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『掌に絆つないで』第二章

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Act.11 [幽助] 2019.6.19更新


コエンマより一歩前に出て、巫女の姿をした霊界案内人のひなげしが、資料を片手に話し始めた。
「幽助くんが持っていた冥界玉は、あれで全部じゃなかったのよ。その一部に過ぎなかったの。どうやら分散してしまったみたいで、多分、飛影くんが持ってたんだわ」
「持ってた、のか?」
「水晶玉は幽助くんにしか反応しなかった。すでに飛影くんは、その力を放出してしまったからだと思うの。冥界玉は復活の玉とも呼ばれていてね、冥界の王を蘇らせる力を持っているけど、冥界王を蘇らせることができるのは冥界の者のみ。魔界の者がその力を得ても、冥界王の復活を願うことはないから、そうはならない。代わりに、取り込んだ者が強く願う死者を蘇らせてしまうことがあるのよ。これは、過去の文献からわかったことなんだけど」
「で、飛影が願って蘇ったのが、あいつの母親ってことか」
「そう考えて間違いないと思うわ。冥界玉に与えられた肉体に、魂が宿るの」
飛影が呼び続けて蘇った、というのはこのことだったのだ。しかし、コエンマたちの様子を見ると、喜ばしい復活とは考え難い。
「ん~……飛影のおふくろが生き返ってラッキーってわけじゃねーの? やっぱ問題あんのか?」
「大ありよ! 冥界玉が封印されず力を発し続ける限り、冥界への影響は免れないわ」
「その冥界って一体、何なんだよ」
その問いに、コエンマが口を挟む。
「冥界とは、心の闇を支配する世界なのだ。人間界や魔界の負のエネルギーを奪い尽くし、膨張し続ける。復活すれば、魔界や人間界が呑み込まれるのは時間の問題」
「で、どうなるんだ」
「すべての者が冥界王の命令にのみ従う冥界鬼と化すのだ」
「うげ、そりゃ困る」
「困るで済むか」
コエンマは眉の端を吊り上げ幽助を睨みつけた。
「危険な世界だからこそ、霊界が封じたのだ。こうしてる間にも、冥界の封印が弱まっているだろう。冥界玉の力を封印するために、一刻も早く飛影の母親を探し出すのだ」
「あの……冥界玉の力を失うと、母はどうなるのですか?」
ふと、沈黙を守っていた雪菜が口を開いた。
蘇った氷女は間違いなく飛影や雪菜の母、氷菜であると泪は断言していた。実際に望み、蘇らせたのは飛影だとしても、雪菜も母親との対面を喜んでいたに違いない。その気持ちは察していただろうが、コエンマは真実を告げないわけにはいかなかったらしい。
「残念だが、お前の母は肉体を失うこととなる。そうなれば、魂は然るべき場所に戻っていくはずだ」
そう言って、眉間に皺を寄せた。
「今しか会えない…というわけですね」
「雪菜ちゃん……」
ぼたんは自らの任務に罪悪感さえ持ってしまったようだ。
その様子に気づいて、雪菜は頬を緩めてぼたんを見返した。
「大丈夫です。仕方ないことだってわかってますから。むしろ、一度でも会えたことが奇跡なんですもの。贅沢はいえませんわ。幽助さん、お兄さんを探しに行きましょう」
凛とした眼差しが向けられた瞬間、幽助は既視感を覚える。
母子であるという事実以前に、雪菜の強い意志を秘めた眼差しは、氷菜が向けたものとあまりにも似ていた。