冥界カイーナ新年会
反論されて黙り込むルネ。ようやく自分の出番が終わったファラオは、空腹を我慢していたのか料理をハイペースで口に運んでいる。やはり一仕事の後の食事はうまい。
「それでは、次の出し物のためのステージセッティングがありますので、皆様そのまましばらく御歓談下さい。セッティングに要する時間は約15分です」
バレンタインのアナウンスが会場内に響く。
その言葉を合図に、ギガントやキューブ、スタンド達が、機材をステージに運び入れ始める。
明らかに冥闘士達の間の空気が変わった。
「あいつら、ルネにぼこられてもやる気かよ」
「相当ひどいらしいぞ、連中の演奏・・・」
「でも、怖いもの見たさで聞きたくなるよな」
セッティングの間、まるで最新型絶叫マシンの行列に並んでいるかのような、どことなく妙なテンションが会場内を満たしていた。
「ルネ、会場から出た方がよくないか?」
オルフェが心配そうに声をかけるが、鼻血が止まらないルネは上を向いて鼻に栓をしたまま、
「こんなていたらくで動けるとお思いですか?もうすぐで血が止まりそうなんですよ」
「血が止まったら、さっさと帰った方がいいぞ」
スティックケーキを食しているファラオの言葉を受けたルネは、眉間に深い皺を寄せる。
「あなたがあんなものやらなければ、私は鼻血を出さずに済んだのですがね」
「・・・魔琴の出張演奏なら、いつでもやるぞ」
二人は数秒にらみ合った後、子供のようにぷいとそっぽを向いた。