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3代目キセノン
3代目キセノン
novelistID. 65653
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STAR TREK TRAVELER

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「当たり前だ。百倍高まる」
「調整に時間が53.86時間ほどかかるがすぐだ」
「頼んだぜ」

 ナカタがターボリフトをから出てくると、ブリッジ内には、艦長、副長、ポレックらが動き回っていた。ナカタは、ブリッジ内をゆっくりと見回す。
「みんな、復活している…」
息を詰まらせるナカタ。
「目が赤いぞ。何らかの感染症か」
ブリッジの端に立っていたダヴィンチ姿のトラベラーが言っていた。
「まるで本物じゃないか」
「本人のキャラクター設定に基づいて行動するようプログラムされている」
「トラベラー、ありがとう…、なんて言えるか。このバカ野郎」
「人間の感情というものは、複雑だな。実に興味深い」
トラベラーは平然としてブリッジ内を歩いている。
 「ナカタ、君の席はここだ」
艦長がナカタを艦長席に案内する。
「艦長、それは恐れ多いですよ」
ナカタは、躊躇していた。ポレックが科学士官コンソールから歩み寄って来る。
「ナカタ大尉、君は唯一の生存者だ。今ここで指揮を執るのが最も論理的である。座りたまえ」
「しかし…」
「我々はホログラムだ。それを気にするのは非論理的だ」
「トラベラー、艦長と副長は、再現しなくていい。気持ちの整理がつかない」
ナカタが言うと艦長と副長は姿を消した。
 ナカタは、ゆっくりと艦長席に座わり、座り心地を試していた。
「想わぬ、大出世をしたものだな」
ナカタはひじ掛けを指で軽くさすっていた。
「さて、ナカタ艦長。やることが山積みだぞ。インパルス推進で行ける範囲で…」
トラベラーは言いかけたが、ナカタに遮られた。
「なんたら、同位体を探すんだろう。格好良くエンゲージとは行かないよな」
「誰と婚約するのだ。女性もホログラムだぞ」
トラベラーは不思議そうな顔をしてナカタを見ている。
「気にするな」

医療部の診療台を直し終えたナカタ。診療用の精密機械は部品が足りないので、半分ぐらいしか機能していない。ナカタは手の火傷がだいぶ自然治癒したので、作業がしやすくなっていた。それでも皮膚は赤くただれた傷跡として残っている。
「医療部はある程度使えるようになったが、肝心の医者いない。トラベラー聞いているか」
ナカタは天井に向かって言う。
 トラベラーが姿を現す。
「医療部長のスミスを作れば良いのだな」
「ん、どうせなら彼よりもジェシカ・ムーアの方が良いな。彼女もかなりの医療知識を持っているから」
「それでモチベーションが上がるのだな。お前の感情を考慮する。しかし独自のキャラクターで艦内を自由に行
動する人間並みのホログラムの投影は5人が限界だ」
「5人になるか」
「ポレック、ブラウン、バーンズ、ロムガ、それにムーアの5人だ」
「トラベラー、あんたは含まれないのか」
「私は別格だ」
トラベラーは姿を消した。

 ナカタは診察台に腰かけて医療部を見回している。天井の化粧パネルは、ナカタがパテで補修した後がハッキリと見えていた。
「ナカタ大尉、どうしました。怪我ですか」
ナカタが振り向くと、白人女性のジェシカ・ムーアが立っていた。
「あっ、変わりがない」
「大尉、何でそんなに私を見るのですか。さては気があるのね」
「えぇっ、気が…」
「ジョークよ。その手、診せて」
ムーアはナカタの手を取り、触診している。
 いつの間にかニヤニヤしているトラベラーが立っている。
「どうだ。本物と同じだろう」
「そう言えば、トラベラーから聞いたわよ。あなたが唯一の生存者で指揮を執ることになったって。
昇進おめでとうございます。ナカタ艦長」
「艦長だなんて、まだ慣れていないけど」
ナカタは頭をかいていた。
「艦長、」
トラベラーが水を差すように言う。ナカタは自分のこととは思わず聞き流している。
「ナカタお前の事だ」
「なんだよ」
「意外なことが判明した」
「あんたでも意外にことがあるのか」
「インパルスドライブの修復に使った同位体297だが、再分解して、ワープドライブの修復に回せば、ワープ1で航宙できるようになる」
「できても、どこに行くのだ。ワープ1では知れてるぞ」
「私の推測が正しければ、ワープ1で行ける範囲内に同位体297などが豊富にある星系があるはずだ」
「あるばずということは、もしなかったらどうする」
「この状況を考えると、そうなる確率が格段に高い」
「確率ねぇー。ヴァルカン人みたいな言い草だな」
「とにかく、細かな作業を手伝ってくれ」

 空気のないインパルス・ドライブ区画。ナカタは宇宙服を着て、機器コンポーネントの間を浮遊していく。光のベールが機器コンポーネントの一つを取り囲むと、形が溶けて、ドロドロの状態になる。それが、雷のような光を受けると別の機械部品になった。
「これをワープドライブ区画に持っていけば良いのか。艦内の重力はオフにしてくれよ」
ナカタは宇宙服の無線を通してトラベラーに言っていた。
「お前だけでは、手が足らんだろう。ブラウンも手伝わせる」
トラベラーが言うと、ブラウンが姿を現した。
「艦長は前を持って、俺は後ろを持ちますから」
ブラウンがぶっきら棒に言う。
「艦長、あ、俺か。わかった」
ナカタとブラウンは機械部品を引っ張って行った。

 与圧され空気があるワープドライブ区画では、ロムガが作動していないワープコアをセンサーで調べていた。
「本体そのものは、取り換えなくても使えそうね」
ロムガは少し安心したような顔になっていた。近くで作業をしているポレックはうなづいている。
 宇宙服を着たままのナカタとブラウンが漂ってくる。
「お待たせ。これを付ければ、ほぼ完成だろう」
ナカタはフェスプレートを開けてロムガに言う。
「艦長、何言ってるのよ。まだこれで半分ぐらいなんだから」
「まだ何往復もしなければならないのか」
ナカタはうんざり顔であった。

 ブリッジの主スクリーンには、木星型の惑星を背景にしている氷で覆われた白い衛星が映っている。
「スキャンした結果、『errrxy』同位体297があの衛星には豊富にあります」
ポレックが科学士官コンソールから報告している。
「トラベラー、ワープ1で行ける範囲に、これがあると良く分かったな」
艦長席に座るナカタは、副長席に座っているトラベラーに言った。トラベラーは無表情であった。
「トラベラー、もっと喜べよ。言う通りになったじゃないか」
「艦長、とにかくお前しか転送できないから降り立ってもらう」
「また、同位体を取って来るんだろう」
「同位体の鉱脈の正確な位置を測定してくるだけで良い。後は転送で回収する」
「わかった。艦長が自ら行くなんて、あまりないよな」
「文句を言うのも感情の現れだな。覚えておこう」

 氷原がどこまでも続く衛星表面に転送されたナカタ。宇宙服の姿のナカタはトリコーダーを地面に向けている。ナカタは、軌道上から探査したデータと照合しながら、詳細な位置を記録していた。トリコーダーによると、同位体以外にも、鉄やニッケルなども確認できた。
 「トラベラー、ここは宝の山じゃないか。ここで修理したら『アトカ』は新品同様になるぜ」
ナカタの宇宙服の無線に返答はなかった。
「おい、トラベラー聞いているんだろう」
「艦長、我々はしばらく滞在することになる」
作品名:STAR TREK TRAVELER 作家名:3代目キセノン