二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

体育会系の恋

INDEX|3ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

「うめー!!これウメーよ!!ムウ!!」
それから一週間後。星矢が聖域にやってきた。
聖域に戻った際に聖衣のメンテナンスもするので白羊宮に顔を出したのだが、丁度昼前だったので、星矢は羊一家のご相伴に預かることになった。
……そして、ムウの用意した昼食の美味さに絶叫している最中である。
「あー、うめーよ!!これ、本当にうめーわ」
星矢はここの主が作ったマリネ風冷製パスタをむさぼり食っている。
少々困ったような顔でムウはそれを眺めている。そんなに手間のかかる料理ではないのだ。
作り方は簡単。トマト、レタス、タマネギ、サラミハム、カイワレを梅風味のドレッシングで和えて、氷水で冷やしたアルデンテのパスタと混ぜるだけだ。
ただそれだけなのだが、自家製の梅風味マリネドレッシングが味を決める。
「そんなに誉められると困ってしまいますね。マリネサラダにパスタを入れただけですよ」
「でも、これ、本当にうめーわ……」
星矢のフォークが止まらない。
普段、城戸邸でどんなものを食べているのか、少々ムウは気になってしまう。
東京に滞在した際、城戸邸でおさんどんを担当したことがあったが、瞬も邪武もムウの作ったものを美味しいと絶賛して食べていた。
城戸邸の食事はそんなにマズいのか……と、邪推したくなる。
「星矢はいつもどんなものを食べてるの?」
横で星矢の食べっぷりを眺めていた貴鬼が尋ねる。星矢はムウにお替わりをねだりつつ、
「フツーだよ。でも、ムウの飯の方がずっと美味いな」
「ムウ様、料理上手だもん!」
自慢げに貴鬼が胸を張る。すぐに、お前が料理上手いわけじゃないだろう!と星矢に小突かれるが。
「そんなに美味しいですか?星矢」
「ああ、ムウも勿体ないよな。料理屋開けるぜ」
「うちはシオン様が味にうるさい方ですからねぇ」
「あー」
間延びした声を上げる星矢。そうだ、白羊宮にはあの教皇がいるじゃないか!
下手をかませば、『あの』テーブル返しが待っている。
「ですが、シオン様もたまに料理なさるんですよ」
「え!?」
ムウが知られざる事実をさらっと口にする。
どう見てもあの教皇、料理なんてやる柄じゃないのに……。
「マジでシオン、飯作るのかよ」
「私より上手ですよ」
「いや、嘘だろ……」
やや狼狽える星矢に貴鬼が、
「本当だよ。シオン様、ムウ様より上手だよ。ただ……」
「ただ?」
「シオン様、作るのは上手なんだけど、料理するの好きじゃないんだ。めんどくさいって」
そうなのだ。
シオンはプロ並みの料理の腕がある。元々、ムウに料理の基本を叩き込んだのはシオンだ。
けれども、結構面倒くさがりなところがあるシオンは、あまり料理をやりたがらなかった。
ムウが体調不良で倒れた…などの緊急時の場合には台所に立つが、それ以外は包丁を握ろうともしない。
信じられない事実に、星矢はぽかーんと口を開けている。
「あんまり想像できねぇな」
「皆さん、そう言いますね」
白羊宮の守護者はその柔和な顔に苦笑いを浮かべた。
「それより星矢ー」
お替わりのパスタ皿をサーブしてきた貴鬼が、今しかチャンスがない事に気付いたのか星矢に尋ねた。
「魔鈴さんの好きな男のタイプ知ってる?」
「魔鈴さんの?男のタイプ?」
まさかそんな事を訊かれるとは思わなかったので、星矢は目をぱちくりさせる。
なんで貴鬼がそんな事を訊くんだよ?と尋ね返したかったが、それをやるとパスタのお替わりを貰えないような気がしたので渋々、
「俺の知る限りじゃ、酒に強い男らしい人かな。この前会った時、酒飲んで管巻くような男は嫌いだって言ってたぜ」
その答えを聞いて、思わずムウの方を見やる貴鬼。
「……ムウ様」
「やはり、体よく断られてますね」
居間に戻ったムウはソファに腰掛けると、
「魔鈴は料理の上手な男性が好きという噂があるのですが」
「魔鈴さんがー!?」
初耳だと言わんばかりの星矢。
貴鬼から受け取ったマリネサラダパスタをフォークに絡めながら、何処からそういう噂が出たのだろうと、眉間に皺を寄せている。
「魔鈴さんはシャイナさんに料理を習っているから、料理すげー上手いんだよ。修行中、たまーに魔鈴さんが飯作ってくれたけど、すげー美味しかったもんなぁー」
だから男の料理の腕はそんなに気にしないんじゃないか?と星矢は言う。
「修行中マズ飯作っても、魔鈴さんはちゃんと食べてくれたぜ。文句は言ったけど」
星矢が話を続ければ続けるほど、言葉が出なくなる羊師弟。
ああ、アイオリアは遠回しに交際を断られている。
「……貴鬼」
「ハイ、ムウ様」
「この事は誰にも言ってはいけませんよ。とばっちりがこっちに来るかもしれません」
「……すまない。今しっかり聞いてしまったよ」
「!!」
玄関から第三者の声。
緊張を全身に走らせたムウが振り向くと。
紙袋を抱えたアフロディーテが、どうにも困った表情で立っていた。
「お土産を、持ってきたのだけどね」

「わーい!!ヨーロッパGPのパンフレットだー!!」
アフロディーテからのお土産をもらった貴鬼が、ソファの上で小躍りしている。
この凄まじいほど綺麗な顔をした魚座の聖闘士はF1観戦が趣味で、年中サーキットに出向いている。
「いつもありがとうございます、お土産」
アフロディーテの好みに合わせて紅茶を用意したムウは、弟子に代わって礼を言った。
「いや、いつも食事やおやつをご馳走になっているからね。これくらいはしないとね」
「皆貴方のような方ばかりでしたら、私も気が楽なのですけどね」
「……ムウ、それって俺に対する嫌味か?」
苦虫噛んだ顔で星矢がうめくが、ムウはさして表情を変えずに、
「十二宮にいる人間で白羊宮(うち)で食事やおやつを食べた事がないのは、カミュくらいではないでしょうか?せいぜいお茶を飲む程度ですよ」
カミュは普段はシベリアに住んでいるので、聖域には滅多に出てこないと言った方が正しいのだが。
アフロディーテはフフフと、優美な口元に優美な笑みを浮かべると、
「彼は自分だけ外で美味しいものを食べるのは、弟子が可哀想だと思うタイプの男なのだよ」
「……過保護ですねぇ、カミュは」
ムウの口元に浮かぶのは、アフロディーテとは対照的に苦笑い。
常にクールであれと弟子たちに説いているのに、カミュ自身はとてつもなく甘ちゃんである。
そのやり取りを聞いていた星矢は、アフロディーテが女性にモテる事を思い出し、彼に魔鈴の本心についての分析を依頼してみた。
アフロディーテならば、魔鈴の『料理が上手な男』という切り返しに、何かしらの納得できる理由を見つけてくれると考えたのである。
「あのさ、アフロディーテ。こういうことがあったんだけどさ……」
星矢から語られる話に、興味深そうに、面白そうに、耳を傾けるアフロディーテ。
先程立ち聞きで内容のアウトラインは聞いたが、改めて説明を受けるとまた違った部分が見えてくる。
ムウはこれを聞くのは二回目なので、台所に引っ込んでエンドウ豆のつるむきを始める。
何か用事があったら呼ばれるだろうし、お茶のお替わりは貴鬼が控えているため大丈夫だろう。
アフロディーテは相槌や軽い質問を投げかけながら、話を聞いている。
作品名:体育会系の恋 作家名:あまみ