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On s'en va ~さぁ、行こう!~ 後編

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カミュは顔色一つ変えずに汚れたナプキンを丁寧に折り畳んでテーブルの上に置くと、グラスに入ったロゼワインを一口含んだ。
「結構甘めだな」
「甘いのはお前だ。何をやっているのだ、お前ら」
と、聞き慣れた声がカミュの行動を揶揄する。吃驚したミロが声の方向に身体を向けると、呆れているのか、笑おうとしているのか、何とも判別尽きかねる表情のシュラが、くわえ煙草で二人を眺めていた。
片手で札束を抱えているので、何とも柄が悪い。
「シュラ、戻ったのか?」
ゆっくりと顔をあげるカミュ。いつもは白い顔が、今日はアルコールの為かほんのり紅い。
シュラは白刃を思わせる笑みを見せる。その笑いの悪い事といったら!
とてもではないがアテナの聖闘士、しかも最高に位置する黄金聖闘士の表情には見えない。
「ああ。ブラックジャックのクルーピエが自信喪失の為、近々引退するらしい」
「そんなに稼いできたのか?」
「帰ったらロータスをもう1台買おうか」
微妙に声が弾んでいる。そしてちらりとミロを見遣ると、カミュにこう言った。
「今のうちにミロの顔をよく見ておけよ」
「何故だ?」
「俺に負けて丸坊主になるからな」
「んだとぉ?」
流石のミロも、馬鹿にされているのだけはわかる。最後の一皿のラタトゥイユを平らげると、口の周りのソースを拭いながら、
「シュラこそ、オレに負けて『ジダンダ』踏むなよ!?」
と、シュラに右手の人指し指を突き付けてニヤッと笑ってみせる。彼なりの戦線布告らしい。
シュラは軽く煙草をふかしながらぼんやりと、
『もっとも、俺が負けたところで俺自身は痛くも痒くもないのだがな……』
というのも、『いつもニコニコ現金払い』がモットーのシュラは、クレジットカードを所有していないのである。
持っていないのだから、払えるはずが無い。
賭けの相手はシュラなのに、シュラが負けても痛くも痒くもないペナルティを考えたミロの頭の中を見てみたいと一瞬思ったが、どうせカミュでいっぱいである事に気付き苦笑すると、短くなった煙草をカミュ達のテーブルの灰皿に押し付けた。
「それでは、そろそろ始めようか?」
「望むところだ!」
蠍と山羊がそれぞれ静かに小宇宙を燃やす。その横でカミュがクールに一言。
「L'addition, s'il vous plait.」(お勘定をお願いします)