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ファラジ

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 ダイクン社の本社はフランスの片田舎にある。
名前を聞いても場所が思い浮かばない、そんな小さな町から出発し、今では全世界に支社を置き、ここアメリカ西海岸のIT企業が集まるシリコンバレーにもその支社は置かれている。
一流企業にしては低層階の建物だが中の設備は常に最新式で、防犯機能は要塞並みに強固に作られている。
その防犯システムを任されているのが、若干二十歳のカミーユ・ビダンだ。
同僚からは『神童』と謳われているが、反面煙たがられてもいる。その理由は、天才故の人当たりの悪さと感情の起伏の激しさだった。
その彼が廊下を足音荒く歩いているのだから『触らぬ神に祟りなし』とばかりに、彼の進む先は『神の代弁者の起こした奇跡』の如くに人が避けて道が出来た。

「まったく! なんだって俺の発想を具現化できる奴が居ないんだよ!! 社長も早く腕の良い技術者を引き抜いてきてくれればいいのにっ」
カミーユはそう喚くと、自分に宛がわれている開発室の扉を、壊しかねない勢いで開け放った。

「器物破損をした場合、修理費は貴方の給与から差し引くからそのつもりで」
冷ややかな声が室内から返された。
カミーユはその声の主に視線を向けもせず、自分の椅子にドカッと腰を下ろす。理不尽な扱いに椅子が悲鳴をあげた。
それに対して、呆れたため息が返事を返した。
「うるっさいなぁ、イルマ」
「貴方ほどではない筈よ」
「気配がうるさいって言ってるんだ」
「子供なの? 貴方」
「こっ!?」

これ以上なく険悪なムードになりかかった所で、優しい声が部屋の一角から発せられる。
「また良い話が聞けなかったのね? カミーユ。苛々してると良いアイデアが浮かばなくなっちゃうわよ? おすすめのハーブティを入れたから、一息ついたら如何?」
ベルトーチカさんも、と、個々人のマグに爽やかだが甘さも含むハーブティが淹れられて提供された。
角を突き合わせていた二人もその香りに怒りのボルテージが急速にダウンしていく。
マグに息を吹きかけて少し冷ましては口に運ぶ事を繰り返すうちに、カミーユの肩の力が抜けた。
それを見計らってファ・ユイリィが穏やかな声で訊ねた。
「社長と言えども、今回も達成出来なかった様ね。それでカミーユは苛ついてしまったんでしょう?」
宥めるような声で問われると、腹を立てる事も難しくなるのは世の常。カミーユもそれに沿っていた。
「どうあっても首を縦に振って貰えないらしい」
「地位も名誉も栄達すらも興味がないって人みたいよ?」
さらっとベルトーチカ・イルマが情報をプラスしてくる。
「社長の話じゃハートにズシッ!と来ないんじゃないかなぁ。あの人の外観じゃ反感を抱くだけってあるんじゃないか?」

「あ〜〜、言えてるかもなぁ。あのお奇麗な顔とお高そうな衣装に高級車で乗り付けられると、女性陣は舞い上がっちゃうだろうけど、いっぱしの男だとカチンッと来るからなぁ〜」
部屋の隅から会話に参加してくる声は、カミーユと同じく防犯関連の研究に携わっているジュドー・アーシタだ。
「ファさん。俺にも一杯もらえますか?」
座っている椅子ごとズザァ〜〜と転がしてこちらへ移動してくる姿はハイスクールの小僧のようだが、その能力はかなりハイレベルである。
「キャスターが痛むから止めなさいって言ってるでしょう? いつまで経っても言う事を聞かないんだから!」
ベルトーチカが小言を口にするのだが、ジュドーはカミーユの様に食って掛かる事はせず、さりげなくスルー」する。
「なぁカミーユ。俺達でその人のところに行ってみないか?」
「「「えっ?」」」
「社長では駄目でも、同じ技術者同士なら話が合うかもしれないだろ?」
「そ・・・うだな。もしかしたら、うまく事が運ぶかもしれない」
「ちょっと! 上層部の同意もなしに社長だけが交渉している人に、一社員が勝手に面会して良いわけないでしょう?!」

今すぐにでも飛び出していきそうなやんちゃ小僧二人に釘を刺そうとしたベルトーチカだが、『思い立ったが吉日』とばかりに聞く耳など二人にはない。
まさしく『馬耳東風』。移動方法に話は進んで行った。
「その人のいるサザンドオークスって、LA郊外の町なんだろ?」
「そう聞いてる。こじんまりと自分のやりたい事をやれる範囲でってのが信念らしい」
「なら、最短は飛行機だけど」
「一時間半でLAに到着だよな」
「どうせなら、ゆっくりと夜行バスで行かないか? 夜立ちで朝にLA到着。そこから車で一時間半位・・・かな?」
「いいな! ちょうど明後日は休業日だから、明日の夜発のバスを予約しとけば」

「待って? カミーユ、ジュドーさん」
突っ走る二人に果敢に割入ったのは、この中で一番大人しいファだった。
「お相手の方も休業日だったらどうするの?」
「「あっ!」」
「日曜日なのよ? 明後日は。お相手の方だってお休みだと思うわよ」
「・・・・・」

ジュドーがそこまで思い至ってなかったと恥ずかしそうに頬を指で掻いたが、カミーユは顎に指をあてて考えると、大きく頷いて次のように言ってのけた。
「大丈夫だ。彼はきっと研究室にいる筈だ。バスの予約を取るぞっ! ジュドー」
忙しなく動き出したのはカミーユのみ。他の三人がぽか〜んと口を開けてカミーユを見てしまうのは当然の結果だ。
どう考えたらその結論に達するのか。
三人には理解が出来なかったが、バスの席を二つ予約し相手を説得するための資料作成に取り掛かったカミーユの表情を見れば、どうやっても止める事など出来ないと早々に諦めるしかない。
ジュドーに至っては、カミーユのワクワクが伝染した様に嬉々としてきてしまう。
男二人が散歩に連れて行ってもらう犬の様に溌溂としているのに反し、頭を抱えたのはベルトーチカ。
呆れた表情で眺めているのはファ。
だが、この動きが彼らを大きく変化させるとは、その時には誰も考えもしなかったのだった。

結果として、シャアはアムロを傘下に収めると同時に同志として、愛しいと思う相手として傍らに得る事になり、カミーユとジュドーはシャアから報奨金を貰う事となったのだ。
作品名:ファラジ 作家名:まお