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晴れた日の過ごし方 2

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二人きりになったハイウィンド家の居間。
リディアはプリンには手をつけず、俯いたまま立ったままのエッジに尋ねる。
「……何処であたしたちを見たの?」
「バロンのデパートだな。小銭が入ったんで買い物しようと思ったらよぉ……。
お前がカインと買い物デートしてんだぞ。イヤになるぜ」
どすんと畳の上に座り込むと、どこか寂寥を帯びた声音でエッジが呟く。
そのエッジの表情。リディアがカインと買い物をした事実に心底傷付いたような様子だった。
それを見ると、リディアの胸も痛む。
本当は。
本当はエッジにこんな表情をさせたかったわけじゃないのに……。
「あのね、エッジ。今日カインに付き合ってもらったのはね……」
リディアは蚊の鳴くような声でそう切り出すと、鞄の中から小さな紙袋を取り出した。
二人が買い物をしていたショップの紙袋である。
「これを買いに行ってたからなの」
「そうか」
あまりにも素っ気ない返答だなと、エッジは自分でも思う。
「あのね、エッジ、これね……」
リディアの手が紙袋をつかんだかと思うと。
「……エッジにプレゼントしたくて買ったの!もらって!!」
目の前の若き職人に突き出す。
「………………」
何が起こったか分からなくて、耄けるエッジ。
えっと、リディアは今、何て言った?
「お、おい、リディア?」
「この前の、ボールペンのお礼!」
リディアの顔は、熱でもあるかのように真っ赤だ。
彼女が途切れ途切れに話すには、徹夜してまで直してもらったボールペンのお礼をしたくて、ずっと何をプレゼントしたらいいか考えていたらしい。
そこでエッジの友人であり、自分の兄分であるセシルに相談したところ、エッジはあるショップのグッツが好きだと判明。
ではその店のグッツをプレゼントしたいと考えたリディアであったが、女子高生の彼女には何をプレゼントすれば成人男性が喜ぶのかよく分からない。
『ねぇ、セシル。プレゼント選ぶの手伝ってくれないかな』
『いいけど……でも、その店はカインの方が詳しいかな。カインがいれば車で行けるし、3人で行こうか』
こういう流れで、当初は3人で行く予定であった。
しかし、急遽カイン宅のエアコン取付工事が決まってしまい、誰かが留守番をしなくてはならなくなってしまった。
そのため、車を運転でき、しかも店の商品にも詳しいカインが、リディアの買い物に付き合う事になったのだった。
「……カイン、エッジの好みを知ってるから、すごく一生懸命アドバイスしてくれたんだ……」
「あー……」
店での二人の様子を思い返すエッジ。カインはやけに熱心にリディアに話しかけているなと思ったが。
『あいつはシンプルなものよりも、すこしゴテゴテの方が好きだぞ。同じ緑色の石でも、こっちはグリーンタイガースアイだから、少し高いかもな』
『こっちはこれと何処が違うの?』
『こっちには梵字が彫ってあるだろう?彫る手間だけ、こっちの方が値が張る』
『あ、本当だ』
そういう会話だったのだ。
「リディア、俺は……」
彼女に対し、何をどう詫びたらいいか分からなくなるエッジ。
リディアはこんなにも自分の事を考えていてくれていたのに。
自分のために、セシルやカインに声をかけてプレゼントを見繕っていてくれたのに。
自分は二人の姿を目撃して、勝手にデートと決めつけて、思い込んで。
友人の家に行って泣きながら愚痴って、八つ当たりまでしている。
「俺は……すげーみっともないよな」
やっとの思いで、それだけ口にする。
ああ、何とみっともない自分。恋は人を変えるというが、これはあまりにもみっともない。
リディアはにっこりと笑うと、
「でも、誤解が解けてよかった!」
彼女はそのままエッジの手の中に紙袋を押し込む。
「ボールペンのお礼。よければ受け取って?」
「あ、ああ……」
どこか覚束ない手付きで紙袋を開けるエッジ。
中には翡翠とアメジスト、水晶を使用した携帯電話のストラップが入っていた。
「本当はね、シルバーアクセサリーがよかったんだけど、あたしのお小遣いじゃそれが精一杯だったの」
「リディア……」
胸が一杯で、本当に胸が一杯になって、言葉を失ってしまうエッジ。
嬉しかった。
どうしようもないくらいに嬉しかった。
「あー、もー、俺、本当何やってたんだろ」
恥ずかしさのためか、後ろめたさのためか、片手で顔を隠してしまうエッジ。
今の自分の顔はにやけていて、それと同時に後悔の念がありありと浮かんでいて、でもにやけていて、とてもではないが、人に見せられる顔ではないと思う。
「……リディア」
「何?」
「これ、ありがとな。すげー嬉しい」
「うん」
「それから……ごめんな」
「エッジ」
ようやくいつものエッジが戻ってきたので、リディアは笑った。心の底から笑った。
「ちゃんとケータイにつけてね。運がよくなるお守りの意味もあるみたいだから」
「わかってるさ。ずっとつけてるよ」
なんたって、お前がくれたものなんだからな。
エッジは大きな手でリディアの翡翠色の髪を撫でると、もう一度偽らざる今の思いを彼女に告げた。
「本当に、ありがとうな」
作品名:晴れた日の過ごし方 2 作家名:あまみ