土方さんの誕生日
「すいません、副長!桂に逃げられてしまいました。」
「あぁ、そうか。じゃ、けーるぞ。」
パトカーの前で山崎の帰りを待っていた土方は、山崎が戻ってきたことで車内に入る。すぐに山崎も運転席に乗り込んだ。そしてバックミラーに先ほどまでなかった人影に気付く。
「あれ、万事屋の旦那。しかも新八君と・・・」
「おい山崎、ぐずぐずしてねーで早く車出せ!」
「あ、はい。ただいま」
戸惑いの様子を見せていた山崎だったが、土方に促されて車を発進させた。
「副長、なんでこの人たちが居るんですか?」
「あぁ、しょっ引いた。場所は開いてんだろ。」
紫煙を出す土方。窓が閉められて密閉された空間なので、やたらと煙たい。周りに居る連中は眉をひそめる。だが土方は気付いていないのか、気付いていたとしても喫煙をやめる気配はない。
「おい、煙いんだよ。」
銀時が青筋を立てて苦情を申し立てた。土方がバックミラー越しに銀時を一瞥する。だが、お構いなしにまた紫煙を口からゆっくりと吐き出した。
「るせーな、てめーはしょっ引かれる身分なんだよ。大人しくしてろ。」
「あん?俺たちに人権がないとでも言うんですか?何様のつもりだ、コノヤロー!」
「俺様。」
土方がきっぱりと答えると、車内が静まり返った。刹那、
「オイィィィィ!!!!え、なにそれ!?お前そんな事言う奴だったっけ?ぶはは、ありえね〜」
「ゲハハハハ!!俺様だってヨ、マヨのくせに」
後部座席で銀時と神楽が笑い転げた。運転をしている山崎は笑いを堪えているのか、体が震えている。
「ちょっと、ダメですよ銀さん。神楽ちゃんも!土方さんだって何か理由があったのかもしれませんよ?」
注意をした新八は、声が震えていて説得力の欠片もない。
「てめーら、よっぽど死にてーらしいようだな。」
土方は口に咥えているタバコのフィルター部分をかみ締めた。隣に居る山崎からは小さく悲鳴が聞こえた。その山崎から安堵の息がすぐに出された。車を止めて万事屋の三人を車内に残して二人は外に出る。
「屯所に着きましたよ。そういえば今は取調室が開いていなかったはずですね。どうしましょうか?」
「そう言う事はさっさと言え!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・すいません、すいません。」
土方は山崎を何度も踏みつける。そこに一つの影が近寄ってきた。