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晴れた日の過ごし方 2

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結局リディアは、母親の形見の一部を貸してしまった。
家に帰って自分のベッドの上で今日の事を思い出していると、机の上に置かれた携帯電話が鳴る。発信者を見るとセシルだ。
「セシル?」
『こんばんは、リディア』
「セシル、どうしたの?」
いきなり電話をかけてくるなんて何事だろうと訊ねたところ、ギルバートがセシルとカインをライブに招待してくれたのだが、二人ともその日は仕事で出張しなくてはならなくなり、ライブに行けなくなってしまった。
そこでリディアに、チケットとパスを譲ろうか?と声をかけてみた、そうだ。
『ギルバートには僕から連絡しておくけど、どうする?アンナちゃんにはギルバートがパスを出すだろうし』
「あ、行く!絶対に行く!」
と、返事をしたところでリディアはセシルとエッジが友人である事を思い出し、昼間の出来事を彼に話した。
するとセシルは、
『エッジは腕のいい旋盤職人なんだ。きっとリディアのボールペンも無事に戻ってくるよ』
「そうなんだ……」
知らなかった。ただのお調子者の二代目かと思っていた。
『……でも、大丈夫かな?』
電話を切る寸前、セシルがぼそっと呟く。セシルの言葉の意味が変わらないリディア。
何は大丈夫だというのか。
『エッジ、昨日徹夜してうちの仕事やってくれたんだ。だから今日……ほとんど寝ていないんじゃないかな?』
その言葉を聞き、リディアの表情が固まる。
エッジは徹夜明けだった?
でもそんな素振り、少しも見せていなかった。
むしろ泣いていた自分を気遣ってパフェをごちそうしてくれたり、ボールペンの修理を申し出てくれた。
年齢はセシルたちよりも上のくせに、子供みたいな、本当に子供みたいなオトナ!
リディアのエッジに対する印象は、これまでそんなものだったのに。
……実はエッジは、もの凄くオトナなんじゃないだろうか……。
「あいつ、全然そんな様子見せていなかったよ?」
『エッジはすごくいいヤツだからね』
セシルはそれだけ告げると、電話を切った。
リディアはベッドに横になると、あの男の表情を思い浮かべた。
辛そう、眠そうな素振りは全く見せなかったのに。
「なんなのよ!あいつ!」
バフッと枕に顔を埋めるリディア。
あのエッジの優しさが、リディアには切なかった。

その頃エッジは、工場内の汎用旋盤で丁寧にアルミの丸棒を加工していた。
「……リディアの母ちゃんの形見か……」
キュルキュルとチップが回転し、金具に押さえつけられたアルミを削り取っていく。
「なら、気合い入れて作ってやらねぇとな!」
本当は眠い。気を抜くと目の前が真っ暗になりそうなくらいに眠い。
だがエッジは瞼の裏に浮かぶリディアの泣き顔を思い起こし、自らの作業に勤しんだ。
手元のレバーをキュッと引く。粗挽きは終わった。いよいよこれから細かい作業に入る。
「待ってろよ、リディア……!」
今夜も恐らく徹夜になるだろう。しかし、後悔はない。
「あんな可愛いオンナ泣かせておいたら、バチが当たるぜ」
町工場の若き二代目は愛しい少女を思い、作業の手を早めた。
作品名:晴れた日の過ごし方 2 作家名:あまみ