正直、あまり納得していないが、バナージはそう答える。
それは、アムロから恐怖や悲しみといった負の感情を感じなかったからだ。
アムロが辛くないのならば、大丈夫だろうと己を納得させた。

バナージがアムロに会ったのはこの一度きりだったが、バナージがアムロを忘れる事は無かった。
そして、ラー・カイラムの艦長室で、アムロ・レイの写真を見た時、あれがアムロ・レイだったのだと知る。
ただ、その事を、バナージはブライトに言う事が出来なかった。
言うべきだと分かっていたが、何故か言ってはいけない気がしたのだ。


◇◇◇


フロンタルは、バナージを執務室へと移動させ、ラプラスの箱について問いただしたが、結局バナージは箱について何も語らなかった。
分かった事は、彼もまたピスト財団の関係者である事。そして、ニュータイプ能力を有している事だけだった。
無理矢理にでも、聞き出そうと思えば出来たかもしれない。
しかし、そうしようとは思わなかった。
そして、彼を傷つける事も…。


◇◇◇


フロンタルは、その日の執務を終えると、アムロのいる部屋へと足を運ぶ。
そこには、医師と看護師がアムロの治療をする為、バタバタと動き回っていた。
「フロンタル様」
作品名:雫 1 作家名:koyuho