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バー・セロニアスへようこそ 前編

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午後6時


午後6時開店。
マスターが『open』の看板を出すと、待ってましたとばかりにカウンター席に向かう客が数名。
通常この時間帯は、カウンターでちょっと早い晩酌を楽しむ馴染みのお客や、夕食を食べに来る家族連れで賑わっているそうなのだが、本日はやや客が少ない。
ファラオは古代ギリシャを思わせるようなオリエンタルなフレーズを弾きながら、薄暗い店内を観察していた。
4人がけのテーブルが10、それにカウンター席が8。
店の奥には年季の入ったジュークボックスがあり、壁にはマイルス・デイヴィスやチャーリー・パーカーのポスター。
ヨーロッパ的なバーの雰囲気ではなく、どちらかと言えばアメリカのジャズバーに空気感が近かった。
アメリカ在住経験があり、なおかつジャズも好むオルフェにはうってつけのアルバイト先であったわけだ。
『奴も変なものを見つけるのだけは上手いな』
と、ぽろぽろとギターを鳴らしながら思う。
「お兄ちゃん、サイモン&ガーファンクルの『Mrs.Robinson』できるか?」
「はい。大丈夫ですよ」
カウンターのお客から声をかけられたファラオが、そのリクエストに応じようと一番最初の音を鳴らした時。
そのお客達はやってきた。
店のドアに付いたベルが軽やかな音を立てて開くと、場にそぐわない雰囲気の人間が二人。
1人は見事な長い金の髪の中性的な顔だちの男。
額に紅くビンディを塗っており、華奢な身体を仏教国でよく見るオレンジ色の袈裟で包んでいた。
見たところ年はまだ若いようが、雰囲気はやけに老成していた。
もう1人は薄金色の長い髪を背中でまとめた、これもまた中性的な柔和な容姿の男。
特筆すべきなのは、眉毛がまるで何かで描いたかのように丸い点。
服装は白いワイシャツに、ブラックジーンズ。身なりは連れの男性に比べてかなりマトモである。
二人はカウンター席に座ると、ハーブティとパスタを注文する。この店は夜9時までなら軽食も提供するのだ。
ファラオは彼らに激しいデジャブを感じていたが、二人の会話を盗み聞きするうちにその疑問も氷解した。
「ムウ、今日は教皇と弟子の食事の世話をしなくてよいのかね?」
袈裟を着た男は先に出されたハーブティのカップに口を付けながら、隣に座った柔和な顔の男に尋ねた。
するとムウと呼ばれた男はもの柔らかく笑うと、
「御心配には及びませんよ、シャカ。今日はシオン様は貴鬼と一緒にイタリアに行っています。サッカー観戦と、古代ローマ史の実地学習だそうです。実地学習というと聞こえはいいですけど、ただの観光ですね」
「また珍しいな」
「私の修復作業が滞ってしまったので、シオン様が気を利かせて貴鬼を旅行に連れて行って下さったのですよ。教皇代理を命じられたアイオロスは絶叫していましたけどね」
「私を拝めば、手を貸してやるのだがね」
「貴方は事務仕事できないでしょう・・・」
「判子押しくらいはできる」
「最近はパソコン使うのですけどねぇ」
「ふむ・・・あの老人がパソコンを使えるとは意外だな」
「シオン様は新しいものが好きなんですよ。貴鬼と一緒によくテレビゲームしていますし」
ファラオは背中に冷たい汗が流れるのを実感した。
『こいつら・・・』
聖域の最凶最悪の変人奇人、もとい、88の聖闘士の中でも頂点に立つ黄金聖闘士の面々ではないだろうか?
いや、間違いない。絶対に黄金聖闘士だ。
ラダマンティスが聖域に攻め込む前に冥闘士のミーティングがあったのだが、その際に蟹座と魚座の黄金聖闘士がスライドで自分の同僚を説明していた。
確かこの両名の顔も、その中にあったはずだ。
しかし、なんで聖闘士がこんなところで食事をしているのだ!!
ネックを押さえる手が、思わず震えそうになる。
今現在は聖域、海底神殿、冥界で不戦協定が結ばれ、聖闘士や海闘士と出会ったからといって戦闘になるわけではないが、やはり気分が重くなる。