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溺れる人魚

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(ジュリアンの部屋にはティファールとミネラルウォーターのボトルがあるので、お湯はそちらでわかす)
「ジュリアン様、一体どういうことですか?」
突然髪を逆立て逆上しだす忠実なメイドに、ジュリアンは一瞬だけ顔を強張らせたが、すぐにいつもの笑みを浮かべると、
「テティス、ティーセットを落としてしまったようですが、怪我はしていませんか?」
と、彼女の質問をまるっきり無視したようなことを、穏やかな口調で言う。
テティスは小宇宙を急激に高めながら主君の前に大股で近付くと、荒れた海のような激しい口調でジュリアンに再度問う。
「カノンを信頼しているとは、どういうことですか、ジュリアン様!!」
ジュリアンはその問いかけに、一瞬だけ痛みを堪えるかのように顔を顰めたが、すぐに、
「言葉の通りです。私はカノンを信頼してします。
以前は色々ありましたけれど、今は信頼に値する信用できる人間だと思っています」
沙織にプロポーズした際のような、そんな真剣な顔。
こう語るジュリアンの表情からは、今現在彼がカノンに抱いている絶対的な信頼が見て取れた。
勿論、ジュリアンとてテティスの気持ちや感情に気付いていないわけではない。
けれども、カノンに未だに蟠りを抱いているテティスに、今の己の想いを伝えることも必要だと、ジュリアンは考えたのである。
「名のでテティス、私はカノンが我がソロ家に来てくれてよかったと、心から思っております」
再び笑顔を浮かべるジュリアン。
テティスが様々な意味で爆発したのはこの時だった。
彼女も我慢の限界だったのだ。
ソレントはこれは不味いとジュリアンに目配せすると、カノンを呼びに庭の東屋へ駆けていったのだった……。
作品名:溺れる人魚 作家名:あまみ