檻2
「くそっ」
帝人が部屋を出て行くのを見届けるとすぐさま体を起こし、首輪に繋がった鎖を鬱陶しく思いながらも手錠を外そうと手を動かす。
「良いの使ってるじゃないか」
簡単には外れそうもない手錠に悔しそうに唇を噛む。何か道具は無いのかと部屋の中を見回すがたいした家具はなく、ベッドから降りるためには鎖の長さも足りずため息をつく。
「外れそうですか?」
水を乗せたトレイをもって帝人が戻ってくると、臨也の行為を咎めることなく声をかける。
「残念ながらすぐには無理そうだね」
「それはよかった」
臨也のあからさまな嫌みも軽くかわすとベッドの上にトレイごと水を置く。
「……これはなんだい?」
帝人が持ってきた水へと視線を落とすと不快なものを見るように眉を寄せて見下ろす。
「水ですよ」
帝人は見てわからないのかと言うように首を傾げる。ベッドの上に腰を下ろし臨也の目を覗き込みながら飲まないのかと差し出す。
「せめて手錠は外してもらえないかな」
「ダメですよ、ペットは四つん這いで飲食するものでしょう」
じっとペット用の水入れを睨むように見ていた臨也が口を開き顔を上げて帝人を睨む。
「嫌だって言ったら?」
「人間って水なしで何日生きられるんでしょうね」
にこっとかわいらしく笑う帝人の本気を感じ取ると、無意識に臨也の体は恐怖に震え、落ち着きを取り戻そうとひとつ深呼吸して帝人の目を見つめる。