ファラジ
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アムロの父は、己の技術をロボット技術へと流用し、軍事関連企業から多額の報酬を受けていたが、アムロ自身はその父への反発心を反抗期から芽生えさせていたので、ITを人の為に使う事に専念していた。
すなわち、IT技術で脳内に発生するインパルスを瞬時に読み取り、それを正しい動作へと反映させるのである。
すでに「HAL」と言うサイボーグ型動作支援ロボットがあり、インパルスを察知したら体に装着したマシーンが関節の屈伸と下肢の保持を行ってくれ、それによって片麻痺患者が可動域を広げている。
だがアムロは、内戦や事故で欠損した四肢を補う義肢にその機能を付加し、ユーザーが意識したとおりに義肢が動いてくれる、そんな製品を完成させたかったのだ。
四肢を欠損した患者に多く聞かれるのが『幻肢痛』である。これは無くなった部分に痛みやかゆみが生じていると言うものなのだが、実際はその部分は無いので痛みやかゆみをその場で取る事は困難を極める。
アムロは、その話を聞いた時に、断端に残存する神経線維と機械を繋げる事で義肢の運動を可能に出来るのではないかと考えたのだ。義肢の接着面に神経線維からのインパルスを読み取る装置を装着し、思った通りの動きを可能にする。
そうすれば日常生活動作(ADL)に支障はなくなる筈だ。
そう決断したアムロは、リーディング電極の縮小化と菲薄化に邁進し、断端に接する素材の低刺激性とクッション性の両立を工夫し、遂にはあらゆる切断面にも装着できる義肢を開発したのだった。
その名は「ハロ」
アムロの持てる技術のすべてをつぎ込んで作成された義肢「ハロ」は、多くの人の助けとなる筈だった。
だが、一個人で作成する物だけに、単価と時間がかかり過ぎてしまう。予約待ちは半年以上となってしまうと、よほど金銭面・時間に余裕のある人物や家柄でないと制作依頼が出せないのが実情となる。
アムロの研究開発所はキツキツの経営状態に追い込まれていった。
だが、そうなっても尚、アムロの向上心は留まるところを知らない。
ユーザーの意思を読み取って動かせるようになったら、その逆。知覚をユーザーに感じさせる事が出来る義肢を開発する事に視点が動いた。
依頼の制作と同時に新たな研究を進めるアムロは、当然の事ながら過労と栄養失調で昏倒した。