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Paper Cuts 3

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「サイコミュ…あの機体にはファンネルを搭載しているのか?」
「ああ、ニュータイプ能力がさほど無い私でも充分に扱える」
「別に、貴方のニュータイプ能力は弱くは無い。ただ、眠っているだけだ」
「アムロ?」
意外なアムロの言葉に、シャアが驚く。
そんなシャアに、アムロがクスリと笑う。
「貴方はこんな能力が無くても充分に生きていけるから。俺やララァ、カミーユは弱いから…この能力が表面化しただけだ」
「そんな事は…」
「そんなものより、貴方には人を惹きつける力がある。それの方がよっぽど凄いよ」
「アムロ…」
「なぁ、あのサザビーの中、見ていいか?」
「それは構わんが…」
その返事に、嬉しそうな表情を浮かべたアムロだったが、ふと、何かを思い出した様に動きを止めると、「やっぱりやめておく」と言ってモビルスーツデッキを後にした。

自身の制服の胸元を握りしめ、足早にデッキを離れるアムロを、シャアが引き留める。
「どうした?アムロ」
メカニックとしても優秀な腕を持つアムロだ。
モビルスーツの新型ともなれば興味が無いわけがない。
「別に…何でもない」
「まさか、まだ自分は連邦の人間だと思っているのか?だからネオ・ジオンの軍事機密を知る事に後ろめたさを感じたのではないか?」
「そんなんじゃ無い、考えすぎだ。それよりも腹が空かないか?もう結構いい時間だろ?」
「……アムロ…」
動揺を隠す様に話を逸らし、笑顔を作るアムロに、シャアは小さく溜め息を吐いてコクリと頷いた。


◇◇◇


「大佐、こちらが報告書になります」
執務室に入室してきたナナイが、ファイルを二冊シャアへと手渡す。
「ご苦労だったな」
「こちらのファイルがアムロ大尉が連邦に復帰した際のものです。それからこちらが先日指示のありました内容になります」
ナナイから渡された報告書に目を通し、大きな溜め息を吐く。
「…やはりそうか…」
シャアは目頭を押さえ、渋い表情を浮かべる。
「はい。それから、研究所に潜入させた者からも報告がありました」
「これは…」
報告書を見つめ、シャアが言葉を失う。
「おそらく『これ』が…」
「…ああ…だろうな…」





軍事訓練を終え、スウィート・ウォーターへと戻ったアムロは、自室に戻ると制服の襟を緩めベッドへと倒れこむ。
「疲れた…」
目の上で腕を交差し大きく息を吐く。
暫く目を閉じてそのまま横になっていたが、ゆっくりと起き上がり、制服のボタンを外して上着を脱ぐ。
「こんな事…いつまで続くんだ…」
一つ溜め息を吐いて、脱いだ制服を乱暴にランドリーボックスに投げ込む。
「はぁ…」
ベッドの端に座ると、両手で顔を覆って項垂れる。

「どうした?アムロ」
突然声を掛けられ、驚いて顔を上げる。
「シャア⁉︎いつのまに…」
ゆっくりとアムロの元に歩み寄り、アムロの隣に座る。
「疲れたか?」
アムロの頬に手のひらを寄せ、優しく撫でる。
「い、いや…」
「ならば何か君を悩ませる事があるのか?」
「そんな…事は…」
「アムロ、何かあれば言ってくれ…私は君の番なのだから」
優しいシャアの言葉に、アムロの心に嬉しさと共に罪悪感が湧き上がる。
「俺に優しくしないでくれ」
「何故だ?」
「居た堪れない…」
「それは君の身体のことか?」
過去の人体実験と死産の影響で妊娠出来ないアムロは、後継者を望むネオ・ジオンに対して後ろめたさを感じている。
どうやらシャアは他の人間に自分の身体の事は伏せているらしい。
以前に検査をした医務官にも口止めをしていた。
「…ああ…」
「それならば気にする事はないと言ったはずだ」
「……」
「それとも、他にも君の憂いの元があるのか?」
シャアはランドリーボックスに乱暴に放り込まれたアムロの制服を手に取る。
「シャ、シャア?」
「今日はそんなに汗を掻いていないだろう?それなのに制服をランドリーに?」
「え?ああ…別に…ただ、そろそろ洗おうかと…」
「一昨日もランドリーに出していたな」
シャアの言葉に、アムロの瞳が僅かに揺れる。
「え?ああ。…ダメか?」
「ダメでは無いが、君は元来身なりをそんなに気にする方では無いだろう?それなのにこの制服はマメにランドリーに出しているなと思っただけだ」
「…いけないかよ」
「いや、ただ…」
シャアはアムロの制服を手に取り、胸元のボタンを指で撫ぜながらアムロを見つめる。
「何か理由があるのではないかと思っただけだ」
シャアのその視線に、アムロがゴクリと息を飲む。
「…理由なんて…無い…」
その答えに、シャアがクスリと笑う。
「君は嘘が下手だな」
そう言うと、制服のボタンを一つ、ブツリと引き千切った。
「シャ、シャア⁉︎」
そのボタンを指先で掴み、くるりと回しながら見つめる。
「カメラと盗聴器か…」
ビクリと肩を震わせ、アムロが僅かに後ずさる。
「此の所、我々の情報が連邦に漏れていると思われる事案が数件あってね。調査をしていたんだ」
盗聴器の入ったボタンを指で転がしながらシャアが話し始める。
「それも、幹部クラスしか知り得ない情報が、だ」
静かな口調で語られる内容を、アムロは身体を硬直させながら聞く。
「当然、幹部たちは君を真っ先に疑った。しかし、君が誰かと接触したり、何か不審な行動をとっている姿は確認出来なかった。君も気付いていただろう?この部屋には監視カメラがいくつも取り付けられている事に」
「……」
アムロは視線を部屋に仕掛けられているカメラの場所へと向ける。
「それでも、食事や日常生活で君や、君の身につけていた物が第三者に接触する事はある」
手に持っていてアムロの制服を持ち上げ、そっとボタンのあった場所にキスをする。
「例えば、この制服とか…」
その仕草に、アムロの額に脂汗が浮かぶ。
「屋敷の使用人はかなり厳しい審査をして雇い入れていたのだがね。流石に外注のランドリー業者や制服の支給業者の人間までは管理しきれなくてね。こんな失態を招いてしまった」
徐に手に持った制服をランドリーボックスへと落とす。
そして、その手でアムロの腕を掴む。
「大方、制服のポケットにでも指示のメモが入っていたのだろう?その指示に従って君はこの制服を着て私と行動を共にし、情報を得たらランドリーボックスに入れて情報を受け渡す。実に単純なカラクリだ」
「……」
「まさか君がスパイの真似事をするとは思わなかったよ」
アムロの腕を掴むシャアの腕に力が篭る。
「痛っ」
「脱走兵だった君が、どうしてすんなりと研究所から出されて軍に復帰できたかも調べがついたよ」
淡々と話すシャアを、アムロが睨みつける。
「本当に、何処にでもスパイはいるものだな。ネオ・ジオンに潜入していた連邦のスパイによって、君の拉致計画を知った連邦は君をワザと拉致させ、スパイとして送り込む事にした。君は自分から拉致されに来た訳だ」
クスクスと笑いながらアムロの顎を掴んで上向かせる。しかし、その瞳は冷たく鋭い。
「違うか?」
シャアのその瞳に、アムロの背中を冷たい汗が伝い落ちる。
「…だったら…どうだって言うんだ」
精一杯の牽制に、シャアは少し戯けたような表情を浮かべて答える。
「こう見えても、少なからずショックを受けているのだよ」
作品名:Paper Cuts 3 作家名:koyuho