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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌2

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 アンの話によれば、ディケ博士はダアトに着いて早々、方々からあらゆる書物をかき集め、宿の部屋に籠りそれらを読み耽っていたらしいが、一週間前になると唐突にザレッホ火山へ行くと言ってあっという間に行方を晦ましてしまったらしい。それ自体はままある事でアンも最初は気に留めなかったが、一週間も音沙汰なく帰って来ないのは初めてだと言う。
「長丁場になるのであれば、私も連れて行くか一言その旨を伝えてくれるはずなのです」
 本人曰く、アンはディケの助手を務めているとのことで彼の生態についてはこの世で二番目に詳しいのだそうだ。
「なんで一番じゃなくて二番なんだ?」
「誰もが認める一番手はもはや理解者を越えて操縦者なのです。到底適わないですし、争う気も起きないのです」
「はあ……?」
 よく分からなかったが今敢えて追及する内容でもないだろうと考え、ルークは曖昧に相槌を打った。
「皆さん博士に御用があるのですよね? でしたら、アンのお願いを聞いて欲しいです!」
 博士を探すために協力すれば、本人を見つけた暁には彼の研究内容を聞けるよう口添えしてくれるという。
 助手といえど、アンはまだ十を越えるか越えないかという少女だ。その口添えに如何ほどの効果があるのか疑問だったが、博士の行方を追いたいのは事実。ならばとアンの要求を飲むことにした。
 そのアンが出した要求とは、ザレッホ火山への立ち入り許可と護衛を兼ねた調査同行者の用意だった。
 立ち入り許可については神託の盾騎士団にティアから申請すればすぐに下りるだろう。火山の調査も、入山経験があるルーク達ならまず大丈夫だ。残る問題は、
「同行、ということは君も火山へ行くのか」
「もちろんです!」
 アンが一緒についてくる気でいることだった。
「うーん……どうする、ティア」
「……流石にそれは許可できないわね」
「なぜですか!」
 これでもそこそこ旅慣れているし迷惑はかけないと食い下がるアンをなんとか説得し、火山の調査は明朝、ルーク達三人で行うことになった。
 話し込むうちに日も暮れていたのでアンを宿に送り届け、三人は自分たちの宿泊先へ戻った。
「結局こうなったな」
「アニスとの合流は火山の中になりそうね」
「すれ違いにならなきゃいいが」
 宿屋に戻る道すがら、ルークが思ったことを口にすると全員が同じ思いだったらしく、それぞれがため息をついた。
 思い起こされるのは火口から湧き出る溶岩と、それから立ち上る異様な熱気、空気を満たす水蒸気によってサウナ状態になった火山内の悪環境。生身での長期間滞在は文字通り自殺行為になる場所だ、行かずに済むならそうしたかった。
 そんな場所の調査を命じられたアニスの落胆は如何ほどだっただろう。不機嫌そうなアニスの顔が脳裏に浮かぶ。思いがけない場所で自分たちの顔を見て、その表情はどう転ぶだろうか。喜んでくれれば何よりだが、理不尽な八つ当たりをぶつけられる可能性も十分にある。というか、アニスの性格を考えれば後者の方が圧倒的に確率は高い。
 彼女が日頃溜めているフラストレーションの捌け口にされる事、合わせて明日赴く火山の環境を考えた時、今日は早めに休んでおくに越したことはないと皆早々に部屋に下がったのだった。