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自分らしく
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彼方から ― 幕間2 ― & 第三部の最初だけ

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 何をしでかしてしまうのか分からない、この【力】。
 いつか、取り返しのつかない事態にまで陥ってしまうかもしれない……そんな恐怖が、いつも付き纏う。

 ――このまま、彼女と共にいれば、いつか……

 そんな考えを心の奥底に押し込めるかのように、イザークは荷物を片付けていた。 

          ***

「お待たせ、ノリコ、体は痛くない? 大丈夫かしら?」
「うん、大丈夫……おばさん、支えてくれた」
 そう言ってガーヤを見上げ、にっこりと微笑むノリコ。
「そうかい? そりゃ良かった……ところで、あっちはもう、済んだのかい?」
 ノリコの傍らにしゃがみ込むエイジュに、ガーヤがイザークとバーナダムを見やりながら訊ねてくる。
「えぇ、まぁ、なんとかね……」
「いい加減収まらないようなら、あたしが行こうかと思っていたんだけどね……あんたが収めてくれて助かったよ」
 苦笑を返してくるエイジュに、ガーヤも困ったように眉を顰め、笑みを返す。
 だが、ノリコはまだ心配なのか、片付けをしているイザークの背中と、アゴルと何やら話しているバーナダムを交互に見やっている。
 そんな彼女の頭を優しく撫でてやり、
「あの二人はもう大丈夫よ、それよりも、あなたの容態を診ないとね……」
 エイジュは荷物から書誌と携帯用のペンを取り出すと、何も書かれてないことを確かめるようにパラパラと捲り始めた。
「みるって……?」
 もう二人は大丈夫だと言われホッとしたものの、何を見るのかと、今度は怪訝そうにエイジュとガーヤを見やるノリコ。
「エイジュはね、癒しの力が使えるのさ、昨夜も、ノリコが気を失っている間にエイジュがその能力で、体の中に酷い怪我を負っていないかどうか、診てくれたんだよ」
「そうなの? ありがと、エイジュさん」
 ガーヤの説明に『すごーい』という表情をして、礼を言ってくるノリコ。
 彼女のお礼に笑みを返しているところに、片づけを終えたイザークが、三人の元に戻ってきた。
「……何を手伝えばいい、エイジュ」
 荷物を傍らに置き、エイジュに声を掛けるイザークに,
「その前に――」
 と、ガーヤがノリコを優しく支えたまま見上げ、切り出した。
「なんだ? ガーヤ」
 怪訝そうに見やってくるイザークに、
「ここに、二人の言い合いを物凄く不安そうにして見守っていた人間が一人いることを、忘れてないかい?」
 と、ノリコの肩を軽くポンポンと叩きながら、ガーヤがにまっと、大らかな笑みを向けてくる。
 肩を叩かれ、思わずガーヤを見やるノリコ。
「そうねぇ……ノリコに一言くらい、謝ってもいいかもしれないわね、あなたも――バーナダムも」
 ガーヤの言葉に乗っかって、エイジュもいつものように小首を傾げながら、イザークを見上げる。
「う……」
 二人の女性からの笑顔の圧力に、
「す、済まなかった……」
 イザークは少し赤くなりながら目線を逸らしつつも、恥ずかしそうにノリコに謝っていた。
「違う、謝る違う、イザーク! あたし、心配したの、勝手……だから、謝る、違う」
「ノリコ……」
 慌てて、『謝らなくてもいい』と、そう言ってくるノリコ。
 そんな彼女に、ガーヤは軽く首を振って、
「いいんだよノリコ、人様に要らぬ心配を掛けさせたんだから、ちゃんと謝らないとね。それが『大人』というものなんだよ」
 横目で見やりながら、少し嫌味な諭しを言ってくる。
 イザークは先ほどまでのバーナダムとの言い合いを思い返し、更に眼を逸らしていた。
 クスクスと笑いながら、 
「さぁ、もう、それくらいにしてあげて? ガーヤ……彼も反省しているわよ」
 『ね?』とイザークを見るエイジュ。
 無言で頷く彼に、ガーヤも一つ息を吐いて笑みを見せた。
「はい、イザーク――これからノリコの容態を診るから、あたしが言った言葉をそのまま、書誌に書き取ってもらえるかしら」
 立ったままの彼に、エイジュはそう言いながら書誌とペンを差し出す。
「分かった」
 片膝をつき、受け取るイザーク。
「ガーヤ、ノリコを抱えて、しっかりと支えていてあげて……ノリコ、痛いだろうけど、ちょっと、膝立ちになってもらうわ……体の後ろ側を隈なく診るから、少しだけ、我慢してね」
 二人は同時にコクリと頷く。
「いいかいノリコ、あたしに体を預けちまっていいからね、ゆっくりと動かすよ」
「うん、お願いします、おばさん」
 ノリコの背中に優しく腕を回し、痛くしないように彼女の体を持ち上げてゆくガーヤ。
 エイジュもその介添えをしながら、ノリコの足を動かしてやる。
「こんなんでいいのかい?」
 ノリコと二人、抱き合いながら共に膝立ちの状態になった。
「ええ、それで大丈夫よ――じゃあ、始めるわね……」
 精神を集中させる為、瞼を閉じ、ノリコの背中に右手を翳すエイジュ。
 昨夜と同じように、仄青い光がノリコの体を包んでゆく。
 エイジュはそのまま、右手の位置を移動させながらノリコの怪我の状態を言葉にし、イザークはそれを書き留めていった。

          ***

「エイジュが収めてくれて良かった……バーナダム、あんなに熱くなっては、出来る話も出来なくなってしまうだろう――少し、大人にならなくてはいけない」
 戻って来たバーナダムに、開口一番、そう言って窘めて来たのはジェイダ左大公だった。
「済みません……おれ……」
「反省しているのなら良い。真っ直ぐな心はお前の良いところなのだから、それを失くさないようにしなくてはな」
「はい――」
 彼の素直な返事に、左大公は大きく頷き、安堵の息を吐いた。
「まったく、困った奴だな」
「お前よりも、エイジュの方が怖かったよ」
 左大公のお叱りが終わったところで、ロンタルナとコーリキがやって来て、軽く小突いてくる。
「済まん……二人とも」
 恥じ入るように俯くバーナダム。
 ロンタルナとコーリキは互いに目配せをすると、
「うじうじするのはらしくないぞっ!」
「熱くなり過ぎなければいいんだよ!」
 と、二人同時に彼の肩に腕を回し、更に小突き回した。
「や、やめろよー!」
 慣れ親しんだ者同士の、若者らしい慰め方を、眼を細めながら、左大公は微笑ましく見ていた。

「よぉ、派手に耳を摘ままれていたじゃねぇか、まだ赤いぞ、バーナダム」
 にかっと、懐っこいを笑みを見せてくるバラゴ。
「お前を手伝いに来させるから待っていろと、エイジュに言われたんだがな」
 ジーナの手を引き、アゴルも近寄ってくる。
「あ、ああ! そうだった、何を手伝えばいい、アゴル」
 まだ絡んでくるロンタルナとコーリキの腕を外し、バーナダムは嬉しそうにしながらアゴルへと駆け寄った。
「先ずは森の中で、適当な長さの棒を二、三本、見つけないといかん――なるべく真っ直ぐで、細くて堅いやつをだ。後は空にした荷物入れと、出来れば丈夫な蔦……それと、毛布が何枚かあればいいだろう」
「そんなんで、ノリコを背負う道具が作れるのか?」
 ジーナの手を引き、森へと向かうアゴルの説明に怪訝そうにしながら、バーナダムもその後を付いて行く。
「ああ、大丈夫だ」
 恐らく、経験に基づいた判断なのだろう。