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3代目キセノン
3代目キセノン
novelistID. 65653
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STAR TREK TRAVELER

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「トラベラー、あんたに感情はないのはわかるが、もっと喜べよ。転売市場や地球へワープ艦速で自由に動けるようになるんだぜ」
「黙っていても、仕方ないから言おう」
「言いたいことがあるのか」
「こんな近くに別の星系があるのは不自然なのだ。あるということは、…説明してもわかるか…」
「もったい付けるなよ」
「放浪星系と思われた外に放浪星団があり、その中にいるはずだ」
「ええっ、放浪星団。動いている星団か」
「お前も私も捕らわれの身なのだ。この星団をコントロールしている存在に会わなければ、出られないだろう」
「存在って」
「身体を持つ種族かエネルギー生命体か不明だ、星団の広さや移動速度もわからない」
「あんたでも、わからないものがあるのか」
「その存在に出会えても、脱出できる保証はない」
「だとしら、こうやって勝手に資源を採掘していたら、その存在とやらが、文句を言いに来ないか」
「その可能性はある。しかしいつ来るかは見当もつかない」
「あんたのお得意な50年後とかか」
「数秒後ということもある」

 天体測定ラボにナカタとトラベラーがいた。
「今日で7日目だが同位体の採取は順調に進んでいる。ワープドライブは完璧に使えるようになるだろう」
「トラベラー、ワープドライブが使えても、放浪星団から抜け出せるのか」
「このラボで観測した星団内の星系の間隔を考慮すると238光年から319光年の間と推察できる」
「そんなものなら、ひとっ飛びで脱出できるぜ」
「星団を維持するために境界面の重力場はかなりのものだ。簡単にはいかんだろう」
「それじゃ、ここの管理者に一刻も早く会うしかないな」
「それも、いればだが…」
「何日もここで採掘して、誰も来なかったら、そういうことになるか」
ナカタは頭上に広がる星々を見ていた。

 衛星に広がる氷原には、ドーム状の建物が見える。その建物の遥か上を『アトカ』が周回していく。この惑星系にはある人工物はこれらしかなかった。
 ドーム状の建物の窓から氷原を眺めているナカタ。制服のコミュニケーターをオンにする。
「トラベラー、あんたらの同位体を使った技術は、部品とか機械が作れるが、俺らのレプリケーター技術と同じよ
うなものなのか」
「見た目は、その遅れたレプリケーター技術と似ているが、もっと高度なものだ」
「あんたらの技術を習得したら、特許で儲けられそうだぜ」
「勝手にしろ。それもここから脱出できたらの話だがな」
「それでトラベラー、そろそろ、ここは引き払うのか」
「『アトカ』の修復は121日で完了した。補給物資も積み終えた。後は艦長のお前次第だ」
「そんなにここに居たか。俺は誰にも邪魔されない、ここが気に入っているがな」
「艦から離れられるのは、お前だけだからな」
「しかし、どこへ行く。管理者が居そうな惑星はあるのか」
「少なくとも、ここから2光年の所に星系がある」
「やっぱり近いな。取りあえず、ここはそのままにして、そこに向かうか」

●4.模索
 惑星降下用のシャトルは、『アトカ』を飛び出し、目の前の惑星に降りていく。雲が少ない惑星の表面は、陸地と海がほぼ半分ずつであった。
 ナカタは、操縦レバーを楽し気に操作している。
「トラベラー、こいつは、以前のものに比べて操縦性が増したぞ。こうなると自動ではなく手動の方が断然楽しい」
「今、見えている下の海に降りろ」
「わかったが、テスト飛行の性能を試すためにも、この辺りをもう一周してから降りるよ」
ナカタはグイッとレバー引いていた。

 水深60センチ程の浅い海が広がる地帯にシャトルは着陸していた。空気が薄いのでナカタは簡易酸素マスクを装着してシャトルの外に出た。空を見上げると、大中小と太陽が3つ出ていた。ナカタの影は、いろいろな方向に薄っすらと伸びている。ナカタは、海水のサンプルを採取し、手にしている分析器で調べる。モニター画面に赤い表示が点滅する。急いで、シャトル内に戻るナカタ。
 ナカタはシャトルの通信機をオンにする。
「トラベラー、ここの海水は硫酸の濃度が高過ぎる。まともな生命体はいないだろう。希硫酸の雨も降っている」
「艦長、サンプルは採取したな。すぐ戻れ」
「了解」
ナカタは、通信をオフにした。その直後、シャトルが激しく揺さぶられた。
 ナカタはコックピットの窓から外を見ると、地割れが各所で発生していた。ナカタは、素早くコンソール飛び込み、シャトルを上昇させる。

 あたり一帯の地面が地割れして、海水が地面に滲みこんでいき、浅い海は消えてしまった。その上空を飛ぶシャトルは角度を変え、一気に大気圏外に向かった。

 ブリッジの艦長席に座るナカタ。その隣の副長席にはトラベラーが座っていた。
「あの惑星は、身体を持つ生命体には相応しくないが、エネルギー生命体なら快適で問題はない」
「確かに、海には小魚も見えなかった」
「そこから推察すると、管理者はエネルギー生命体ではないと言える。あそこを利用していないのだから」
「隠れているのかもしれないぞ」
「地殻の下にか。あり得なくはないがな」
トラベラーはヒゲをさすっていた。
「艦長、シャトルベイに異様なエネルギーサージを感知しました」
ポレックが冷静に言う。
「攻撃を受けたのか」
「それが、かなりのエネルギー量なのですが、どこにも被害はないようです」
「ポレック、シャトルベイに行こう」
ナカタはターボリフに行きかけると、トラベラーが急にしかめ面になる。
「艦長…、ハイブリッドAIに何者かが侵入した」
トラベラーの言葉に足が止まるナカタ。ナカタはポレックだけ、先に行けと合図する。
「貴様は何者…ertyo.ggopy…、立ち去れ」
トラベラーは、憤怒の表情で叫んでいる。のたうち回るトラベラー。その場に居合わせたロムガ、バーンズもナカタと共に様子を見ていた。トラベラーの姿が薄れ、光が体から漏れる。
「立ち去れ」
トラベラーが大声で叫ぶと、トラベラーの姿は安定した。
「艦長、お前がシャトルで、変なものを連れて来てしまったようだが。私が追い払った」
トラベラーは冷静さを取り戻していた。
「言葉が発せられるぞ。実に面白い。久しぶりに身体と言うものが体験できる」
リリィ・ホイ副長が立っていた。声は男の声になっている。
「貴様、まだ、そこにいたのか」
トラベラーは、副長を見ている。
「お前らは何者だ。身体を持つ者と、エネルギー体ばかりではないか」
「トラベラーだ」
「また迷い込んだのか」
副長は、困り顔になった。
「あんたはここの管理者なのか」
ナカタがブリッジの真ん中に立っている副長に尋ねる。
「管理者!?なんの管理をする者だ」
副長はナカタの方を見る。
「この星団をコントロールしているのは、あんたか」
「そんなものは、いない。様々な生命体の寄合所帯と呼べるものだ」
「いないって、どうしてわかる」
「我々が探したからな。それよりもこの船を私に使わせろ。お前らは出ていけ」
「それは無理な相談だ。私は、このAIから出られないのだ」
トラベラーは、その後、ニヤニヤする。
「たぶん、お前も出られないぞ」
「バカな、うむ、…」
副長のホロが消えかかるが、完全に消えなかった。
作品名:STAR TREK TRAVELER 作家名:3代目キセノン