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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌2

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2 神託を守護せし山


 遠くから誰かの声がする。その声に呼ばれるように瞼を開くと、視界は真っ白だった。なんだか体もふわふわとして実感がない。だからといって嫌な感覚ではなく、むしろ真綿の中に身を預けているようで心地よかった。
 ああ、これは夢か。
 夢ならばこれから何か起こるだろうか。期待半分ひたすら真っ白な光景をぼーっと眺め、ゆらゆらと体を揺らす世界に身を任せる。そうしていると、夢の中だというのになんだか眠くなってきた。また瞼が閉じそうになるのに抵抗もせず、意識を手放しかけた時だった。
 ─────────ルーク。
 自分を呼ぶ声。
 その声がした方向に首をめぐらせる。だが、やはりそこは真っ白な世界が広がるだけだ。何も無い。
 ─────ルーク。
 今度はもっと明瞭に聞こえた。この声には、聞き覚えがある。一体どこで聞いたんだったか。自分の名前を呼んだあと、何か続けて話しているのがわかったが内容は聞き取れない。
 誰だ。何を言ってるんだ。
 口に出したつもりだったが音にはならない。こんな事が、前にもあった気がする。
 声の主は分からないが、何故かその正体を、相手が伝えようとしていることを知らなければならない気がしてルークは耳を澄ませる。すると、ふと空気の揺れが頬に届いた。相手の存在を思った以上に間近に感じた、その時。

「ルーク!」

 パチッと瞼を開くと、そこは昨晩から泊まっている宿屋の天井が飛び込んできた。そして視界の脇には自分を覗き込む心配そうなガイとミュウの顔。
「……おは、よう」
「ああ、おはよう」
「おはようございますですの!」
 ぱちぱちと何度か目を瞬かせると、ミュウが笑って頬に擦り寄ってきた。ふかふかの毛の感触がこそばゆくてルークも笑う。
「大丈夫か? 何度か声をかけたんだが」
 肩に触れていたガイの手が離れていくのを見て、体を揺すられてようやく起きたことに気付いた。最近は寝起きも良くなってきたと思っていたのだが、今日はどうしたんだろうか。
「……夢、見てた」
「夢?」
 ベッドに左腕をついて体を起こすと、頭がずんと重いことに気付く。ふらっと倒れ込みそうになるのを慌てて右手で押さえた。
「ってぇ……」
「ご主人様!?大丈夫ですの?」
 ミュウが声を上げ、ガイが肩を支えてくれる。
「どうした、頭痛か?」
「ああ……。……でも、もう大丈夫だ」
 ふらついたのは一瞬で、感じたはずの頭痛も何故か消えていた。ガイに礼を言うと、ガイは不安げながらもルークの肩から手を外した。
「昔はよく出てたが、今でもするんだな」
「いや……」
 昔ルークがよく起こしていた頭痛の原因はローレライだった。ローレライを地殻から解放し、テレパシーのようなものが届かなくなってから頭痛とも縁が切れたはずなのだが。
「まあ、昨日は久しぶりにアルビオールで長距離移動したからな。疲れもあるだろうが……今日、平気そうか」
「だからもう大丈夫だって! ……ったく、心配性だな」
 ガイの気遣う眼差しを散らすように手を振ってベッドから降りる。立ち上がって軽く背筋を伸ばしてみると決して痩せ我慢ではなく、もう体に異常は感じなかった。
「もう飯だろ? すぐ支度する」
 すっかり準備を終えていたガイを少しだけ待たせて、宿の食堂へ降りる。その頃には、見た夢の内容も、夢を見たこともすっかり忘れていた。