ファラジ
アムロの成長の過程において、コンピューターにIT関連は日常の一部となっていた。
子供と共に過ごすよりもITの有用性を高める事に熱心な父。
そんな父に愛想をつかしながらも、生活の為に主婦として家庭を守る母。
愛情の希薄な環境において、少しでも自分に視線を向けて欲しいと子供が思う事は、当然であり必然だった。
その手段としてアムロが頑張ったのが、父と同じIT技術の有効活用だ。親子そろってパソコンに齧り付き、朝から晩まで画面と睨めっこの毎日。結果として母親が離婚を一方的に告げて家を出て行ってしまったのは、成るべくして成ったと言える。
家事を担っていた母が家を出ていけば、当然『男所帯になんとやら』
食事は固形栄養物と液状栄養物
掃除も行き届かなくなり、動線上に物がないだけの雑然とした家屋内
洗濯物は自動洗濯乾燥機にお任せな為に、シワや縮みなど当たり前
生きていれば無問題! と言った日常生活を見るに見かねたアムロの幼馴染一家が、時折差し入れや掃除をしてくれているおかげで、かろうじてカビに浸食されずに済んでいた。
そんな生活を十年ほど営んでいたアムロも、彼の研究に奨学金を出すと言ってきた大学に進学する為に実家から学生寮に引っ越した。その後、父と顔を合わせる機会は皆無で、最後に顔を見たのが父の最期の時、すなわち葬儀を執り行う時となってしまったのはあまりに薄情ととられかねない事象だが、互いに研究に没頭していた間柄。致し方なかろうというのが同業者の認
識であった。