部屋の乱れは心の乱れ
掃除をしていた人間は皆、その旋律にしばし時と現実を忘れた。心を奪われるとは、このようなことをいうのだろうか。
「……すごいな」
オルフェの演奏を初めて聴いたジャミアンは、呆然とする。
ハーデスが手元に置いておきたくなるのも、わかる。
神に愛された、琴の腕と音楽の才能。
「……なのにさ、今、現実に引き戻されちまったよ」
トレミーは部屋内を見回し、がっくりと肩を落とす。
そう、美しい音楽を聞いた後で彼ら白銀聖闘士たちは、自分たちが今いる場所がとてつもなく汚いことを思い出したのだ。
「……オルフェがキレるのも、仕方ないかもな……」
アステリオンはしみじみとそう呟くと、再び掃除に精を出した。
それに頷く、その場にいた全員。
せめて来客が来ても大丈夫なレベルにしようと、彼らは小宇宙を燃やして掃除に励んだのだった。
作品名:部屋の乱れは心の乱れ 作家名:あまみ