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兄さんの秘密

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ほぼ手つかずの2Kは、まるで昭和中期の古いアパートのような雰囲気である。
「……相変わらずだな、ここは」
サガの低めた声が、カミュの耳に届く。カミュは人馬宮の居住スペースには入ったことがないが、サガは何度か訪問しているようだ。
部屋は二間あり、手前側が台所と隣接した茶の間兼書斎兼居間、奥が寝室だ。
サガは勝手知ったりといった様子で中に入ると、寝室に続くドアを開けた。
「!」
瞠目するカミュ。
壁沿いに置かれた粗末なベッドの上で、アイオロスが真っ青な顔で眠っていた。
「……こ、これは……」
この平和な世の中、アイオロスに何があったのか。
だがそんなカミュとは対照的に、サガはツカツカとアイオロスのベッドサイドに寄ると、監察医にでもなったかのようにアイオロスを検分した。
体中についた、泥と血。服や髪に残る細いホコリ。そして、疲れ果てたアイオロス。
「……成る程な」
端正な口元が、綺麗に緩む。そのサガの態度に訝しさを感じるカミュ。何が『成る程』なのか。
「サガ、これは一体……」
釈然としなくて、詰問するように問いかけるカミュにサガは、
「アイオロスの体をよく見てみろ」
とだけ告げた。言われた通りにするカミュ。
「……あ」
聡い水瓶座の聖闘士は、それで気付いたらしい。アイオロスが執務を休んでまで、何をしたのかを。
「……意外ですね」
退室した後、サガと共に再び十二宮の石段をくだるカミュ。
秋の風がカミュの長い紅髪と、グレーのトレンチコートを靡かせる。
「何がだ」
禁煙パイポを口にくわえるサガ。
愛煙家の彼は、灰皿のないエリアでは禁煙グッツを加えて口淋しさを紛らわせていた。
カミュはそれを見る度、いい加減に禁煙したらいいのに……と思う。煙草なんて、百害あって一利無しだ。
「アイオロスのことです」
「ああ、それか」
カツンカツンと黄金聖衣が石段を蹴る音が、夜の闇に響く。
「私は別に、意外でもなんでもなかったな。むしろ、らしいと思ったものだが」
「らしい、ですか」
「ああ。とてもアイオロスらしいではないか」
パイポをくわえた唇が、三日月の形に緩む。
「馬のお産の手伝いで、執務を休むなどな」
作品名:兄さんの秘密 作家名:あまみ