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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌2

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「あらティア。今戻ったの?」
「ええ。今日はこれを届けに」
 ティアが最後に出向いたのは狭めの事務室のような場所だった。カウンターのようなデスク周りに若い女性が二人。蔵書の整理をしているところだったのか、扉を開くとすぐにこちらに気づき声を掛けてきた。片方の女性がティアから封書を受け取るとすぐに中身をあらためる。
「はーい、確かに。相変わらず真面目ねー、報告書なんて後日でいいのに」
「その後日がいつになるかわからなかったから……」
「ってことはまたすぐ出ちゃうの?」
「ええ」
「忙しいわねぇ。ちゃんと公休消化してる?」
「……」
「やっぱり!」
「ダメじゃない! その辺最近うるさいんだから頼むわよ〜」
「も……ちろん、わかってるんだけど……」
 女性陣は扉側に控えるルーク達などそっちのけで盛り上がっていく。ティアが同世代の同僚と話すところを見る機会は今まであまり無かった。こんな風にかしましくお喋りに花を咲かせるイメージはティアに無かったので、なんだか新鮮だ。
「あとこれ、ティア宛の書類いくつか届いてるわよ」
「ありがとう」
 ティアが手渡された封書類を確認していると、片方の女性がもう一人の肩を叩き、何か耳打ちする。一瞬ルークと目が合った二人はきゃあと声を上げた。突如起こった歓声を疑問に思ったティアが書類から目を外すと、女性たちはティアの肩をぐいと引き寄せる。
「ちょっとティア! あの人たち誰? あっ!? もしかして彼氏!?」
「!?」
「えっやだほんと!? どっち!? いや待って言わないで、当てるから!」
「ちょっ……違うから! 当たらないから! そういうのじゃないから!」
 ルーク達にはきゃあきゃあと囃し立てる声しか入ってこない。
「ティアさん楽しそうですの!」
「だな。何話してんだろ」
「うーん……」
 ルークに聞かれてガイは困ったように笑う。
「恐らく、知らない方が幸せな類の話だと思う」
「ふーん……?」
 それなら知らなくていいか。ルークは女性達の雑談が長くなること覚悟で壁に寄りかかる。髪で隠れて窺うことができないティアの横顔をぼんやり眺めていると、ふいにティアがこちらを向いた。しかしそれは一瞬で、ばちっと視線が合ったと思ったらすぐさま顔を背けてしまった。
「なんだあれ」
「まあまあ」
 ガイには彼女達の会話の内容が分かっているのだろうか。なんだか自分だけ蚊帳の外のようで面白くない。ルークがむくれ始めた時、ずっと小声で話していたティアがわざと大きな声で話し始めた。
「とっところで! アニス……タトリン奏手が今どうしてるか知らない?」
「タトリン奏手? ……確か、街を少し離れるとは言ってたけど……」
「それこそティアに手紙置いていったわよ。何か書いてない?」
 それそれ、と女性がティアの手元を指さす。ティアはあわあわと封筒の差出人を確かめて封を開けた。中の便箋にさっと目を通し、顔を上げる。
「………ありがとう、助かったわ」
「えーもう行っちゃうの?」
「今日宿舎には顔出す?」
 女性達の残念そうな声に、ティアは手紙を封筒に戻しながら微笑んで首を横に振る。
「雇い主を待たせてるから」
 それじゃあ、と踵を返すティア。その表情はここに来る前に比べるとぐっと穏やかになっていた。
「お待たせ、時間取らせたわね」
「もういいのか?」
「ええ。行きましょう」
 男性陣を先に行かせて、ティアは扉を閉める時に中の女性達に対してひらっと手を振った。二人も笑顔で手を振り返す。扉が閉まる直前、ティアの慌てた声が聞こえた。
「待ってルーク、そっちじゃないわ……」
 パタン、と扉が閉まってから女性達は首を傾げる。
「……ルーク?」
「そういえば、今のティアの任務って……」
 数日前の入電を思い出そうと、ティアが今しがた持ってきた報告書に目を落とす。数秒経って、二人は顔を見合わせた。
「──────ルーク・フォン・ファブレ様!?」
 女性達はこの日一番の大声を上げることになったのであった。