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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌2

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 数秒間の沈黙。
 ディケとアンは無言のまま目を瞬かせている。
 今までの騒がしさから打って変わって、あまりの反応の薄さにルークは不安になった。突拍子もない話についてこれないのか。完全同位体の説明からせねばならなかったため、自分の話し方が悪かったせいで内容が理解されていないのかもしれない。こういう難しい話の説明はいつもジェイドやガイに任せてきた為慣れていないのだ。
 どうしよう。やっぱりまずかったかな、と仲間達に救いを求めようとした時、ディケが天井を仰ぎ目元を両手で覆った。
「!?」
「おお、神よ……! 始祖ユリアよ!」
 ばっ、と手を外し正面を向くと、ディケの大きく開かれた瞳はキラキラと輝き、頬は緩みきって口角はにやつきを隠しきれずどんどん上がっていく。
 ひく、とルークは息を飲み、その上半身は軽く仰け反った。
「まさか! まさかこんな形で精霊に近づくことが出来るとは!!」
 シュバッと勢いよくディケの両手が差し出される。
「握手していただいても!?」
「え? え、あぁ、はい」
 条件反射的に右手を差し出すとガシッと掴まれ、上下にブンブン振り回された。
「ああ! なんと! なんと! 私、今非常に感動しております!!!」
「博士だけずるいです! アンもアンも!!」
 半ば奪われるような形でルークの右手が所有者を変える。ディケとアン、二人の手の大きさと柔らかさの違いに変に感動しながら、ルークはアンとも握手を交わした。
「はぁぁ……! ローレライの完全同位体、ということは姿形もローレライと一緒なのでしょうか……!? ローレライだけは文献の数も少なく、その描写もバラバラなので定まった表現が無いのですよ! 容姿だけじゃない、声は、性格は!? あああなんという事か、興奮しすぎて考えが纏まりません!!」
 ルークのことを上から下から隈無く観察するディケ。非常に居心地が悪くなったルークは肩と顔を強ばらせ、微動だにしなくなった。
「ですが……そうですかそうですか! そういうことなら精霊が見えるのも納得です! ルークさん自身が精霊、のようなものですからな!」
 うんうん、とディケは頷いている。アンはここぞとばかりにルークの腰に抱きつき満面の笑みだ。完全に尻込みしているルークは苦笑し、行き場を無くした腕を宙に浮かせたまま話す。
「俺の話はまあいいんですけど……アスカのことは俺以外にも見てるヤツがいるんです」
「なんと……!? その方も精霊の!?」
「いや。そいつはそういうのじゃない、と思います」
 挙式中、教会のステンドグラスを割って侵入してきたアスカの姿を見たと証言したフローリアン。彼もローレライ教団導師のレプリカであるため、只人とは言い難いかもしれないが、ルークほど意識集合体との関わりは無いはずだ。 
「……となると、精霊を見たという人が今後他にも出てくる可能性が…………それに何かしらの条件があるのだとしたら、それさえ揃えば我々にも……?」
「それは本当ですか博士!?」
 アンの瞳の輝きがより一層増す。対するディケはアンと同様、もしかしたらそれ以上の輝きで彼女に応えた。そしてぐるんと勢いよくルークの方を見て、
「アスカを、アスカを見たのは一体いつ! どこですか!?」
 そう聞かれ、アッシュの中から見ていた記憶を懸命に引っ張り上げる。
「……最初はバチカル。次にフェレス島……」
 ん、とディケが怪訝そうな顔をしたのを見ながらルークは続けた。
「……えっと、バチカルから少し北に行った海上です。どちらも大体半月前のことでした」
「半月前……それではもう移動している可能性が高いですな。しかし何故またそんな市街地に」
「街に出るのは変なんですか?」
「精霊はいわば自然そのものですから、人工建築物は好まないはずです。目的が無ければ近寄らないかと」
 特に大都市には。と小さく付け加えたのを聞いて、先程ディケが顔を顰めた理由がわかった気がした。険しい山岳地帯に自然が生み出した窪地、そこへ人が造ったバチカルの街は地を穿ち、天を射抜かんばかりに上下に伸びる。それはまさに、自然に対して人間の統治力を誇示する象徴のようなのだ。あの街を代々発展させてきた先祖には悪いが、ディケの言う通り精霊が好んで寄り付くとは思えなかった。
「……目的」
 ティアがぽつりと呟いた。
 アスカの目的。単純に考えれば、それはナタリアだ。婚儀の最中ルークの目の前で攫われ、奪還後も依然眠り続けているキムラスカの姫。
 しかし、何故ナタリアなのか。彼女が狙われた理由も解らなければ、眠っている理由も判らない。
「何かありそうですか?」
「……確かにその場で一人、アスカに攫われた奴がいたんです。すぐに取り戻したんですけど、何故かずっと眠ったままで」
「アスカが、人を?」
「アスカはとっても温厚な精霊です。きっと訳もなく人を攫ったりしないですよ」
「うん……」
 そうだね、とディケが頷く。ふくれっ面のアンの頭を撫でて一呼吸おき、続けた。
「それに、アスカは陽光の化身です。眠ってしまった人の目を覚ますことはあれど、眠りにつかせてしまうとは……それこそルナの十八番でしょうな」
 ルークの頭を過る、風にたなびく細い銀糸。アスカと共にいた銀髪の女の存在を思い出した。
「本当にルナの仕業だとしたら、第七音譜術士(わたしたち)では解呪できないかもしれないわ」
 人智を越える存在、その力。太刀打ちしようとすること自体が間違っている。ティアが床に視線を落としたまま、普段と何ら変わりないトーンでそう言った。聞く者によっては冷たい印象を受けるだろうが、彼女は決して突き放している訳ではない。顔を見れば、己の無力さに歯噛みし、悔しさを押し殺しているのが解る。
「……となると、ルナかアスカを見つけて術を解いてもらうしかないってことか」
「でも何処にいるのかもわからねえんだぞ?そんなやつどうやって探すんだよ」
 確かに、とガイは頷き、答えを求めるようにディケを見た。
「むぅ……。本来であればアスカに会うなら第八セフィロト、とお答えしたいところですが。過去二回、ルークさんが全く別の場所で遭遇していること、先日もザレッホ火山にイフリートでなくヴォルトがいた事。……それらを鑑みると、私の持論はあまり当てにならなさそうですな」
 お力になれず申し訳ない、とディケは頭を下げた。
「とんでもないです、話が聞けて助かりました」
「こちらこそ。何かわかりましたら随時お知らせしますので」
 すっと手を差し伸べられ、ルークも手を伸ばし握手を交わす。ディケの頬がみるみる緩んでいった。
「……して。当てにならないついでに……」
 にっこり微笑みかけられ、ルークの背筋をぞわりと嫌な予感が走った。
「ルークさんの身長体重、視力聴力握力のデータと頭髪、指紋、唾液のサンプルを頂戴したいのですがっ!」
 よろしいですかな!? と折れんばかりに手を握られながら詰め寄られてノーと言える訳が無い。
(変なところでそっくりだ)
 ベルケンドの女性学者を思い浮かべ、流石夫婦だなといやに納得した。