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誰にも君を渡さない 3

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アムロは二度ほど瞬きを繰り返し、シャアを見つめる。
そしてゆっくりと起き上がり、右腕をシャアへと伸ばす。
『アムロが反応を示した⁉︎』
声には出さないが、ブライトとジュドーは顔を見合わせ驚愕する。
しかし、シャアは少し困惑した表情を浮かべている。
伸ばされたアムロの手を取り、顔を顰める。
「君はアムロではないな?」
「「え⁉︎」」
思わずブライトとジュドーが声を上げる。

『ふふ、大佐には直ぐにバレてしまいますね』
アムロの口から言葉が発せられているが、何故か女の声に聞こえる。
「ララァ…ララァ・スンか…」
『はい、大佐。お久しぶりです』
その名に、ブライトとジュドーが驚愕する。
「何故君がアムロの中に?」
『大佐は私に会えて嬉しくないんですか?』
「ララァ、質問に答えてくれ」
『ふふふ、だって、私とアムロは魂で繋がっているんです。それに、アムロとは約束しているんです。いつでも私に所に来てくれるって』
ララァの言葉に一同がギョッとする。
「ララァ、君は今、アムロを連れて行こうとしているのか?」
『ええ、だって本当はア・バオア・クーで私のところに来て貰える筈だったんですよ?でもアムロが仲間の所に帰りたいって言うから、あの時は返してあげたんです』
その言葉に、ブライトがゾクリと背筋を震わせ、唇を噛みしめる。
『その後も、シャイアンで地獄の様な生活を送っていたアムロに言ったんです、そんなに辛いのならば私のところに来たら良いって。でもアムロってば、大佐が自分を待っているような気がするから今は行けないって…』
「アムロが言ったのか?私がアムロを待っていると…」
『ええ。大佐は必ず地球圏に戻ってくるからと…そしてきっと何かをする筈だって。それに、アムロはあの時、大佐の手を取らなかった事をずっと後悔していましたから…』
「アムロが…そんな事を…」
『ですから、今回ようやく大佐との決着もついた様ですし、アムロには私のところに来て貰おうと思ったんです。大佐、アムロを私に下さいな』
「ララァ!」
「勝手な事を言うな!」
横からジュドーが叫ぶ。
「目的は達成したかもしれないけれど、アムロさんにはブライト艦長やチェーンさん、待っている仲間がいるんだ!」
『でも、アムロも私のところに来て良いって言ってくれたのよ?でも、大佐がアムロを引き留めるから、今のアムロは中途半端な状態なんです。身体は生きているけど心は私と共にいる…』
「どういう事だ?」
『それはその二人が知っているでしょう?』
「ブライト?」
シャアの視線を受け、ブライトが気まずそうに眉をひそめる。
「…アムロは今、…精神が崩壊…いや、彼女の言う事が本当なら、心が身体に無い状態です…。目を開けてはいても何も見ておらず、感じず、反応を返さない…まともに話す事も出来ず、ずっと…寝たきりです」
「何だと⁉︎」
「今日は…この状況を貴方に知られない為に、睡眠薬で眠らせていました…」
『ふふふ、大佐。大佐がアムロを手離してくれたらアムロは完全に私の元に来られるんです』
「ララァ!たとえ君でもアムロは渡せない!」
『何故ですか?大佐だってアムロとは決着が着いたと思っているのでしょう?これ以上アムロに何を求めるのですか?』
「何…を…?」
ララァの問いに、シャアが言葉を詰まらせる。
互いに最高の機体、ベストな状態で戦った。
結局自分はアムロに勝てなかったのだから心残りが無いとは言わない。
しかし、あの光の中で、互いに心の内を全てぶつけ合った。
そして、アムロが自分を理解していてくれた事を知った。
アムロは、私の想いも覚悟も全て受け入れ、その上で正面から立ち向かってくれたのだ。
そして気付く、自分はアムロに理解して貰いたかった、想いを受け入れて欲しかったのだと。だからこそ、十四年前も、七年前もアムロに同志になって貰いたいと、側にいて欲しいと思ったのだ。
シャアは、今まで自覚出来ずにいたアムロに対する想いを漸く理解する事が出来た。
フッと笑みを浮かべると、真っ直ぐにアムロを、ララァを見つめる。
「ララァ、私はアムロが欲しい。その心も身体も全て欲しい」
シャアはアムロの肩を掴み、その琥珀色の瞳を覗き込む。
「聞こえるか?アムロ。私は君が欲しい。だから、誰にも君を渡さない」
その瞬間、アムロの瞳に光が戻り始める。
そして、見る間に顔が赤く染まっていく。
「アムロ?」
シャアの問いかけに、照れ臭そうに目を背ける。
「貴方…よくそんな恥ずかしい事、堂々と言えるな…」
ボソリと呟く声に、ブライトとジュドーが驚きの声を上げる。
「アムロ⁉︎」
「アムロさん⁉︎」
それまで全く反応を返さなかったアムロが、反応を返すどころか声を発したのだ。
「アムロ…!」
そして驚く一同の耳に、アムロの声とは別にクスクスと笑う少女の声が聞こえる。
『ふふふ、アムロ、大佐はああ言っているけど、あなたはどうしたいの?』
ララァの問いに、アムロが困った表情を浮かべる。
「ララァ…君、わざとシャアを煽っただろう…」
アムロの声に応える様に、更に笑い声が大きくなる。
『何の事?それよりもアムロ、あなたの答えは?』
「ララァ!」
『照れても駄目よ、大佐も真剣にあなたへの想いを打ち明けたのだから、あなたも真剣に答えなければ』
「ララァ…」
アムロが困惑しながらも、目の前のシャアを見上げる。
「あの時も…言ったけど…貴方のやろうとしている事とか…想いは理解できる。でも、あんな風に人を傷付ける様な行動は受け入れられない」
「ああ、そうだな。しかし、君が見せてくれたあの光で…人々の心の暖かさを直に感じて目が覚めた。君の言う様に、私は焦りすぎていたのかもしれない」
目を伏せるシャアをアムロが切なげに見つめる。
「貴方のジオンでの立場とか…色んな事情もあるのは分かる。…連邦の…醜い部分も…分かってる」
「そうだな…」
「貴方が…武力では無く…別の手段でその志を貫いてくれるのなら…貴方の側に居てもいい…」
「アムロ!」
照れ臭そうに顔を背け、顔を真っ赤にして答えるアムロをシャアが抱き締める。
「ちょっ!シャア!」
『良かったですね、大佐』
それを嬉しそうにララァが見つめる。
「君のおかげで自分の心が漸く理解できた。もしかして、君はこの為に?」
「ララァ…」
シャアの腕の中で、アムロも思わずララァを見つめる。
『ふふふ、どうでしょう?でもアムロ、あなたに私の所に来て欲しかったのは本当よ』
「…ごめん…ララァ…」
すまなそうに眉を下げるアムロに、ララァの幻影が抱きつく。
『良いわ。私、待つのは得意なの』
「ララァ…」
「すまないララァ。まだ暫く君の元にアムロは行かせられない」
『しょうがないですね』
そう言いながらもララァの声は明るい。
そんな三人のやり取りを、ブライトとジュドーが茫然と見つめる。
「えっと、つまりアムロさんの今までの状態はララァさんが?」
ジュドーの問いに、アムロが首を横に振る。
「違うよ」
「アムロさん?」
「あの時、サイコフレームの暴走で人々の思惟が俺の中に一気に流れ込んできた。その想いに引き摺られ、自己が曖昧になる感覚に陥ったんだ」
「自己が…曖昧?」
作品名:誰にも君を渡さない 3 作家名:koyuho