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日常ワンカット

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天蠍宮編


ミロの部屋にはアニメのDVDやゲームソフトなどが散乱している。
他にもバイクの雑誌やちょっとエッチなグラビアが掲載されている雑誌など、二十歳の青年らしいアイテムが乱雑に散らばっていた。
あまりにも散らかっているため、床が見えない。足の踏み場がない。
「お前の部屋、汚いな」
遊びにやってきたカノンは、開口一番そう言う。
ミロはプレイメイト誌を部屋の隅っこに寄せて片付けたように見せかけながら、カノンの言葉に顔を顰めた。
「お前さ、人の家に入ってきて一番最初に言う台詞がそれか?他にももうちょっと言う事あるんじゃないか?」
「いや、だって」
ソファの上のゲームソフトをテーブルの上に乗せ、空いた箇所に腰掛けるカノン。
何度も言うが、この部屋は汚い。
あまりにも汚くて、それしか言葉が出ない。
他に何を言えというのか。言葉が存在するなら聞いてみたいと、カノンは思う。
カノンの内心を読んだわけではなかろうが、ミロは冷蔵庫の中からバドワイザーを出してカノンに放ると、
「モノがいっぱいあってワンダーランドだとか、俺も似た趣味だとか、話の持っていき方はいくらでもあるだろうが」
「ない」
かつて自分にスカーレットニードルを叩き込んだ男を、たった一言で否定する。
「あーそうですか、ハイハイ。本当、海闘士って冷たいな」
「俺が冷たいのではなく、お前がアホなだけだ気がするがな」
バドワイザーのプルタブを開け、よく冷えたビールを胃に流し込む。
この喉越しは最高だ。やっぱりたまらない。
ミロは雑然とした床の上からDVDを取り出すと、プレイヤーにセットし、カノンの斜横のソファーに座った。同じソファーを使う気には、どうしてもなれない。
「しかし、よく見つかったな。トミー・リーとパメラ・アンダーソンの無修正」
「フッ……この俺が本気を出せばこんなものよ」
もっと他の事に本気を出すべきなのでは?とカノンは考えたが、それは二口目のビールとともに胃の中に流し込んだ。
作品名:日常ワンカット 作家名:あまみ