二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
自分らしく
自分らしく
novelistID. 65932
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

彼方から ― 幕間 ―

INDEX|5ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

 誰か一人でも、気分を害することの無いよう、バーナダムを諭す形で皆を牽制、したのかもしれない。
「……そうですね……おれも、そう思います」
 左大公の意図を察したのか、バーナダムはそう応えると、少し済まなそうな笑みをバラゴに向ける。
 バラゴも、バーナダムの笑みに懐っこい笑みを返し、頷いた。

 緩く、穏やかな空気の中、どこに座るか少し躊躇っているイザークに気付き、バラゴは自分の隣の地面を軽く叩くと、
「何してんだよ、座れ座れ」
 イザークを見上げながら、そう、促す。
「……ああ」
 言われるまま、イザークが彼の右隣に腰を下ろすと、その隣にガーヤが、そして、バーナダムとガーヤの間に、エイジュが腰を下ろした。
 バラゴから、手渡しで回されるスープとパンをそれぞれ受け取り、遅れてきた三人も、やっと、食事に口を付ける。
 三人、ほぼ同時にスープを一口啜る。
「あぁ、ホッとするねぇ……」
「……本当、美味しいわね、このスープ」
「ああ……」
 深く、大きく息を吐きながら呟いた三人の言葉に、バラゴは更に満足げに顔を綻ばせた。

     *************

「しかし、まぁ……良く、生きていられたよなぁ」
 空になったカップには、スープの代わりにお茶が注がれている。
 仄かに漂うお茶の香りの中、バラゴがしみじみと、そう言いだした。
 彼の言葉に、他の面々も同意するように、似たような言葉を口にしている。
「これも、ノリコと朝湯気の木の精霊のお陰ね……確か、イルクと言ったかしら……」
 カップのお茶に視線を落としながらそう言うエイジュ。
 するとジェイダが、
「エイジュ、あなたとイザークの力も大きかった」
 そう言ってくる。
「そうだよエイジュ、おれの怪我も癒してくれたじゃんか」
 バーナダムがジェイダの言葉に乗っかるように言葉を重ね、
「確かに、あなたの力も凄かった」
「イザークも流石だったな」
 ロンタルナとコーリキも続いて褒め始めた。
「おれは、出来ることをしたまでだ」
 誰に視線を合わせるでもなく、揺らぐ炎を見詰め、カップを手にそう応えるイザーク。
 褒められたことに対する素っ気ない返しだが、ガーヤにはそれが、イザークなりの照れ隠しに見える。
「ありがとうございます。けれど、大したことは出来ませんでしたわ」
 対するエイジュは、誉め言葉をくれた皆の顔を見回しながら、控えめな笑みを見せ応えている。
 二人の反応は相反するもののように見えるが、謙遜するでも、慢心するでもない二人の反応は、恐らく、根本的なところで同じなのだろう。
 どちらも、自分自身を客観的に見ることが出来、尚且つ、正確な自己評価が出来るだけなのだ。

「いや、確かに、あんたの能力には助けられた……バラゴやアゴル、バーナダムやガーヤにも……左大公方もおられたから、何とかなった……」
 会話の切れ目に滑り込ませるように挟まれたイザークの言葉に、ふと、皆の視線が集まる。
「フフッ……あなたに褒められるのは、悪い気がしないわね」
 少し嬉しそうな笑みを見せるエイジュ。
「確かにね」
 ガーヤも笑みを見せ、
「おめぇに褒められてもなぁ……」
 と額を掻くバラゴ。
「なに、助けになったのなら、それでいい」
 アゴルはジーナの頭に手を置きながら、そう言って微笑む。
「皆で互いに力を合わせ、協力した結果なのだな……」
 ジェイダの一言に、ロンタルナやコーリキ、バーナダムは同意を示し頷いていた。

「それにしても……」

 会話の合間、ふと訪れた静寂に、アゴルが呟く。
「おれも、傭兵時代に能力者と仕事をしたことがあるが、二人に匹敵するような能力者には、出会ったことがないな……」

 ――あの、ケイモスを除いては……だが

 樹海での、ケイモスの残虐な仕業が思い起こされる。
 同じ能力者だというのに、イザークとエイジュ、そしてケイモスの能力の使い方、それに対する考え方のようなものはまるきり逆だ。
 奴は……ケイモスは己の強さの誇示のため、その強さを他の者に示すことで満足を得ていたような――そんな気がする。
 二人は違う。
 決して能力を誇示したりはしない。
 勿論、出し惜しみをする訳でもなければ、使ったことを恩に着せる訳でもない……
 仮に……エイジュがどこかの国のスパイだったとした場合――誇示せず、恩に着せたりもしないのは、何か考えがあってのこと……だとも思えるが……
 イザークの場合は、単に知られること自体を避けているように感じられる。
 本当に必要な時以外は、なるべく能力を使いたくはない……そんな感じだ。
 アゴルは二人を見やり、カップに口を付けながら、そんなことを考えていた。

「へぇ、やっぱりそうなのかい?」
 ガーヤが感心したように、二人を交互に見ている。
「能力者自体が少ないものね、そう簡単に出会えるものでもないと思うわ」
 エイジュは特に気にする風でもなく、微笑みながらガーヤに返している。
「そんなもんかもな……おれも、ナーダの城でこいつと――」
 バラゴはそう言いながらイザークを親指で指差し、
「一緒に近衛をやってたカイダールが御前試合で能力使うまで、能力自体を見たことがなかったしな」
 と、その時のことを思い返しているのか、空を仰ぎ見るような仕草を見せた。
「しかしよぉ、同じ能力者でも、イザークとカイダールじゃ雲泥の差だったな、なぁ、アゴル」
 自分のカップにお茶を注いだ後、バラゴは他の面々にもお茶を勧めながら、アゴルに話を振ってゆく。
「そうだな……確かに同じ風使いのようだったが、カイダールという男の能力は、イザークの足下にも及んでいないように見えたな……それに、イザークおまえは、火も使える。カイダールを、おまえと同じレベルで扱うのは、奴には酷かもしれんな」
 勧められるままお茶を貰い、ジーナのカップにも注いで貰うアゴル。
 皆も、回ってきたポットからお茶を注ぎ入れ、互いにあの御前試合でのことを話し合い始めた。
 彼らの話を、聞くともなく聞いている内に、バラゴが額を掻きながら、何か考え込むように口を閉ざしてゆく。
「自分の能力がさほどでもないと分かっていたからこそ、彼は、毒を使っていたのではないだろうか……」
 話を締め括るようなジェイダの分析に、皆も納得するように同意を示し、思い思いに頷く中、
「まぁ……そうなんだろうけどよ……」
 左大公の言葉に同意を示すも、バラゴが表情を曇らせてゆく。
 地面に掻いた胡坐の膝に肘を乗せ、頬杖を付き、たいそうな溜め息を吐いている。
「なんだい……らしくないね」
 ガーヤがその溜め息に眼を付け、眉を顰めて訊ねている。
 その飄々とした態度と懐っこい笑みで、場の雰囲気や空気を和らげてくれていたバラゴ。
 彼の『らしくない』仕草に、ガーヤだけではなく、皆も眼を向ける。
 皆の視線に、癖なのか、また額を掻きながら、バラゴが少し躊躇いがちに口を開いた。