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自分らしく
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彼方から 第三部 第三話

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「え? 大丈夫? 無理しなくても、落ち着いてから……」
 思いがけない姉の迫力とその力強さに、ガーヤは慌てて声を掛けるが、
「大丈夫、大丈夫。ほーらほらほら、すごく元気」
 ゼーナはイザークとノリコの方に歩み寄りながら、勢い良く両手を振り回して見せる。
「あ、あの……(な……何だか迫力のある人だなァ)」
 更に体をビクつかせ、ゼーナの勢いに多少引き気味になりながら、ノリコも声を掛ける。
 本当にそっくりなガーヤとゼーナ。
 体格も顔も、ほぼ同じ人間に二人して寄って来られると、更に迫力が増す気がする。

     スッ――

 ノリコが、ゼーナの迫力に押され、彼女から眼を離せないでいるその間に、イザークは音もなく気配も殺すかのように、彼女から静かに離れてゆく……
 まるで、ゼーナを――『占者』である彼女を避けるかのように……
「ほら、手をかして」
「あ……はい」
 迫力に押され、身を縮めるようにしているノリコの手を、ゼーナは勢いそのままにガシッと掴む。
 ノリコも、『占ってもらう』ことが分かっているため抵抗はしないが、それでも多少の怖さはあるのだろう。
 どうしても、ゼーナからちょっとでも体を離そうとしてしまう。
 イザークはノリコをゼーナに委ねるように、更に体を離してゆくが……

「はいっ! あんたも!」

 有無を言わさぬ口調で眼の前に、ゼーナが手を差し出してきた。
「あんたも、手を出して」
 然も当然のように……
「え……おれは――」
 『どうして?』という問いと驚きに、イザークは差し出された手を一瞥した後、ゼーナを見やった。
「えっ、姉さん。イザークは関係ないよ」
 ガーヤも同じように思ったのだろう、腑に落ちない面持ちでそう言ってくる。
「いいから! 四の五の言ってないでっ!」
 戸惑い、躊躇うイザークを他所に、ゼーナは彼の手を握っていた。
 彼女の占いの目的は、先ほど二人から感じた『光の束』。
 あの世界が夢だったのかどうかを確かめることにある。
 その為には何が何でも、『二人』を占る必要があるのだ。

 ――まず、この二人の関係を……!!

 ゼーナは二人の手を強く握り締め、『占う』為に、精神と意識を集中させ始めた。

          ***

 ――だめだ
 ――おれを占ったら……

 焦りと少しの期待――そして『人の目』が、イザークを迷わせる。
 大国グゼナで城お抱えの占者となったゼーナの、その占いの能力に、イザークは心の片隅でほんの少し、期待をしていた。

 ゼーナの行為に、ロンタルナとコーリキが、何やらひそひそと話し合っている。
 ノリコだけで良いはずの『占い』。
 なのにゼーナは、『二人』を――イザークとノリコを占うという……
 それは……『恋占い』なのでは?
 直接でも間接でも、その類の占いは出来ないと言っていた本人が、自ら進んで『二人』を占うとは……
 気が変わって、こちらの頼みを聞いてくれたのだろうかと、兄弟は思っていた。
 ゼーナの思惑は、全く違うのだが……

「――ん?!」
 集中させた意識と精神。
 彼女の占者の能力が、その脳裏に映像を浮かび上がらせる。
 しかし……
「何? これ!」
 その映像は、ゼーナの予想とは大きく違っていた。
「グシャグシャで、訳が分からない……」
 形を成さない映像。
 現れた色は全てが交ざり合い、しかし混ざることなく、渦を巻き、波を描き、定まりを見せない。
「…………」
 イザークは彼女のその呟きに、掴まれた手を引き、解こうとした。
 だが――
「ああ、いや……もっと集中すれば――何か奥に、見えそうな気が……」
 ゼーナのその言葉に、イザークは一瞬、躊躇ってしまっていた。
 瞼を閉じ、更に占ようと、能力を集中させてゆくゼーナ。
 その高い能力は、彼女の意識を『訳の分からない』映像のその先へと、誘おうとする。
 皆が、見守っている。
 同じ占者であるジーナも、自分よりも経験のある、優れた能力を持つゼーナの『占い』を、その結果を、見守っていた。
 自分が感じたイザークの『力』……
 父に頼まれ、二人に内緒で占った、『二人』のこと……
 自分では『占る』ことの出来なかった『二人』だが、ゼーナなら――自分よりも遥かに能力の高い彼女なら、『何か』分かるのではないか……
 幼くとも、『占者』としての自覚のあるジーナにとって、ゼーナの占いはとても興味深いものだった。

 やがてゼーナの脳裏に、更に奥へと続きそうな『道』が見え始めた――その時だった。

      パン――ッ!!

「あ…………」
 ゼーナにだけ感じる、聴こえる音……
 弾けるような音と共に、それまで見えていたグシャグシャの世界も、その『先』の道も、全てが真白い世界の中、粉々の粒のような様相へと姿を変えてしまっていた。
「…………破裂しちゃった……」
 真白い世界の中、彼女が辛うじて口にした言葉は、それだけだった……

          ***

「え……破裂って――あの?」
「うん」
 二人の手を握ったまま、眼を点にして呆けてしまったゼーナ。
 どうして良いか分からず、手を握られたままになっているイザークとノリコ。
 妹ガーヤの声掛けに、ゼーナは力なく頷き、応えていた。
「許容範囲を越えた占いをすると、突然頭ン中が真っ白になって、数日間、何も浮かばなくなるという、子供の頃によくなってたあの『破裂』に、なったの?!」
 驚きと共に、確認するかのように訊ねてくるガーヤに、ゼーナはもう一度『うん』と、返していた。
 掴んでいた二人の手を離し、ゼーナは呆け、戸惑い、困ったように口元に手を当てていく。
「ここ二十年は、そんな経験したことなかったんだけど……」
 久しぶりの経験のせいか、ゼーナの様子は心許無さげで、頼りない。
 先ほどまでの元気はどこへ行ったのかと、そう思えるほどだ。

 ――おれのせいだ

 彼女の戸惑いぶりを眼にし、イザークは自身を責めていた。。

 ――子供の頃から
 ――おれを占える占者はいなかった
 ――映像が乱れて、何も見えなくなってしまう

 だからこそ、ほんの少しだが、城お抱えの占者にまでなったゼーナの高い能力に期待――したのだ。
 だが、結果は他の占者と変わりはなかった。

 ――しかし
 ――破裂するまで集中しようとする占者は初めてだ

 今まで占てもらった占者は皆、破裂する前に占いを止めた。
 でなければ今のゼーナのように、数日間、何も占うことが出来なくなるからだ。
 占いを頼って来た者よりも、自らの身の保身の方を優先するのは、至極当然と思えるのだが――それすらも厭わず占ようとしたゼーナに、イザークは驚き、感嘆する。
 
 ――変に思われることを恐れずに
 ――手を振り解けばよかった……

 だからこそ、少しの期待と人の目を気にしてしまったことで、ゼーナに余計な負担を掛けてしまったことに責を感じていた。

「え? 他の奴のも占えなくなったってことか?」
 バラゴの率直な疑問に、ゼーナは頷き応えている。
「試しに、わたしを占ってみてください」
 アゴルも再度確認する為か、自ら手を出し、ゼーナにそう促す。