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さみしさの後ろのほう 11~15

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その部屋にも相変わらずの暗闇が広がっている。微かに聞こえたのは寝息の音。良かった。寝てる。
此処で物音を立てるよりはマシだろうと、かなりの時間をかけながらカーテンに手を掛ける。開ければ今日は上弦の月、部屋の中を照らすには十分のようで、柔らかで清い光がほのかにまるで作り物のような横顔を照らした。

あんなに嫌がってたのは何だったんだ。思わず笑いたくなった。
眠っているにも関わらず、胸にはしっかりあのうさぎのぬいぐるみが抱かれていた。そんなに好きなら言えば良いのに。
何処まで意地っ張りなんだよ。言いたい事は沢山あるのに、口から漏れたのは少しぎこちないほんの一息。多分今がこんな状況じゃなくてもそうだったんだろう。

後は寝顔が安らかになれば最高なんだけどな。なんて苦笑いしながらベッドに近づく。不味いかな、と思いつつ皺の寄った眉間を人差し指で突付いてみる。変化なし。しょうがないようだ。
シーツに散らばった黒髪の隣に置いたのは猫のぬいぐるみ。あのうさぎと同じシリーズらしく、似たような顔をしている。これなら外れては無いだろう。

この殺風景な部屋をこいつの好きなもので埋めてやりたいと思った。可愛いぬいぐるみが好きならいくらでも持ってきてやるよ。お前が埋もれてしまうぐらい。
そうしたら、馬鹿な人、でも、呆れた、でも何でも良い。また可愛くない言葉を口にしながら、でも心の底から笑って欲しい。
それだけで俺は十分なんだ。その為ならなんだってしたいんだ。そうしたらこの漠然としたさみしさも、何だったんだろうと笑えるぐらい簡単に無くなってしまうのだろう。

部屋を好きなもので満たしてやれたら帝は笑ってくれる。その時の俺はそう信じていた。帝の寝顔が険しい、その事の大きさにも気付かずに。