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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌2

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「ルーク、まさか……」
「仕掛けを探すよりこっちのが早いだろ」
 ルークの考えを察したティアは不安げに眉尻を下げる。対するルークは左手に乗せたミュウの感触を確かめている。
「いけるな、ミュウ」
「はいですの!」
 あれだぞ、と右手で目の前の岩を指さしてからルークは大きく振りかぶった。それを見たアニスとガイは数歩ずつ後ろに下がり、標的の岩から距離をとった。
「っらあ!」
「みゅ〜〜!」
 悲痛にも聞こえる鳴き声と共にミュウの体は岩めがけて真っ直ぐ投げ飛ばされた。ドゴッ! っと痛々しい音がしたかと思うと岩はガラガラと崩れ落ち、その先には薄暗い通路が続いているのが見えた。
「やっぱり!」
 アニスが中を覗き込み、予想が当たっていたことを喜ぶように飛び跳ねた。耳の下で結ばれたツインテールがぴょこぴょこと尻尾のように跳ねる。
 糸で繋がれているかのようにルークの左手に舞い戻ってきたミュウは埃を落とす為にプルプルと頭を振っている。あどけない小動物を硬い岩目掛けて投げつける、見た目はとんでもない動物虐待だが、ソーサラーリングの力で強化されたミュウはこのくらいの岩なら難なく壊す破壊力を発揮するのだ。
「お手柄だな」
「みゅぅ!」
 ルークが労ってやるとミュウは嬉しそうに鳴いた。後ろのティアはまだ不満げな顔をしていたが、毎度のことなのでルークは敢えて無視を決め込んだ。
「奥にも明かりがあるみたいだぞ」
「調べるっきゃないね」
 ガイの言葉を受けて、アニスが騎士団員に声をかけて先へ進ませる。アニス自身もすぐにその後を追おうとするが、その前にルーク達を振り返った。
「一応だけど、みんなも来るの?」
「こっちはこっちで人を探しに来てるからな」
「ふーん。まあいいけど! こっちも人手が増えて助かるし♡」
「勝手に人手にすんなよ」
 ルークの嫌味も意に介さず、アニスは「ほら行こ!」と洞窟の中を指し示す。促されるままルーク達は歩き出した。
 薄暗い通路はアニスが持つ松明で全貌が見える程度にしか続かず、すぐ突き当たりに扉が見えた。騎士達がその前でアニスの指示を待っている。アニスは近くの騎士に松明を預けて扉に耳を当てた。聞き耳を立てて中の様子を探るが、物音はない。騎士達、次いでルーク達に目配せをして、中に突入する意を伝える。それを汲んだ騎士の中で、前衛向きの者がアニスの前に出て扉に手をかけた。
「……ご主人様……」
 緊迫する空気の中、ルークに抱えられていたミュウが遠慮がちに声を上げた。対するルークはなんだ、と視線だけ寄越す。ミュウはルークの腰ベルトから下がる鎖を手繰り寄せながら
「お腰の石、色が変わってますの」
 そう言って鎖の先に繋がれた石をルークに見せた。親指程の大きさの石を空いている左手のひらに乗せて見ると、先端から半分程がほぼ黒に近い、深い紫色に染まっていた。元々は透明でプリズムのよう光を反射して七色にきらめく石だ。
「おい、アニス─────」
 その変色を見て、ルークは一同に待ったをかけようとしたが一寸遅く、先頭の騎士達は扉を開け放ち中に侵入していた。
 アニス含め、騎士団は素早く陣を組んで周囲を警戒する。中は先程の譜石が集められていた空間より狭い。窓も小さく光源もない為薄暗い。その中で目を引いたのは壁一面に設置された鉄格子だ。
「隊長!」
 一人の騎士がアニスを呼ぶのを聞いて、ルーク達もアニスと一緒に鉄格子の前に駆け寄る。その奥には多くの人々が無造作に横たわっていた。
「これは……」
 うつ伏せの者、背中を丸めて蹲る者、壁に寄りかかるように座っている者。年齢も性別も様々だが、一様に目を瞑り意識は無い。あちこちからか細い呻き声が上がっていた。
「瘴気集合体(コンタギウム)感染症……」
 ティアの呟きは隣にいたルークとガイの耳に入った。ルークもまた二人に変色した石を見せ、お互い確信するように頷いた。
「レヴィン博士の言った通りだ。ここには、瘴気が存在してる」
 瘴気の有無を知るための道具として、ベルケンドの学者レヴィンから渡されたこの石は“光透石”という。瘴気との親和性が高く、瘴気が発生している場所ではこうして変色するらしい。第七音譜術士やレプリカの間で流行っている奇病、その原因である瘴気集合体(コンタギウム)の存在をいち早く教えてくれるフィフィを研究のために預けてきてしまったので、その代わりに持たせてくれたのだ。
「急ぎ傷病者の確認を! 要救護者を見つけ次第治癒術士に申し出るように!」
 アニスが声を張り上げ指示を出しているのが聞こえる。鉄格子に鍵はかかっておらず、簡単に侵入した騎士たちは昏睡する人々を運びだそうとしていた。
「治癒術士はまずいな」
「止めましょう」
 アニス達は瘴気集合体について何も知らないのだ、すぐに救助しようとするのも当然だろう。しかし瘴気集合体は第七音素(セブンスフォニム)の活性化を感じると人々の体から抜け出してくる。そこをルークの超振動で分解すると完全に病を断絶できるわけだが、瘴気集合体のおびき出しは都合よくコントロールできる訳ではなく、今ここで実行すると恐らく場にいる人々全員から抜け出してしまう。瘴気集合体を素の状態で目視できるのはルークだけな上、数が多くなると合体してより厄介になることがある為、ここで第七音素は使わせたくなかった。
 荒事になるかもしれないため、ミュウには道具袋の中に隠れてもらう。ティアが事情を説明するべくアニスの元へ向かうと、鉄格子から少し離れた場所から物音がした。それに気付いたルーク、ガイは振り返る。それとほぼ同時にどさりと音がして、騎士が一人倒れ込むのが視界に飛び込んできた。その後ろにはローレライ教団の祭司服の男が佇んでいた。足元に横たわる騎士をじっと見つめ、ゆっくりと視線を上げていく。ルーク達の顔の高さまで目線が上がると、男はにっと目許を細め、
「ようこそ。あなたも預言をお求めですか?」
 迷える者に導きを与える宣教師らしい落ち着いた声音でそう言った。