CoC:バートンライト奇譚 『猿夢』 下
「いや、いやいやいや! 寝ちゃまずいんじゃないかね!?」
思わず叫びながら、目を覚ました。
まず目に入ったのは、窓の外の景色。
夕焼けに染まった都会の、見覚えのある町並み。
先ほどまでは、特有の横座席にすわっていたのに、いつの間にか、標準的なロングシートに座している。
乗っているのは、あのアトラクション電車ではない。
塵芥川と分かれた後の、あの電車だ。
一拍子遅れたかのように、心臓の鼓動が慌しかった。
文字通りの拍子抜けの状況に、バリツは言葉を失っていた。
見やれば、反対の座席に、タンと斉藤が腰かけ、顔を見合わせていた。
バリツは、二人と目があった。
自分達を覗けば誰も、電車に乗ってはいない。
皆が不思議がっていたその時、バリツは小さな声を聞いた。
どこかで聞いたような声――初めて聞いたかのような気もする声。
ご乗車ありがとうございました
次は、助かるか分からないですよ?
☆トゥルーエンド
作品名:CoC:バートンライト奇譚 『猿夢』 下 作家名:炬善(ごぜん)