先生の言葉 全集
24.ご挨拶
おや、ご無沙汰しておりました。先日、魔除けを取り戻して、無事近衛兵になられたそうで。おめでとうございます。
さて、今日はどういったご用件で。皆さんのような歴戦の方々には、私はもう捧げる経験も、授ける知識もありませんよ。
なに、珍しいものが手に入ったんで、ぜひお目にかけたい？
ほう、それは是非。最近、冒険者の方もお見えにならないので、退屈してたんですよ。
で、その珍しいものというのは、これ？ 盾ですね。でも、何の変哲もない盾ですよ。まあ、お店で作られる安価な盾よりはまだ良いですけど。でも、皆さんがお持ちの一級品に比べれば明らかに見劣……あっ。
もしや、これがあれですか。高位の冒険者も滅多に入手できないあの盾。いや、私も初めて拝見しました。長く迷宮にいると良い事もあるんですねえ。しかし、これほどの珍品、手に入れるのは大層骨が折れたでしょう？ え？ やる事がなくて迷宮の中層の地図を描いてたら、首をはねるのが下手な忍者が落とした？ おかげで、全階層の地図もできたし、アイテムも全部揃った、と。
ふむ、やはり隅々まで探してみるものです。まず、中層へ行く方が少ないですもんね。ちなみに、あの忍者、本当は盗賊か戦士じゃないかって噂ですけど、なかなか遭えないんでハッキリしないんですよ。
え、実はもう一つ話がある？ お別れを言いに来た？
ああ、皆さん富も名誉も手に入れたんで、偉くなっちゃうんですね。地方領主にでもなられるんでしたら、宮廷道化師の職とかありませんか。私、馬鹿にされるのは慣れてますよ。
いや、別の世界へ転生しようと思ってる？ 伝説の武具を集めて、騎士になる世界へ行くんだって？
あー、私もその世界は聞いた事があります。武器や防具が襲ってくるんですよね。そういえば、少し前に転生してった方々は、何か宝珠を取ってくるって言ってました。できれば、性格の違う方々が来てくれるといいな、とも言ってましたよ。そっちの世界はいかがですか？ ん、あそこはあまりいい経験にはならない？ それに、場合によっては、うちの侍や君主の能力が生かせない可能性がある？ そうですか。良くわかりませんが、色々事情があるんですね。
しかし、一介の幽霊、しかも敵である私に、お別れを告げに来て下さるなんて本当にありがたいです。皆さんの新しい世界でのご活躍を祈っております。お元気で。
あ、そっちの世界にも私いると思いますけど、次はもう少し優しくしてあげて下さい。