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自分らしく
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彼方から ― 幕間2 ― & 第三部の最初だけ

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 その頷きに、彼女も軽い頷きを返し、
「自力で動かせないということは、自分で自分の体を支えることも出来ないということよ」
 と、バーナダムを見詰める。
 『どういう意味か分かるかしら?』とでも問うように。
「自分で自分を支えられない……」
 エイジュの言葉を反芻しながら、バーナダムはもう一度ノリコたちを見やった。
 ノリコは、ガーヤに体を支えてもらっている状態で、こちらをずっと、見ている。
「簡単に言えば、意識を失っている人を運ぶのと、同じことね……」
「…………」
「何度も背負い手を交代しながら彼女を運ぶ方法は、背負い手の負担は軽くなるけれど、ノリコの体にはかなりの負担を強いることになるわ……交代する時、下手な動かし方をしたりしたら、余計なところを痛めてしまうかもしれないしね――だから、一人の人になるべく長く、出来ればずっと背負ってもらった方が、彼女の負担を軽くすることになるのよ」
 エイジュの説明を聞きながら、無言で、ずっとノリコたちを見ているバーナダム。
 その脳裏には、気を失ったノリコを抱きかかえて合流した、イザークの姿が浮かび上がっていた。

 ――イザークは……一体どれだけの距離を、ノリコを抱きかかえたまま、歩いてきたんだろうか

 どんなに体重が軽かろうと、意識の無い人間を運ぶのがどれだけ大変なことか……想像するに難くない。
 けれどイザークは、あの、険しく起伏の激しい荒れ地の中、息一つ乱さずに、ノリコを抱きかかえてずっと歩いてきたのだ。
 合流してからもずっと――野営地の寝床に、ノリコを寝かせるまで……
 自分には到底できないことだと……そう思う。
 彼ならきっと、どこかの町に着くまで、ノリコを運び切れるだろう……何の苦も無く。
 ノリコのことを第一に考えるなら、イザークに背負い手を任せるということは、当然行き着く結果だと、今なら思える。
 さっき、どうしても引き下がれなかったのは、イザークの対応にムッとしたというのもあるが、単に意地になっていただけ……と言う理由の方が大きい。
 何もかも、イザークには勝てないと分かっていても、それでも……負けたくなかっただけだ。
 ……恐らく、自分と同じ想いを、ノリコに抱いているイザークに……

「悪かったよ……エイジュ」
「あたしもご免なさいね、いきなり耳を摘まんだりして――でもね、バーナダム、なにも背負って運ぶことだけが、ノリコの為ってことではないと思うのよ?」
 熱くなっていても、自分が悪いと納得できれば、素直に謝ることの出来るバーナダムに、エイジュは優しく微笑む。
 そして、そう言いながら、指を指した。
 怪訝そうに、指で指された方向に眼を向けるバーナダム。
 イザークも一緒になって、同じ方向に眼を向ける。
 その指の先には、こちらの様子を窺うようにしているアゴルたちがいた。
「アゴルに、ノリコを運ぶための準備をお願いしてあるの、知っているでしょう? 良かったら、彼の手伝いをしてもらえないかしら……ジーナを連れながらでは、彼も大変だと思うから……」
 暫しアゴルたちを見詰めた後、ハッと気づいたようにエイジュに眼を向け、パァッと、表情が明るくなるバーナダム。
「ああ! 分かったよエイジュ!」
 笑顔でそう応え、
「悪かったな、イザーク!」
 と、踵を返し、アゴルたちの方に向かいながら軽く手を挙げ、謝るバーナダム。
「あ……ああ」
「よろしくお願いね」
 良い意味で、切り替えの早いバーナダムに戸惑うも、駆け出す背中にイザークは半分ホッとして、エイジュは笑顔で、そう言葉を返していた。

          ***

「イザーク」
 不意に、上目遣いに見据えられながらエイジュに名を呼ばれ、少々、動揺する。
 我ながら、大人気ない対応だったと、今更ながらに思う。
 少し冷静になって考えれば、さっき、エイジュがバーナダムに説明したようなことぐらい、言えそうなものだったと……
 真っ直ぐに、自分の想いに素直に行動するバーナダムに、呑まれてしまっていたのかもしれない――そう思う。
 いつもなら、面倒な輩やしつこい者たちには、無視を決め込むか、適当な理由を付けて誤魔化してしまうのに……
 何故か、正面から受けてしまった。
 逃げることも、出来なかった……
 それに……予想以上にノリコに対する自分の想いが、コントロール出来なかった。
 自分の中で生まれた想いだというのに、どうにもならないことに、不安を覚える。
 きっとエイジュなら気付いているだろう……
 『気』の中に混じる感情を、コントロールすることなど気にも留めてなかったし、やろうとしても恐らく出来なかったろう。
 それだけ、バーナダムに振り回されていた。

 ――修練が足りないと……また言われるのだろうな

 溜め息と共に、そう覚悟した。

「痛かったでしょう? ご免なさいね――けれど、あなたにしては……珍しく冷静さを欠いていたわね」
「…………」
 肩に手を置かれながら、いつもの笑みでそう窘められ、少しムッとして眼を逸らし、顔を赤らめるイザーク。
 きつく叱られた方が、よほどマシに思える。
「さぁ、予想外に時間を食ってしまったわ。ノリコの容態を、早く診てあげなくてはね……」
 苦笑を交えながらエイジュはそう言うと、ノリコたちの方へと足を踏み出した。

「年の近い者同士での交流など……今まで、碌に無かったのではないのかしら? イザーク……」
 擦れ違い様に、そう呟くエイジュ。
「――っ!」
 ハッとして振り向くイザークに、
「あなたにも手伝ってもらいたいことがあるの、片付けが終わったら来て欲しいのだけれど、良いかしら?」
 彼女は背を向けたまま、何事も無かったかのように訊ねている。
「……分かった」
 そのまま、ガーヤに支えられ、ずっと不安そうにしているノリコの方へと歩いてゆく、エイジュの背中を見詰めるイザーク。

 ――確かに……確かにそうだが……

 幼い頃から、他人から避けられ疎まれた――そんな記憶しかない。
 家を出て……一人で暮らし始めて、まともに口を利いたのは、ガーヤが初めてかもしれないと思う。
 渡り戦士の仕事を選んでからは当然の如く、『大人』が仕事相手だ。
 同年齢の者たちとの交流……『友達』など――そんなもの……

 真正面から向かってくるバーナダムの瞳を思い出す。
 強くて真っ直ぐで、曇りのない瞳。
 ふと、彼を見やると、ロンタルナとコーリキに肩に腕を回され、小突き回されているのが見える。
 『やめろよ』と、そう言っているのが聴こえるが、嫌がっている様子など見えない。
 むしろ嬉しそうに、そして……楽しそうに見える。
 
 ――おれには、望んでも手に入れられなかったものだ……

 きっとこれから先も……【天上鬼】である限り、この運命から逃れられない限り――
 たとえ相手が『それ』を気にしなくとも、自分が気にしてしまうだろう。

 ――ノリコも……

 彼女も――彼女に対しても、同じだと思う。
 正体を明かしても、ノリコならきっと受け入れてくれるだろう。
 『あの姿』をみても、受け入れてくれたノリコなら……
 けれど、けれども……