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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌2

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 ルーク達が入った場所からだと上方に向かう道は直ぐに行き止まりになっていたので、自ずと下へ進むことになった。必然的に溶岩との距離も近づき、空気の流れも悪くなるため下るほどに暑さも増していく。
「あーもーあっづい!! 本当にこんなことに人がいんのかよ!」
「ルーク。暑いのはわかってるからわざわざ口に出さないで。もっと暑くなるわ」
「暑いもんは暑いだろーが! 暑い暑い暑い暑い!!」
「ルーク!」
「こんなところで喧嘩はよせよー」
 二人の口論にガイは苦笑する。言い合いながらも険悪な雰囲気ではないし、ああしていた方が気が紛れるのだろうと強くは止めなかった。
「……ん、何かあるな」
 足場の終わりが見えたと同時に、山肌に空いている横穴を見つけた。
「あんな穴無かったよな」
「新しくつくったのね……潜伏場所にしてるのかしら」
 残る道を渡りきって辺りを見回す。これより先はそこしか行き場がなかった。穴は人の身長よりも高く掘られているため、入るに支障はなさそうだった。中を覗いてみるが、暗くて深さや広さはわからない。
「進んでみるか?」
「だな。おいミュウ、ちょっと火ぃ吹いてみろ」
「はいですの!」
 ルークがミュウを穴に向けて突き出し、ミュウは思いっきり息を吐き出した。すると小さな火の玉がミュウの口から放たれ、穴の中を真っ直ぐ進む。三m程行ったところで突き当たりにぶつかり、火の玉は散った。その時の発光で一瞬照らされた穴の内部は、突き当たりの先が右方向に曲がっていることがわかった。
「まだ先がありそうだな」
「ミュウ、もういっちょだ」
「みゅ!」
 予め用意していた松明を掲げて、ミュウに火をつけてもらう。松明を持つルークを先頭に三人は洞穴を進んだ。完全な一本道だ。奥の方から風が吹いているのか、松明の火が後方に靡く。
「外まで繋がってるのか?」
「換気口を作っているのかもね……見て、明るくなってきたわ」
 ティアが言う通り、洞穴の終わりを教えるように明かりが見えた。近付く毎に明かりの中の様子がはっきり伺えるようになる。
 最初は幾重にも積まれた木箱。そして地面に散らばる大小様々な石。光を受けてきらきらと輝いている。
(あれは……譜石か?)
 正体を探るためルークが目を凝らしていると、
「止まりなさい!」
「!」
 停止を促す声と共に何かが視界に飛び込んできた。反射的に歩みを止めるルーク。そのルークを庇うように、ティアとガイがぱっと前に出た。彼らの前に立ち塞がった人物は腰に手を当てロッドを突きつける。
「ここは一般人は立ち入り禁止です! 直ちに引き返し……って」
「アニス」
「ティア! ガイも……ルーク様まで!?」
 ルーク達のことを認めたアニスはロッドを下ろした。周囲にいる騎士団員にも警戒を解くよう声をかけ、パタパタとルーク達の方へ駆け寄ってきた。
「ちょっと、なんでみんながここにいんの!?」
「人を探しに来たんだよ」
「ほえ? こんなとこに?」
 首を傾げるアニス。
「アニスの方こそ、調査の成果はどうだったの?」
 アニスが書き残していった手紙の封筒を見せながらティアが訊ねると、アニスは半目で「あうー……」と唸った。
「悔しいけど、ご覧のとーり。奴らがここを使ってるのは間違いなんだけど、肝心の“人”がいなくって」
 アニスに先導されるように洞穴を抜けて広い空間に出ると、やはりそこら中に散らばる譜石が目に付いた。そこは思ったよりも天井が高く造られており、光と空気を取り込む為だろう、いくつか四角い穴も空いていた。それによって部屋の上部から光が差し込み、内部を明るくしていた。そこをアニスと共に来たのであろう神託の盾騎士団たちが五名、それぞれ壁や床を調査しているようだった。
「……なるほど、この譜石の量は見過ごせないわね」
 ティアが部屋の中に沢山積み上げられた木箱の中を検分して言った。どうやらその中身全てが譜石で満たされているらしい。人一人余裕で入れるような大きさの木箱、それがざっと十はある。
 譜石は預言を詠むと出来る副産物だ。一体どれほどの預言を詠めばここまでの量になるのだろうか。
「どれだけ禁止しても、預言を求める奴は減らないってことか……」
 ガイは箱の中の譜石をひとつ手に取り、手遊びに投げ上げてまた掌に納める。二、三度繰り返すとまた木箱に戻した。
「それにしたってこの量は異常! 見つけたらタダじゃ済まさないんだから!」
 ぱしんっ、と右手で作った拳を左手に打ちつけるアニスの表情には鬼気迫るものがあった。一番近くにいた騎士団員がアニスとの距離をじりじり開ける。ここまでの道程の中でも色々あったのだろうな、とルークは彼の心中を察した。
 アニス達がここへ来た理由は裏預言士(イリガルスコアラー)とそこに与する人物の摘発だ。
 裏預言士とは、禁止令が出た後も預言(スコア)を求める者から金銭等を受け取りながら秘密裏に預言を詠んでいる者たちを指す総称だ。もちろんこれは違法で、依頼した側も取締対象となっている。預言に頼りきりの生活をしてきた人々は、突然預言を取り上げられ当然戸惑った。当初は反発も大きかったが、ヴァン・グランツが企てた「全人類総レプリカ計画」に預言が大きく影響したことや、ユリアが遺した惑星預言(プラネットスコア)の内容が公表されると反感の声は急速に鎮まった。
 預言が無いことに慣れようと努力する者が大多数だった一方で、前科がつく危険も承知の上で、多額の金銭を支払ってでも預言を受けようとする者が後を絶たないのも事実であった。元々預言の頒布を主な役割としてきたローレライ教団が、今や裏預言士の取締を最たる役目としているのも皮肉な話だ。
「譜石もこの量だと一気には運び出せないしぃ……今日はここから一箱だけ持ち帰って、また出直しかなぁ」
 あー悔しっ! と頬を膨らませるアニスを宥めるようにティアがその背を擦る。
「でもそんな簡単に逃げられるか? ここまでほとんど一本道だっただろ」
「そうね。私もそれが気になっていたわ」
 ルークとティアの言葉にアニスも首を傾げ答えた。
「そうなんだよね〜。一切すれ違わずに逃げたってなると、私達がここに来る事を相当前から知らないと無理なんだよ」
「預言で詠んだとか?」
「まさか。そんなに具体的に未来が解る訳じゃないって知ってるでしょ」
 むう、と唸ってルークは地面に視線を落とし考え込む。右手に持つ松明の炎が揺れてジジ、と音をたてた。
「……ルーク! それちょっと貸して!」
「は?」
 なんだよ、と止める間もなくアニスがルークの手から松明をひったくり壁側に近寄る。
 そろそろと壁際まで歩いた後、松明で壁を撫でるように掲げ、ある一箇所に辿り着くと耳を寄せて「ここだ」と囁いた。
「この先、多分空洞になってる!」
 一見するとただの岩壁であるが、アニスの顔は確信している。
「ぐぬぬ……!」
 アニスは岩と岩の間に指を入れ、動かそうと試みるが微動だにしない。
「どこかに仕掛けがあるんじゃないか」
 ガイも壁に手をつき辺りを見回すが、それらしいものは見当たらない。
「二人とも、そこどいてろ」
 そう言われてアニスとガイが振り返ると、ルークがしたり顔でミュウを抱えていた。