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自分らしく
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彼方から 第二部 第八話

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「エイジュ? 大丈夫か?」
 ずっと傍らにいたアゴルが、そう声を掛けてくる。
 エイジュは、そのことに今初めて気づいたように、顔を上げた。
 少し、怪訝そうに眉を顰めて自分を見やるエイジュに、アゴルも怪訝そうに首を傾げた。

 ――そう言えば、彼はあたしのこと、疑っていたんだったわね……

 何者であるのか――そんな疑念を持った人物を監視するのは、当然と言えば当然のことだ。
 エイジュは改めてアゴルを見やり、
「……あなたは、どう思う?」
 そう訊ねた。
「え?」
 不意にそう訊ねられ、アゴルはキョトンと、眼を見開いた。
 エイジュはもう一度大きく息を吐くと、ゆっくりと立ち上がろうとする。
「大丈夫か? 立てるのか?」
 腕を取り、立つのを介助してくれるアゴルに微笑み、
「あの、大岩鳥のことよ」
 エイジュはさっきの、問い掛けの続きを口にした。
「ああ……」
 と、納得したように大岩鳥の飛び去った方を見やると、
「恐らく、あの魔物に操られていたんだろう……と、おれは思うが」
 アゴルはそう返した。
「あの魔物って……」
「白霧の森の住人を操って、全滅させた挙句、結界を張っちまったあの魔物か?」
 エイジュが少し休んでいる間、皆と共に辺りの様子を見回っていたガーヤとバラゴが、二人の会話に加わってくる。
「では、あの森の魔物が、まだ残っていたということか……」
 彼女が回復したのを見て取り、ジェイダが眉を顰め、そう呟きながら歩み寄ってくる。
「執念深い魔物ね……イルクに結界を解かれ、人間で言えば瀕死の、ボロボロの状態でしょうに……」
「そう言えばイルクが眠る前に、アイツの気配が感じられなくなったって言ってたな」
 バーナダムもそう言いながら、『本当に大丈夫か?』と、エイジュに声を掛けてくる。
「気配を消して、隠れてたってことか?」
「イザークとノリコに復讐するために?」
 ロンタルナとコーリキも、バーナダムと同じようにエイジュを気遣いながらそう言ってくる。
「だから、人を襲うはずのない大岩鳥が、あの二人を襲い、連れ去っちまったんだね……」
 ガーヤの問いに頷くエイジュ。
 皆、魔物の執念に少なからず恐れを抱き、無言で大岩鳥が飛び去った空に眼を向けていた。
「こうしていても仕方ないわ……アゴル、ジーナはどう?」
「え?」
 またしても不意の問い掛けに、アゴルは締まりのない顔を見せる。
 エイジュは『仕方ないわね』とでも言うように、小さく溜め息を吐くと、
「ジーナは幼いとは言え、優秀な占者なのでしょう? 二人が無事なのかどうか、どこに行けば会えるのか、占てもらうことは出来ないかしら?」
 改めてそう、問い直した。
 彼女の言葉に、皆、今更のようにハッとして、アゴルたちの周りに集まってくる。
「どうなんだい? アゴル」
「分かるのか? 占てくれるのか?」
「無事なんだろうな、あいつら!」
 まだ、占ってもいない内から、そう詰め寄ってくるバラゴとガーヤとバーナダム。
「ま、まぁ……落ち着いてくれ」
 三人の勢いに気圧されながら、アゴルはジーナを見やった。
「どうだ? ジーナ」
「んーとね……」
 ジーナは首から下げた守り石を握り、静かに瞼を閉じた。
 皆、固唾を呑んでジーナとアゴルを囲み、彼女の言葉を待っている。
 エイジュも、皆から一歩下がり、彼女を見守っていた。

 大気から、無数の光の帯が、彼女に集まってゆくのが見える。
 ジーナが、『あちら側』から力を得て、『占い』をする者だという証拠だ。
 何を媒体として占いをするのか……それは占者に依って違うが、何から力を得て占いをするのか――それは、二つしかない。
 『あちら側』と言われる『光』の力か、『向こう側』と言われる『闇』の力か……だ。
 これは能力者だけに当て嵌まることではなく、全ての者に……当て嵌まる。
 ここに居る皆の中に、その『光』を見出し、エイジュはそっと、笑みを零した。

「あのね、二人とも無事だよ、えっとね、こっち、こっちに行けば、二人に会えるよ」
 少しして、瞼を開いたジーナが、笑顔でそう言って指差した方向を見ながら、皆、口々に『良かった』と言い合っている。
「本当かよ、ノリコは本当に無事なのか」
 そんな中、バーナダムだけが、ジーナに詰め寄り、何度も確かめるように訊いている。
「ほ、本当だよ……ジーナ、ウソなんか言ってないもの」
 彼の剣幕に、ジーナは怯えたように父の後ろに隠れ、そう応えた。
「バーナダム……ジーナが怖がっている」
「およしよ、バーナダム」
 アゴルとガーヤにそう窘められ、バーナダムはハッとして、
「ご、ごめんな」
 と慌てて謝った。
「ううん、大丈夫」
 父の後ろに隠れたまま、バーナダムを覗き見るようにして首を振るジーナ。
「でも、バーナダムはイザークよりも、お姉ちゃんの方が心配なのね」
 父の服の裾を掴み、屈託のない笑顔でそう言ってくる。
「うっ……」
 ジーナの言葉に、真っ赤になってゆくバーナダム。
「あっ、あっちだな」
 皆の視線が自分に集まるのが分かり、バーナダムは照れ隠しにそう言いながら歩きだした。
 それを見て、ロンタルナとコーリキは、兄弟でぼそぼそと何か耳打ちし合い、そんな息子たちを見て、ジェイダが少し呆れたように溜め息を吐いている。
 ガーヤとバラゴは、『ふぅーん』と言った風に見やり、アゴルもじーっと、彼の背中を見ていた。
「さぁ、二人を迎えに行きましょうか、アゴル、あなたが先頭に立ってくれないと……」
 その背中を軽く叩き、エイジュがそう声を掛ける。
「そうだよ、アゴル、ジーナに案内してもらわないと、あたしらじゃ、どこに行っていいのか見当すらつかないからね」
 彼女の言葉に、ガーヤがそう続けた。
「あ、ああ」
 アゴルは二人に応え、『おいで、ジーナ』と呼び掛けその胸に抱くと、先を歩くバーナダムの後を追った。

「……本当に大丈夫なんだろうな……」
 不安げな表情で、先頭を歩くアゴルの背中を見やるバーナダム。
 時折、行き先を示すジーナに柔らかい笑みを向ける、父としてのアゴルの横顔を見ながら、ぶつぶつと小声で呟いている。
「ちょっと、心配し過ぎじゃないかい? バーナダム」
 と、ガーヤに突っ込まれるほど、彼の顔には、切羽詰まった様相がありありと浮かんでいた。
「フフッ……イザークが一緒だから、きっと大丈夫よ」
 ガーヤの言葉に続けた彼女の言葉に反応して、バーナダムはクルッと踵を返し、
「でも、あいつだって調子、悪そうだったじゃないか!」
 キッと、見据えてくる。
「確かにね」
「そうね」
 と、彼女らは互いに顔を見合わせ、肩を竦めながら、
「それでもきっと、彼はノリコを護るわ」
 そう返すエイジュの言葉は、確信に満ちていた。
「なんで、そんなこと言えるんだよ……」
 彼女にそう言い切られ、少しムッとして言い返してくるバーナダム。
 ガーヤも、バーナダムを見やった後、『自分も同じだ』と言わんばかりにエイジュを見る。
「そうね、根拠は無いけれど、同じ能力者としてなんとなく……と言う所かしら」
 そんな二人に、笑顔でそう返すエイジュ。
「何だよ、それ」