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自分らしく
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彼方から ― 幕間2 ― & 第三部の最初だけ

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 スッ――と立ち上がり、片づけをしている面々の方へ向かうエイジュ。
 彼女の背中を見やりながら、ノリコにスープを食べさせているガーヤに、イザークは訊ねていた。
「何のことだ? ガーヤ」
「ああ、ノリコに負担を掛けずに運ぶ方法のことだよ」
「ノリコを?」
 パンを一口齧った後、訊き返してくるイザーク。
 その眉が少し潜められている。
「昨夜、あんたが薬草を探しに森に入っている間に、エイジュが地図を持って来てね、あたしらが今どの辺りにいるのか、訊いてきたんだよ。その時に、アゴルにも訊いたのさ、ノリコになるべく負担を掛けずに運ぶ方法はないかってね」
「エイジュさんが?」
「ああ、そうだよ、ノリコ」
 訊ね返すノリコに、そう言って微笑み返し、ガーヤはどことなく楽しそうに、彼女の口に冷ましたスープを匙で運んでゆく。
「……それで、どうやって、ノリコを運ぶつもりなんだ?」
 何やら、含みのある口調で訊ねてくるイザークに気付くガーヤ。
「アゴルの話じゃ、一人で背負った方が良いだろうってことだったけどね」
 何気ない素振りでそう返しながら、ガーヤはそっと、イザークを見る。
「背負う方も、背負われる方も、負担が軽くなる方法を知っているって言ってたからさ、アゴルに一任したんだよ。その話しをしに行ったのさ、エイジュは……余計な世話だったかい? イザーク」
「……いや、そんなことは……」
 気のせいだろうか――イザークの視線が少し、落ち着きがないように思えるガーヤ。
「そうかい? なら、いいんだけどね……」
 ガーヤの言葉を最後に、イザークは黙って食事を口に運ぶだけになった。
 その様子を、ガーヤは怪訝そうに見詰めた後、
「さ、ノリコ、あと少しだよ、ゆっくりでいいから、食べてしまおうね」
「うん、ありがと、おばさん」
 更に嬉しそうにしながら、ノリコの食事の世話を続けていた。

   *************

「じゃあ、ノリコを背負って運ぶのか?」
「ああ、昨夜のガーヤの話では、街道に出るまでは起伏のある山道だそうだからな、まぁ、街道に出てからも、一人で背負った方が何かと都合が良いだろう……ノリコは背中に怪我をしているそうだからな」
 ジーナを傍らに片づけをしているアゴルと、バーナダムがそんなやり取りをしている。
「昨夜ガーヤ達と話していたのはそれだったのか」
「ああ」
 片付けを終え、荷物を邪魔にならないところに置き、ジーナを抱き上げるアゴル。
「これから、その為の準備をするところだ」
「そうなのか……」
 バーナダムはそう呟きながら、ガーヤに食事をさせてもらっているノリコを見やっていた。
 甲斐甲斐しく、しかも嬉しそうに、ノリコの世話をしているガーヤが、少し羨ましく思える。
 
 ――おれにも、何かできないだろうか……

 そんな思いが湧き立ってくる。
 辺りを見回せば、皆、言葉を交わし合いながら、今、自分が何をすべきかを理解し、各々動いているように見える。

 白霧の森に入ってからの出来事を思い返す。
 その場の状況に合わせ、自然と、指示を出す者が変わり、皆も混乱したりせず、臨機応変に対応してゆく、ほぼ、初対面のはずなのに……
 自分も、それに対応し切れていないとは思わない。
 だが、どこか、焦燥感が募る。
 何もしていない――何もできていないような、そんな気がしてくる。
 バラゴやアゴル、ガーヤやエイジュ、それにイザーク……
 彼らの対応があまりにも淀みなく、それが至極当たり前かのように見えるからだろうか。
 まるで、長年苦楽を共にしてきた仲間のような……そんな感じだ。

 ――けれどおれだって、ロンタルナやコーリキとだったら同じように出来る

 二人は左大公の息子だが、父親である左大公の警備隊の一員としても、一緒に動いている。
 付き合いは長い……

 ――……?

 ふと、首を傾げた。

 ――違う、なんか違うぞ……
 
 今、自分が焦りを感じているのは、そんなことではない――そんなことでは……

 バーナダムは腕を組み、黙して一点を見詰め始めた。

          ***

 立ったまま、どこか一点を見詰めている彼の横をエイジュが通り過ぎてゆく。
 よほど真剣に、何やら考え込んでいるのだろう、怪訝そうに振り返るエイジュに、気付きもしない。
 エイジュは自分の荷物を取り上げながら、森に入ろうとしているアゴルを呼び止めた。
「アゴル、何をしているの? 彼は……」
「さぁ……ノリコを背負って運ぶという話を聞いてから、ああなんだが……」
 バーナダムを見ながら首を傾げて訊ねてくるエイジュに、アゴルも同じように首を傾げて応えている。
「そう、その運び方のことなのだけれど……」
 用件を思い出し、アゴルの方に首を向けた時だった。

「よし!!」

 体がビクつくほどの大声をいきなり出したかと思うと、バーナダムは一人嬉しそうな笑みを浮かべ、何故か、ノリコたちの方へと駆け出して行く。
「ビックリした……」
「なんだ? 一体どうしたんだ、あいつは……」
 不意の大声に、首に強く抱きつくジーナの頭を撫でながら、アゴルはバーナダムの行く先を眼で追う。
 エイジュも怪訝そうに、バーナダムの後ろ姿を眼で追った。
「なんだ! 何かあったのか!?」
 その背後、森の中から、バラゴがポットから水を零しながら、慌てて駆けだしてきた。
 皆の視線がそちらに集まってゆく。
「今、誰か大声出しただろうっ! 化物か獣でも出たんじゃねぇのか!?」
 と、険しい表情で左右を見回すバラゴ。
「落ち着け、バラゴ。今のはバーナダムだ」
「あぁ? バーナダム?」
 肩に手を乗せながらそう言ってくるアゴルを見るバラゴ。
 その隣で、エイジュが必死に笑いを堪えている。
 アゴルは無言で、視線をバーナダムへと向けた。
 その視線の先には、食事を終え、片づけを始めたイザークと、何やら話をしているバーナダムの姿があった。
「なんでぇ……脅かしやがって……」
 何事も無かったと分かると、バラゴは文句を言いながらも安堵の息を吐き、ポットに入れてきた小川の水を、焚火の燃え後に掛け始めた。
「それで? 運び方について、何か話があったんじゃないのか? エイジュ」
「え? ええ、それなのだけれど……」
 アゴルに問われ、改めて話しを始めようとした時だった。

「おい、何か様子が変だぞ?」

 バラゴがそう言いながら、歩み寄ってきた。
「そうなんだ……あいつ、どうも喧嘩しているみたいなんだ、イザークと」
「口喧嘩みたいだけれどな」
 すると、ロンタルナとコーリキも、心配そうに二人の方を見ながら集まってきた。
 よく見れば、少し離れたところにいる二人を、ノリコがガーヤに支えてもらいながら、不安そうに見守っている。
 その二人に、左大公が歩み寄りながら、何やら話し掛けている。
 ガーヤはとりあえず様子見のつもりか、ノリコを支えたまま、動かない……
 その、二人の様子はと言うと……
「喧嘩と言うよりは――バーナダムが一方的に、イザークに食って掛かっているみたいに見えるがな……」
 とは、アゴルの見解だが、概ね、正しい。
 誰の目にもそう映っているからだ。