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自分らしく
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彼方から 第三部 第三話

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 そう、彼女自身は、あの光の束が現実だったと確認したくて、その光の束を齎したこの二人の関係が知りたくて、占ったに過ぎないのだが……
 確かに、『男性と女性』である二人の関係を知ろうとしたのだから、『恋占い』になるのかもしれない。
 だとすると、自分でも苦手だと分かっている分野に手を出したことになる。
 それ故の『破裂』――なのだろうか?
 なんとなく、腑に落ちないものを感じながら、ゼーナはただ、周りの騒ぎを見ているしかなかった。

          ***
 
 ――ちょっ、ちょっと、みんな
 ――な……なんだか、話しがとんでもない方向に走ってるよ

 ノリコも、皆の騒ぎを蚊帳の外から見ているしかなかった。
 話しの中心が、『破裂』してしまったゼーナの占い能力から、その原因を作ったと思われる、ロンタルナ・コーリキたちがした、『恋占い』のお願いへと移ってしまっている。
 友人である、バーナダムの恋心の為の……
 それは間接的に、自分たちにも関係してくる――自分と、イザークに……

 ――こういう話題は困るんだよ
 ――だって……

 皆の話しに口出しすることなど出来る訳がなく、ノリコは不安な心持でそっと、イザークの様子を窺った。
「…………」
 彼は黙って、じっと、皆の様子を見ている。
 こちらをチラッとでも、見ようともしない。

 ――こ……心なしか、
 ――顔が怖くなっているような……

 いつもと変わらない、クールな表情を見せているようにも思えるが、毎日、いつも傍で、いつも『気に掛けて』彼を見ているノリコだからこそ、人には分からないイザークの微妙な表情の変化が分かる。

 ――何を考えているんだろう
 ――また、困っているのかな

 だが、分かるのは微妙な変化だけであって、その心の内までは……
 彼が何を想い、何を感じ、何を考えているのか。
 そんなことを想い考えながら、ノリコはただ、彼を見詰めるしかなかった。

          ***
 
「まあ、まあ、まあ、皆さん」
 ジェイダの、いつもとは違う大きな声に、皆の動きが止まった。
 皆の注意が自分に向けられたことを確認すると、
「ゼーナ殿が占いの力を失くしたとはいえ、一時的なものなのでしょう? また、回復してから占い直すことが出来るんですから……」
 皆をゆっくりと見回しながら微笑み、そう執り成してくれた。
 そう、そうなのだ。
 ゼーナの回復を待って占い直せば良いだけのことなのだが……
 皆の置かれた状況が状況だけに――その状況を軽んじたかのような若者たちの行動に、つい、過剰な反応をしてしまっていたのだ。
 ジェイダの執り成しがなければ、事態はもっと、混乱していたかもしれない。
 彼の一言で、やっと『場』が、落ち着き始めた。

 ――助かった……

 正直、ノリコはホッとしていた。
 もしも、このまま、左大公が口を出してくれていなければ、話しがどんな展開を見せていたのか分からない。
 終わらせることも出来ず、誰かの責を問うまで、続けられていたかもしれない……
 あるいは、ロンタルナたちの『お願い』通り、二人の仲を知る為にハッキリさせよう――なんてことになったかも、知れない。
 こんな大勢の眼の前でそんなことになるのは正直辛いし、何より、イザークが承知するはずがない。
 そんな時のイザークはまるで、薄い氷が張った湖のようで――少し触れただけでも割れてしまい、割れた氷の鋭い先が突き刺さるかのような……そんな感じがするのだ。

          ***

「では皆さん、こちらへ」
「お食事が用意してあるんです」
 とりあえず騒ぎが収まり、ロッテニーナとアニタが、大きな屋敷に見合った広いダイニングへと誘ってくれる。
「ご免ね、ノリコ。とにかく姉さんが回復するまで、待ってもらうしかないんだ」
「はい(待ちます、待ちます。いくらでも)」
 ガーヤはそう謝ってくれるが、ノリコ自身、助かったと思っているのだから、回復するまで何日かかろうとそれはもう、苦にはならなかった。
 バラゴの『からかい』でさえ、彼の表情が凍り付くのが分かるのだ。
 『恋占い』など……以ての外だった。
 次、ゼーナが回復した時には、ちゃんと占ってもらえるのだ。
 自分を襲ってきた連中の正体が今、分からなくても、ノリコは全然、構わなかった。

 ダイニングへと向かう途中、ロンタルナとコーリキが揃ってノリコに頭を下げながら通り過ぎてゆく。
 彼女に、『気まずい思い』をさせてしまったと、少なからず思っているからだろう。
 ノリコも『大丈夫』と、言葉には出さないが微笑み、頷き返す。
「ところで、ゴタゴタ続きってなんだ?」
 バラゴも同じように向かいながら、厩から屋敷内へ入る時にも、ガーヤが同じようなことを言っていたことを思い出し、問い掛けている。
「ああ、それは、食事をしながらでも話すよ」
 バラゴに問われ、ガーヤは共に歩きながらダイニングへと向かう。
 なんとはなしに皆の最後尾に付け、イザークと二人並んで行くノリコ。
 ふと、その前方に立つ、バーナダムの姿が眼に入った。
 ダイニング入り口の脇、シンプルな装飾の施された柱に寄り掛かり、じっとこちらを見詰めている。
 まるで、待っているかのように……
 さっきの騒ぎのこともある――自然と二人の足は止まり、意図せず、バーナダムと対峙するような形になってしまう。
 三人の様子に、アゴルもふと足を止めた。
 何か、言葉でも掛けるつもりなのか、バーナダムの横顔を見やっている。
 その二の腕を、バラゴにいきなり、グイッと掴まれた。
「え?」
「ま、ま、こういうことは、本人たちに任せて」
「いや、あの……」
 アゴルの腕を掴み、そのままダイニングへと連れて行ってしまうバラゴ。
 アゴルは心配そうに、三人と、腕を掴み離してくれそうもないバラゴとを見やりながら、半ば引き摺られるようにして、ジーナと一緒にダイニングへと入っていった。
 外見に似合わぬ、細やかな気遣いを見せるバラゴ。
 『こういうこと』は、訳知り顔で大人が割り込むと、大抵、碌なことにはならない――そのことを、バラゴは良く、分かっているのだろう。

          ***

「ご免ねノリコ。なんか変なことになっちゃったね」
 そう言って謝ってくれるバーナダム。
 その表情や言葉は落ち着いていて、ついさっきまで、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたとは思えない。
「あ……ううん。バーナダムが謝ることじゃないよ」
 ノリコの方がまだ、気まずさというかなんとも言えない照れ臭さが残っている。
 間接的に『告白』されたも同然だし、しかも、あんな大勢の前で……
 照れ臭くない方がおかしいというものである。
「ん……でもさ……」
 だが、ノリコにそう言ってもらえたからと言って、『それで良し』という訳にはいかなかった。
 自分のせいではないにしろ、ノリコに恥ずかしい思いをさせてしまったのは確かなのだ。
 それに――いや、それよりも気になるのは……
 バーナダムは彼女の後ろ、ニ・三歩離れたところに立ち、腕を組んでじっと見据えてくる『イザーク』を、チラリと見やった。
 表情が、冷たい。