檻2
「おかわりはいりますか?」
口元をべとべとにしながら食事を終えた臨也を見る。否定するように首を横に振る臨也の腕に、ベッドの下からから伸びる鎖を付ける。これ以上拘束を増やすのかと目だけで問う臨也を横目に手錠を外す。
「気持ち悪いでしょう、顔洗って着替えましょう」
「ずっと拘束しておくつもりかと思ったよ」
ベッドに繋がっているとはいえ、自由に動かせるようになった腕をコキコキと動かし動きを確認する。
「これからもそうやって食べてもらえるなら、部屋の中でくらい自由にしてていいんですよ」
ベッドの側面に取り付けた機械を操作してロックを外すと、ハンドルを回し手足に繋がった鎖を長く延ばしていく。
「ずいぶん原始的だね」
「巻き上げを自動にしてしまうと壊れたら、臨也さんの手足が引きちぎられるかもしれませんから」
手足を伸ばしてもゆったり眠れるほどの大きさのベッドでは否定できず、ゾッとしながらも笑みを絶やさず話しかける。
「せめて手か足かどちらかは外してくれたら良いだけだとおもうんだけど?」
媚びれば逆に機嫌を損ねるとわかったため表情は作らず素直に思ったことを告げる。
「それは僕がつまらないからイヤです」
臨也の言葉に鼻で笑って告げると、出口とは逆の場所にあるユニットバスへと手を引いて案内する。動く度にジャラジャラと音の鳴る邪魔な鎖を絡ませないように手に持ったまま付いていき、比較的広めなユニットバスの内部を観察する。
「着替えはここにありますから」
スナップボタンを横で止めるだけの、今着ているのと同じ服を渡す。それを受け取った臨也は、返答はわかっていても口に出して尋ねる。
「下着は?」
「ありませんよ、そんなの」
予想どおりの帝人の返事に臨也は諦めたようにため息をつく。今は抗議しても無駄だと服に手をかけると、物言いたげに帝人へと視線を向ける。
「ちゃんと体も拭いて出てきてくださいね」
臨也の言いたいことを理解すると、何か言い出す前にタオルを置いて浴室から出て行く。鎖のため扉を閉めることは出来ないが、カーテンで目隠しが出来るとほっとして服を脱ぎ蛇口を捻る。お湯の出る音で外に様子が漏れないようにすると、自分を拘束している枷をどうにかして外せないかとじっくりと確認する。
「無理か……」
臨也の力では引きちぎれるはずもなく、首輪すら簡単には外れないような仕組みになっているのを確認するだけになりため息が零れる。