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Racingholic

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セナ亡き後にF1界を牽引したのは、当時ベネトンに所属していたミハエル・シューマッハであった。
面長でくりっとしたヘイゼル色の瞳が印象的な、若いドイツ人である。
セナが生きていた頃から頭角を現し始め、92年ベルギーGPで黄色いベネトンを駆り優勝。
そして、悲劇のあった94年にはワールドチャンピオンの座に輝く。
……実を言うとシュラは、初めはこのミハエルが嫌いだった。
若くて態度でかくて怖いもの知らずで、先輩ドライバーに対しひどい口も叩く。
「……クッ……セナが生きていればあんな小僧……」
と思うこともしばしば。ただ、そのシューマッハ。

山羊座なのである。1月3日生まれなのだ。

「…山羊座だったのか…」
それを知って以来、彼を見る目が何となく柔らかいものになった。
95年も連続してチャンプを獲得。
そして金の亡者のマネージャーの手引きもあり、当時チャンピオン争いは夢のまた夢であったフェラーリに移籍する。
その頃のフェラーリはお笑いとしか思えないような状況で、
マシンも『赤いトラクター』とプロストが揶揄した頃よりちょっとマシになった程度だった。
しかし移籍したシューマッハは96年、そのマシンで3勝を挙げた。
マシンが劣っていても、腕と気迫でシューマッハは三つの勝利をもぎ取った。

こいつは、本物だ。

シュラはミハエルは本物のレーシングドライバーであると確信した。
本物だからこそ、セナ亡き後のF1界で2年連続でチャンピオンになれたのだ。
シューミがセナを倒すのは、時間の問題だったのだ。
「俺は、こいつを応援しよう」
こうしてシュラは、セナを倒すはずだった男の走りに見入ることになる。
96年、97年は当時最強を誇っていたウィリアムズ勢にはとても敵わなかったが、シューマッハはその卓越した走りで人々を魅了した。
……97年のアレさえなければ。
97年スペイン、ヘレス。
シューマッハのフェラーリはウィリアムズのジャック・ヴィルヌーヴのマシンに体当たりを食らわせる。
この危険走行によりシューマッハは、その年の選手権からの除外、そしてFIAが主催する交通安全運動への協力という大きな罰を受ける。
シュラは、このシューマッハの行動を責める気にはなれなかった。
自分の身近にも似たような人間がいるからである。二重人格の彼が。
「人って、追いつめられると何しでかすかわからんからな。スターヒルまで出向いて、『何故自分が教皇じゃないんですか!』と問いつめた挙げ句、教皇殺した奴もいるし」
それに、シューマッハがいいドライバー、素晴らしいドライバーであることは、誰よりも自分が一番よく知っているじゃないか。
だから、98年はいいレースを見せて欲しい。
それだけを願った。
作品名:Racingholic 作家名:あまみ