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miss you 6

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驚く高官と共にアムロも驚いてシャアを見つめる。
確かにシャアとは身体を重ねた。
あの日身体を許してから、何度かシャアに請われ、拒み切れずに事に至ってしまった。
当然ながらその可能性はあった。
しかし、まさか自分がシャアの子を宿しているとは思いもしなかった。
過去の実験の後遺症や戦場でのストレスで女性ホルモンのバランスは崩れていたし、医者にも妊娠は難しいと言われていたからだ。
シャアの言葉がこの場でアムロを引き渡さない為の嘘ではと思い、思わず怪訝な表情を浮かべてしまう。
そんなアムロにシャアは「何も言うな」とばかりに視線を向け、直ぐに連邦高官へと戻す。
「ネオ・ジオンにとって大切な存在であるアムロ・レイ大尉を引き渡す事は出来ない。どうしても言うのならばこの停戦条約は無かったものとしていただく他ない」
「そんな…」
高官達は顔を見合わせ、少しの間話し合いをした後、渋々ながらもネオ・ジオン側の要求を承諾した。

 会談が終わり、ホテル内の控え室に入るなりアムロはシャアに掴みかかる。
「アクシズの投下作戦はしない約束だ!それなのに何故アクシズを手に入れる必要がある⁉︎」
そんなアムロにシャアが冷静に答える。
「アクシズには豊富な資源が眠っている。スウィート・ウォーターを独立させるにあたり、資源確保は必須だ」
「資源確保の為だと?そんな言葉信じられるか!」
「資源確保と言うのは本当の事だ。しかし、確かに切り札としての役割も充分にある」
「やっぱり!貴様と言う男は!」
「落ち着け、アムロ。今回の事でも分かっただろう?連邦の高官共は何らかの交換条件がなけれな要求に応じない。その為の切り札は持っておかねばならん」
「それじゃ、連邦の出方次第によってはアクシズ落としをするって事か⁉︎」
「そうならない為の努力はするつもりだ。その事は君に誓っただろう?私を信じられないか?」
「…っ」
「アムロ、私を信じろ」
真っ直ぐにアムロを見つめる、濁りの無いスカイブルーの瞳にゴクリと息を飲む。
「…本当なんだな…?」
「ああ」
アムロはシャアの服を掴む腕を離すと、一歩下がってもう一度シャアの瞳を見つめる。
その瞳に偽りの心が無いのを確認すると、小さく溜め息を吐いて離れる。
「分かった…」
「それよりもアムロ、君はこれで正式に連邦軍を除隊しネオ・ジオンの人間となる。今まで以上に協力して貰うぞ」
「…分かってるよ…」
アムロは視線を逸らせ、ボソリと答える。
「ブライトと敵対する立場はやはり嫌か?」
「…そんなの今更だ…」
「そういえば港にラー・カイラムが帰港していたな。彼は今このロンデニオンにいるのだろう?会いたいか?」
会わせる顔など無いと分かっていながら、そんな事を言うシャアをアムロが睨み付ける。
「そう睨むな。このまま停戦条約が守られれば会える日も来るだろう」
「そう願いたいね」
「それからアムロ。暫くは周囲に気を付けろ。連邦がこのまま君を放っておくとは思えん。暗殺を目論む可能性は充分ある」
「だろうね、分かってるよ。大体あんな嘘をつく必要は無かっただろう?」
「嘘?」
「私があなたの子をって言うアレだよ」
「ああ…」
シャアがクスリと笑う。
「何だよ」
「いや」
意味ありげな視線を向けるシャアに、アムロが怪訝な表情を浮かべる。
「とにかく気を付けろ」
「分かってるよ」
「この後まだ私はやる事があるが、君はこのまま休んでいると良い。但しこのホテルからは出るなよ」
「だから分かってるって」
苛立つアムロにシャアは肩を竦めながらも、ナナイと共に部屋を出て行く。
残されたアムロとジョルジョは二人の背中を見送り、ホッと息を吐く。
「はぁ」
大きな溜め息を吐くアムロをジョルジョが優しく労う。
「堅苦しい席で疲れたろう?お疲れ様」
「うん…あ、何が飲み物入れようか?」
飲み物を淹れようと立ち上がるアムロを、ジョルジョがそっと止める。
「良いよ、君は座ってて」
そう言うと、部屋に備え付けのミニバーからソフトドリンクを取り出しグラスに注ぐ。
それを横目で見ながら、アムロはホッと息を吐き、ソファに身体を埋める。
「ジョルジョ…シャアはああ言ってたけど、ネオ・ジオンの幹部たちはアクシズ落としを決行したいんだろう?」
その問いに、グラスにドリンクを注ぐジョルジョの手が止まる。
「そうだね…、全ての幹部がそう思っている訳では無いけれど、あの作戦を実行する事で地球連邦軍に大打撃を与え、ネオ・ジオンの力を見せつける事が出来る事は事実だ。だから大佐が作戦決行を渋っている事をよく思わない者もいる」
「だろうな…」
「スペースノイドにとって連邦からの解放は悲願だからね。ましてやジオンの人間は一年戦争以降連邦から激しい弾圧を受けている。連邦を…アースノイドを…憎んでいる人間は多い」
「…それでも…私は罪の無い人々を犠牲にする様な作戦には賛同出来ない…」
アムロは、部屋に飾られたネオ・ジオンの旗を見つめ唇を噛み締める。
鷲を象った真っ赤な旗。それを背負い、シャアは戦い続ける。
「ネオ・ジオンの…シャアの想いは理解できるんだ…。でも、綺麗事を言っていると思うかもしれないけど、シャアにはその手段を間違えて欲しくない」
アムロの言葉に、ジョルジョは少し指を震わせながらグラスに入ったドリンクを見つめる。
「アムロ…君は…人々を犠牲にしたくないという気持ち以上に…大佐に大罪を犯させたくないと言う想いの方が大きいんじゃないかい?」
「え?」
側に立つジョルジョを見上げ、アムロが思わず声を上げる。
「ジョルジョ…?」
「違うかい?」
ジョルジョの問いに、アムロはハッと息を飲み、そして気付く。
『確かに、ジョルジョの言う通りかもしれない』
5thルナがラサに落とされた時も、人々の犠牲に怒り悲しみながらも、酷く心を痛めているシャアを見るのが辛かった。
だから、そんな彼に手を差し伸べてしまった。
「…そう…なのかも…しれない…」
「…そうか…」
ジョルジョは目を閉じ、小さく息を吐くと、ドリンクの入ったグラスをそっとアムロへと手渡す。
「ありがとう…」
アムロはグラスを受け取ると、ドリンクを一口含む。そして数口飲んだ後、自身の身体の異常に気付く。
「え…?な…に…」
突然、目の前が霞み、ぐらりと身体が傾く。
手で顔を覆い、目眩を耐えるが症状は更に酷くなっていく。
「う…」
崩れ落ちそうになる身体を受け止めてくれたジョルジョを見上げれば、何故かその表情は苦痛に歪んでいた。
「ジョ…ル…ジョ…?」
「アムロ…ごめんよ…」
「ど…いう…こと…ジョ…」
必死にジョルジョの腕にしがみつき、問い質そうとするが、激しい目眩に襲われ目の前が真っ暗になり意識が遠のく。
「ジョル……」

 完全に意識を失い、身体から力の抜けていくアムロをジョルジョがギュッと抱き締める。
「アムロ…君はネオ・ジオン内に敵を作り過ぎた…」
意識を失ったアムロの頬をそっと撫でて、その滑らかな素肌の感触を味わう。
「それに…このまま君が大佐のものになるのを指を加えて見ている事なんて出来ない…。君を愛しているんだ」
ジョルジョはアムロを抱きかかえると、部屋を出て地下のパーキングへと向かう。
作品名:miss you 6 作家名:koyuho