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Fate/GO アナザーワールドインスクロース 1

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『……おかしいね。特異点が観測されたのは紀元前1200年中期でトロイア戦争の最中だ。何もないってのは少々おかしいね』

……言われてみるとそうかもしれない。
地面を見てみると俺たちの足跡以外何もなく、行軍した形跡もない。
ただの枯れた大地としか言いようがない。

『う~ん……考えても仕方ないね。とりあえず近くに集落があるか探してみてくれないかな? こっちは召喚に最適な場所を探してみるからさ』
「わかりました。センパイ、行きましょう」

マシュの言葉に頷き、とりあえず東に向かって歩き出す。
そのまま歩き続けて数十分後、ようやく何かが見えてきた。

「あっ、なにかをを発見しました。ですが、あれって……」
『うん、ファランクスだね。この当時の一般的な防衛設備だね』

先を尖らせた丸太を何本もまとめて、それを城壁に見立てて置いてあるのがファランクスか。
なるほど、何て言うか、すごくギリシャっぽいです。

「早速近づいて見てみます。センパイは私の後ろに」
「わかった。無理するなよ」
「はい」

俺たちは警戒しつつもファランクスに近づく。
近くで見ると、すごく大きいなこれ。
マシュもその大きさに驚いていた。

「近くで見ると大きいですね、センパイ。ですが……」
『ファランクスしかないね。それに、若干だけど焦げあとがある』

俺は改めてファランクスを見てみる。
確かに、まるでガスバーナーで焼き目をつけたような焦げあとがあり、若干だけど焦げ臭かった。
さらに周辺を散策してみると、ファランクスがあった場所の背面側の大地が黒く焦げていたことが判明した。

「これは……焼き討ちにあった跡でしょうか?」
『ふむ、焼き討ちにだとしたら妙だな。建物が焼けた跡すらない。人為的ではほぼ不可能だと推測する』
「それじゃあ、これって!」
『間違いなく、サーヴァントの仕業だね。最低でも対城宝具を有しているね』

まさか早速サーヴァントの痕跡を見つけるとは思わなかった。
それにしても対城宝具か。
サーヴァント一騎一騎に与えられたそのサーヴァント足らしめる象徴、それが宝具だ。
一言に宝具と言っても種類は様々で、一対一で効果を発揮する宝具、軍勢を一掃できる宝具、自身を強化する宝具、そして世界をも破壊してしまう宝具も存在する。
今回の対城宝具は国1つを簡単に消すことができるほどの威力を有している。
味方だとしたら心強いが、敵として出てきたら厄介だ。
少なくとも、そういうサーヴァントがこの特異点にいることは確かだ。

「周辺の状況確認、終わりました。ファランクスと地面についている焦げ跡以外の痕跡は発見することができませんでした」
『いやいや、少なくともサーヴァントの情報が見つかっただけども朗報だ。それよりも、周辺のスキャンを行ったところ、そこより北に北上したら大きな国があることが判明した。早速そこに向かったらどうだい?』
「わかりました。それではこれより向かいます」

ダ・ヴィンチちゃんとの通信を一旦止め、俺たちは北へ北上した。
先程より時間はかからずに、城壁らしきものと、その前に並ぶたくさんの荷物を乗せた馬車が見えた。
近づくにつれようやく人に会うことができた。
早速マシュは荷物を飲んだ馬車を引いている人に話を伺っていた。

「こんにちは。少々お尋ねしたいことがございますが、今大丈夫でしょうか?」
「おや、旅人かい?」
「はい。遠くの国からやって来ました」
「それはそれはご苦労だったね。ところで、何が聞きたいんだ?」
「はい、先程大地が焦げた跡を見かけたのですが、何かわかりますか?」
「あぁ、あれか。あれはね、女王の怒りに触れたんだ」
「女王、ですか?」

女王?
ギリシャ神話で女王と言えば、アマゾネスの女王オトレーレやその娘のアンティオペ、ヒッポリュテ、ペンテシレイアが当てはまる。
まあ、どれもアマゾネス達なので簡単に怒りを買うことは簡単だろう。
何せ『美しい』っていっただけで殺されかねないからね。

「あぁ、その女王様は大層お美しい御方なんだが、性格に難があってな」
「あの、その女王様のお名前は?」
「女王様の名前? それはもちろん、エリザベス女王に決まってるだろ」
『っ!』
「えっ? エリザベス女王って、あの?」

エリザベス女王、通称エリザベス1世は、イングランドとアイルランドの女王。
テューダー朝第5代にして最後の君主。
時代的にも場所的にも居ないはずの人物だ。
もしかすると、そのエリザベス女王がサーヴァントだというのか?
もしそうだとしたら、この時代にいてもおかしくはない。
マシュも驚いていたが、冷静になって質問をしていた。

「それじゃ次に、ここ最近何か変わったことはありますか?」
「変わったこと? ……うーん、特にないな。大きな戦争もないし」
「えっ? 戦争が起きてない?」
「あぁ。あんたらもそれを知っててここに来たんだろ? 他の国は戦争ばっかりだけどさ、ここギリシアは平和そのものだ。ちなみに俺は大量に仕入れた染め物で一攫千金を狙ってんだ」
「そ、そうですか。それでは最後に、この国は何て国ですか? その……いろいろと疎いもので」
「ずいぶんと田舎から来たのか。ここはな、トロイアだよ」

今度こそ、俺は言葉を失った。

……。
………。
…………。

『……さて、情報をまとめようか。君たちが今いるのはトロイアで、時期的にはトロイア戦争の真っ只中。国の外では熾烈な殺し合いをしているはずなんだけど……』
『集めた情報だと、トロイア戦争そのものが起きていないということになる。そして、ここギリシャを納めているのはエリザベス1世。普通に考えると彼女はサーヴァントだと判断できる。しかも対城宝具を用いていると予想される』
「……そう聞くとなんていいますか……」
「メチャクチャですね」
『そう。歴史を根本的に覆しちゃっているんだよ。今までの特異点はそれぞれ時代にあった出来事が行われていたけど、ここではそれすら起こっていないんだよ。それに、ギリシャ神話に登場しているはずの人物が未だに出てきていない』

確かにそうだ。
オルレアルだってジャンヌが処刑された後の世界だったし、イ・プルーリバス・ウナムだってケルトが混ざっていたもののアメリカの独立戦争の頃の話だった。
だけど、ここでは起きているはずの戦争が起きてないのだ。

『トロイア戦争の勃発してないギリシャ、エリザベス女王……う~ん。さすがの天才も少しばかり混乱気味かも……』
『……ふむ、まだ断定するには早計だと思うが、とりあえずはやれることをやっておこう。ちょうど今龍脈のスキャンを終えたところだ。座標を送るのでそこに向かってくれ』
「りょ、了解しました」
「……うん、悩んでいても仕方ない。行動に移そう」

気持ちを切り替えるために大きく背伸びをした。
するとそのとたん辺りが暗くなった。

「太陽が雲に隠れたんですかね?」
「なんだよ、せっかく気持ちよく出発しよう……と」

俺は空を見上げて言葉を失った。
隣にいたマシュも空を見上げて驚いていた。

「せ、センパイ……あれって……」