寺子屋の手記
氷戦士は今、集会所の奥にある子供たちの図書室にいる。
この集会所には子供たちがいつでも沢山の本を読めるよう、カミュが自腹とコネとツテを使って作った、児童用図書室がある。
カミュが児童書を集めていると知ったシオンは懐かしそうに顔を緩めると、
「お前の先代の水瓶座も、先々代の水瓶座も、本をこよなく愛する聖闘士であったぞ」
と嬉しげに言い、結構な額をカンパしてくれた。
(一応、シオンの小遣いの範囲内であると、後にムウから聞いた)
また、日本に住む星矢や瞬も、氷河から事情を聞いたのか、図書館でいらない絵本を貰って送ってくれたりした。
こうして、他人の助けを借りつつも、形がそれなりに整ったコホーテク村の子供図書室だが、何をどう間違っても、先程の氷戦士たちが読むような本は置いていない。
皆絵本、それでない場合は児童が読むような本ばかりなのだから。
……一体彼らは、子供図書室に何の用事なのか。
訝しく思ったカミュは、彼らの様子を探るために完全に気配を消して図書室に向かった。
こんなに気配も小宇宙も消すのは、冥界軍の走狗となった時以来かも知れない。
そっと図書室入り口から中を覗くと、そこでは。