はじまりのあの日~一夏の恋の物語1~
午前六時
三人で調理中。作ってはテーブルに置く作業
「よ~し、おこわ蒸しちゃうね。冷めてもおいしいおこわ」
カイト、醤油おこわを蒸し始める。金時豆入り醤油おこわ
「お願い、カイト。よし、芋餅の芋はさっき一緒に潰したやつに、片栗粉混ぜて」
こっちも冷めたら冷めたで、おいしい芋餅
「がっくん、ブルスッケッタ、トマトやっとくね。フランスパンは、途中でお買い物しようよ~」
「お利口さ~ん、お願い、リン。そうだな、行きがてら、モールに寄ってお買い物しようじゃない、カイト」
「いいね、殿。ミートパイも材料買って、ハンバーグ一緒に向こうで焼き上げよう」
そんなこんなで調理して。カイトがラストの、醤油おこわを蒸し上げにかかる。この辺りから
「おはよ~ぽ兄ちゃ~ん。電子ジャー、リビングに置いてきたよ~」
「おはよう、めぐ。お利口さん、昨日言っておいて良かったじゃない」
集まりはじめる、ボカロファミリー。朝起きたら、お櫃(おひつ)持ってマンションに来て欲しい。打ち合わせた通りじゃない。お利口の妹で、俺幸せ
「お~っす~、お、リンもいるじゃ~ん。朝ご飯、目玉焼き楽しみ~」
「おはおは、あにさま。カイ様、りんりん、も~にんぐ~、ぐ~」
賑やかになるじゃない。はじめに来たのは、可愛い妹達。昔は朝が苦手な子だったのに、いまじゃ~朝型。俺と一緒に暮らした結果、生活リズムが変化した
「おはようっ、めぐ姉。今日もイイ天気で、良かったね、リリ姉。リュウト君は、カル姉」
「リュ~君はね、シェアハウスに行ったの。みんなを起きてるカナ~って」
楽しげに笑うじゃない、めぐ。リンと微笑みあって、天使の笑顔。俺の周りって、可愛い子ばっかり、俺、幸せ者。ふふ、ユキをお迎えに行ったんじゃない、リュウト。無自覚天然、天使のCouple(カップル)可愛い
「よし、カイト、味噌汁作り始めようじゃない。ネギと揚げ、小松菜とキャベツ、具はそんな感じでイイんじゃない」
「だね、具だくさんの野菜味噌汁。白いご飯が来たんだもん。グミちゃん達、他に具のリクエストある~」
今から作れば、味の染みた美味しい味噌汁が出来るじゃない。おそらく食べるの八時過ぎ。朝が弱い子もいるから。俺、自慢の弟筆頭の弱いとこ、お寝坊さん
「ぽ兄ちゃん、お茄子も入れようよ~、秋茄子~。一回揚げ浸しにした、甘~いお茄子~」
「あ、それウチも好き~、おねぇナイスッ。あとオクラも入れよ~ぜ、リン~」
「かるかぼちゃ。土手かぼちゃ、かぼちゃ、ぼちゃぼちゃ」
お、良い提案じゃない、めぐ。忘れてた、秋茄子。丁度旬の食材じゃない。オクラも、良いな、リリ。土手にかぼちゃの種、捨てたら、実るようになった土手かぼちゃ、カルのリク
「あ、わたしも賛成~っ。がっくん、茄子好きじゃな~い。茄子、わたしも大好物~」
姫君が賛同してくださった、俺爆発。秋茄子決定
「これは秋茄子決定だね、殿。あはは、幸せ者だ、殿。妹に、好きな子に、好物のお味噌汁、なんて」
全くだ、Brother(ブラザー)
「お早うございます、皆さん。会話が聞こえました、野菜、私が収穫して参りますよ」
「おはようございま~す」
「おはようございます、みなさま」
テル、ユキ、リュウト。シェアハウス組、先生に連れられた生徒風情。連れだって来るじゃない
「おはよう、先生。リュウト君、ユキちゃん、おはよ~う」
「GoodMorningでゴザル。収穫なら、拙者でも可能でゴザルナ。某(それがし)も参るでゴザルヨ」
アルも来たじゃない、リンとアイサツ。早朝型って得な気がする。勝手な見識だけど、一日を長く、有効に使える気がするじゃない。お日様の光は、人間を元気にするし
「あ、センセ行くなら、ウチも行く~」
必然そうなるじゃない。思い人、テル出撃に、同行、リリ
「ソウでゴザルか、リリィ殿。では拙者、車に荷物でも運んでおくでゴザルヨ。FuFuFu、トシヨリは退散でゴザル」
「アルサンキュ~」
と、Vサインリリ。ふふふ、アル、解ってるじゃな~い。調理ボウルを手に、畑へ向かうテルリリ
「白いご飯、めだまやきに具だくさんのお味噌汁。わ~、朝からご馳走だねぇ」
「よし、めぐ、家(神威家)行って糠漬け、持ってきて欲しいじゃない。この献立なら必須じゃない、糠漬け」
「だね、殿。今日の朝は純和食。お昼からのパーティーで、どうせ洋食も食べるんだし」
リン、俺、カイト三人、息ぴったり。さすが長年、調理を共にした三連星。色はバラバラ、黒くないけど、阿吽の呼吸。ご馳走って言うと、すぐにフランス料理、高級中華、料亭和食。分厚いサーロインとか言われるけれど、俺達にとってのご馳走は、こんなにささやかでありがたい。さっきの玉子だって、農家の夫妻が持ってきて下さった、サイズ不揃いながら、栄養たっぷり赤玉子
「は~い、ぽ兄ちゃ~ん」
「めぐ姉様に、かるつづく~」
素直さがステキな妹達
「~、もう一品欲しいな。うん、赤いウインナーで、SauceKetchup(ソースケチャップ)タコさん作ろうじゃない。子供組、好きだから」
「あ、そだね、子供ちゃんのこと考えなきゃ。好きだもんね~、タコさんウインナ~」
「一品、洋風が加わっちゃうね~。でも、う~ん子供かぁ。まだわたしも子供なんだ。好きだもん、赤いタコさんウインナー」
気落ちするんじゃない、リン。カイト、ちょっとだけ迂闊だ。慌ててる。いや、俺も迂闊だった、でも、リン
「だいじょ~ぶ(大丈夫)だよ~ぉ、リンちゃん。わたしだって好きなんだよ~、ケチャップのタコさんウインナ~。赤いので作るのが、一番好き~。じゃ、糠漬け取ってくるね、ぽ兄ちゃんっ」
「かるもすきすきす~。ういんなご飯、ぬか漬けご飯、美味なりなり」
完璧なる援護、妹二人、めぐカル。さすが大好きな妹様。よくぞ救け船、だしてくれた。言ってから取りに向かう。俺も負けていられない
「そ、リン、気にしない。嫌いなもの、美味しく作るのは難しい。好きだから作ってあげられるの。俺も好き、赤いタコ様。ケチャップソースで和えたら尚のこと」
腕でリンの肩を抱く。イイじゃない、このくらい
「それに『赤いウインナー』って、日本生まれじゃない」
「あ、そうなの、がっくん」
「ぉはよ~う、リンちゃ~ん。楽しみで早く目が覚めちゃった。神威のに~さん、なになに~ぃ」
IAが来た。それ、遠足前の小学生じゃない。まったく可愛いのが多すぎる。リン、益々くっついて来る
「おっはよ~、IAちゃん。あのね、赤いウインナーは、日本で出来たの、ってお話し」
「あ、そ~ぅなんですね、カイトの兄さ~ん。あ、でも、それでですね~、NYで赤いの見なかったの~」
なるほど、他所では無いんだな、本当に。そういえば言ってたじゃない
「そうか納得。アルが言ってた。来たばっかりの頃『アコガレノ赤いVienna Sausage(ウインナー)』って」
「あ、言ってた、言ってた~。すっごく嬉しそうだったよね、がっくん」
あの日、発祥の話題に至らなかったのは、がっつくアルが面白かったから。誰も疑問に思わないじゃない
作品名:はじまりのあの日~一夏の恋の物語1~ 作家名:代打の代打